野原ひろし、両津勘吉、ランバ・ラル…35歳にしては老けすぎ⁉ 知られざる人気キャラの“年齢設定”
集英社オンライン / 2024年11月18日 17時0分
〈「中間管理職は教師もツライ」給与に見合わない“責任”に新人教師の指導…35歳、中堅教員が直面する3つの変化〉から続く
アニメ・漫画のキャラクターの“年齢設定”を知ってびっくりすることが多々ある。その代表的な例が『サザエさん』だろう。あんなにしっかりものに見えるマスオさんが28歳。その同僚のアナゴさんもおそらく同年齢といわれている。
【画像】波平は54歳、マスオさんは28歳!“お父さん”キャラの年齢一覧
野原ひろし、両津勘吉、ランバ・ラルは同級生
さらに磯野波平は54歳。有名人で現在同い年なのは岡村隆史、西川貴教、中山美穂、河村隆一などで、波平は抜きんでて貫禄があるように感じてしまう。
今回はそんな驚きのアニメキャラクターの年齢の中でも、“35歳”にフォーカスを合わせてみる。
35歳と聞いて驚かれるキャラの一人に、『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしがいる。彼は作中ではさえないサラリーマンとして扱われているが、いまの日本社会に当てはめるとどうだろうか。
35歳にして結婚して二人の子どもを授かり、年収は推定600万円で、仕事は商社の係長というポジション。さらにマイカーと愛犬が一匹、そして埼玉県春日部市に一戸建ての家を購入。このステータスはおそらく、日本全体の上位数パーセントに入るほどの勝ち組だろう。
子どものころ、ひろしのことをさえない男だと思って視聴してきた人たちの何人が、ひろしのような人生を過ごせているのだろうか。
ネット上ではひろしと自分の境遇を重ねて、嘆く声が多くあがっている。
〈35歳になって野原ひろしの凄さを改めて思い知らされた。ひろしかなりのハイスペックだよね〉
〈野原ひろしが35歳と知って、これからクレヨンしんちゃんの見方が変わってしまうわ。純粋に楽しめない気がする。勝ち組ぃ…〉
〈野原ひろしは35歳で年収600万なのにワイなんて250万や〉
ひろしの特徴は、スペックもさることながら、その貫禄にもあるだろう。「40代のイメージがあった」とよく言われるほどで、彼が予想よりも若いことにびっくりする人が多い。
ひろしのように貫禄がある35歳のキャラはほかにも、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉(年齢については諸説ある)、『機動戦士ガンダム』のランバ・ラルやギレン・ザビなど、ダンディーな男たちがわらわら。
〈同年齢のキャラを調べて驚く。アニメの35歳たちイケおじすぎるだろ……〉
〈ランバ・ラルって35歳なんですね。今年僕は35歳です。全然勝てません。あんなにかっこよくて渋くなれてません〉
〈35歳って野原ひろしとか両津勘吉なんだよね。あんなかっこいい男にはまだまだ遠い〉
〈来月で35歳になるわけだが、野原ひろし、両津勘吉と同い年らしい。俺は胸を張ってタメをはれるだろうか〉
昔は今よりも3~4年、大人になるのが早い?
なぜ、アニメキャラはこんなにも貫禄があるように見えてしまうのだろうか。
アニメ産業を研究しているアニメライターのいしじまえいわさんは、作品が生まれた昭和から平成初期の日本は、「子どもに対する大人の責務や役割が今と比べて強く意識されている社会でした」とし、当時の社会の背景に基づきながら解説をする。
「当時、子どもは両親や肉親だけでなく地域や社会全体で育てるべきで、周囲の全ての大人にその責務があるという価値観でした。また、現在と平成元年(1989年)とを比べると、平均初婚年齢は男女ともに今よりも3~4歳若く、第1子の平均初産年齢も、1985年は26.7歳だったが、2022年は30.9歳と上がっています。つまりそれだけ多くの人が今よりも早く人の親になり、大人の責務を負っていたわけです」
そこでアニメにおいても、当時の大人キャラクターは主人公である子どもに対して責務や役割を担った存在として描かれる場合が多かったと予想されるわけだ。
例えば、ランバ・ラルは主人公アムロ・レイにとって超えるべき壁として登場するし、野原ひろしは当然、しんのすけの父親の役割を果たしているうえ、いざというときは身を挺して家族を守る強さを見せている。
「また、アニメのキャラクターデザインにおいては、その人物が作中でどのような役割を担っているのかが一見して分かることは重要な要素です。大人の役割をもった大人キャラが、しっかりと大人っぽい顔をしていることは、昔のアニメの作劇において重要な要素だったのです。
さらに現在は個人主義的な考え方が広まったためか、昭和~平成初期に比べると子供を地域で育てるという感覚は減り、両親が育てるものと考える人が増えているように感じられます。
そうなると『実子でない子供全般に対して社会的責務を負う大人キャラ』という存在自体が時代にそぐわず、アニメにおいても扱う機会が減るのは自然なことです」
それでも過ごしてきた“35年”という時間は同じ
ただ、年齢よりも貫禄が見えるように感じるのは、アニメキャラだけではないとも。1966年放送の『ウルトラマン』でムラマツキャップ(隊長)を演じた小林昭二は当時35歳だったが、今でいえば岡田将生や千葉雄大がその年齢。印象がだいぶ違う。
「これも、現代において“大人はこうあるべき”“男はこうあるべき”という社会的制約が以前より緩くなったことが強く影響しているように思われます」といしじまさんは指摘する。
結局、永遠に年を取らないアニメキャラだけが1980、1990年代の社会性を鑑みた見た目を令和の今もしているため、貫禄がやたらとあるように見えてしまうのだろうか。
しかし、彼らが35歳という設定でしっくりくる時代は確かにあったのだ。そして時代は変わり、社会が変わり、平均寿命も変わったとしても、35歳になるまでに過ごしてきた時間の長さは過去も現在も同じ。35年という時をどのように積み重ねるかで、ひろしにも両津にも、ランバ・ラルにもきっとなれるはずだ。
取材・文/集英社オンライン編集部
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