「極悪女王」ゆりやんレトリィバァの体づくり「筋肉をつけながら増量したから、前よりむちっと健康的で自分らしい身体になれた」〝体重至上主義〟には「ほっとけ!」
集英社オンライン / 2024年11月20日 17時0分
Netflixシリーズ「極悪女王」で悪役レスラー・ダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァさん。出演決定時は、45kgの減量を達成したばかりだったという。しかし、105kgまで増量して役に臨み、再び30kg以上もの減量に成功。幼少期からずっと大柄だったゆりやんさんがなぜ体作りに真剣に取り組み、「自分の体が大好き!」と言い切れるまでに至ったのか、著書『じぶんBIG LOVE!♡♡♡ ~ゆりやん体づくり本~』に込めた思いなどを聞いた。
聞き手・構成=𠮷川明子/撮影=露木聡子/ヘアメイク=岡田知子
─芸人デビューして、好きなだけ食べたりしているうちに110kgまで増えてしまったんですよね。
ほんま、〝暴飲(ボウイン)グ・マイ・ウェイ〟で一気に太りました。テレビのダイエット番組にもよく出ていて、アボカドの種を切って煮出した汁を飲む「アボカド種茶ダイエット」とか、全然呼吸が上がらないような運動で体を温めてやせるとか、よくわからへんものもいろいろやったけど、すぐリバウンド。しんどいから嫌や、ダイエット番組にはもう出たくない! と思った時に、3ヶ月間トレーナーが運動と食事を指導するというダイエット番組の出演依頼が来ました。
それならやってもいいかなと思ってOKしたのが、今も指導してもらっている岡部友トレーナーとの出会いのきっかけです。
─岡部さんの指導はどのようなものでしたか?
もともと運動は好きなので、筋トレは苦じゃなかったです。食事も肉や卵、野菜が中心で、嫌なものを無理に食べるということはありませんでした。でも、時々食べたくなるものはあって、友さんに「何も食べないから、清涼タブレット菓子を食べるのはありですか?」って聞いて、「だめに決まってるじゃん!」と怒られたりもしました。
当時の私はカロリーばかり気にしてて、栄養などの知識が全くなかったんです。
─2019年に放送されたその番組では、10kgの減量に成功したんですよね?
終わったらテスト勉強から解放されたような気分になって、どんどん食べてたらあっという間に戻っちゃいました。
ある日、鏡に映った自分の姿を見て、「なんやこれ?」って思いました。いい加減、太ってる自分に飽きてきて、友さんのところに行って、「もう一度、ダイエットしたいです!」って言いました。その時、友さんに「今度こそ、仕事のためじゃなくて自分のために頑張ろう」って言われたんです。
─真剣に取り組み始めた矢先に新型コロナが流行しましたね。
20年1月から3ヶ月間ロサンゼルスに行く予定だったんですが、1ヶ月で帰ってきて、ステイホームに突入しました。外でトレーニングできないから、部屋にトレーニングマシンを置いて家ジムを作り、低温調理器や低速ジューサーなどを買って自炊するようになりました。
友さんからオンラインで指導を受けていて、食事や栄養についても勉強するようになりました。健康な体にとって何が必要か、よくないかといった知識が付き始めると、自分で「これは食べないでおこう」と判断できるようになったんです。だから、食事を我慢している、という感覚もなくなり、楽しくなっていきました。
せっかくやせたのに、ダンプ松本になるためにまた太る!?
─約2年かけて65kgになった頃に、Netflixシリーズ「極悪女王」の話が舞い込んできたんですね。
Netflixで、鈴木おさむさんが企画・プロデュースで、白石和彌監督、しかも主役のダンプ松本さんの役だって聞いたらやりたい!! って思うに決まってるじゃないですか。でも、2年かけて減らして、また何年かかけて体を大きくして、また戻すとなると、私は一体、何歳になるんやろう? ってめっちゃ悩みました。
ダンプさんは強いプロレスラーさんで、ぶよぶよと太っているわけじゃない。友さんに指導してもらって、トレーニングで体を大きくすることができるならやれるかも、と思ってやることに決めました。
もし、運動なしでただ太るだけやったら、せっかく身についた、食事や運動のいい習慣ができなくなるから嫌やったんです。どれくらい嫌かというと、歯を磨かないまま、好きな人の目の前でしゃべらなあかんくらい! でも、Netflixも食費の補助や月1回の健康診断でサポートしてくれましたし、健康的に増量できたんです。
─プロレスはもちろん未経験ですよね? 今まで格闘技などの経験はありましたか?
空手と柔道、剣道とレスリングと……、を一切やったことがありません(笑)。
長与千種さん主宰の女子プロ団体「マーベラス」さんの練習場に通って、一からプロレスを学びました。入門した練習生と同じように扱ってくれ、できることをちょっとずつ増やしていったんです。筋トレでは、見た目からダンプさんに近づけるために、前ももや肩、背中に筋肉をつけ、人を持ち上げても耐えうるだけの体幹もつけました。
─その成果もあって、熱演が絶賛されていますね。
こんなことを言うのはおこがましいのですが、ダンプさんのフリじゃなくて、自然と自分の感情として湧き上がってきたんです。
ダンプさんは、ジャッキー佐藤さんに憧れてプロレスの世界に飛び込んだけど、なかなかプロデビューできずに歯がゆい時期を過ごします。私も子どもの頃から芸人になりたくて、山田花子さんに憧れてました。NSC(吉本総合芸能学院)同期の中でもわりと早めにテレビに出て、賞もいただいて、順風満帆に見えるかもしれません。でも、自分が思うようにできなかったり、みんなが輝いているのに自分だけが置いていかれるような気持ちになったり、という感覚はいつもどこかにありました。だからその孤独感はすごく共感できたんです。
─ドラマでも描かれていましたが、ダンプ松本さんは悪役レスラーとして、日本中から嫌われていた中でも自分を貫き通しましたが、演じていてどのように感じられましたか?
カミソリ入りの手紙が送られてきたり、車に落書きされたりと、日本中から本気で嫌われ、嫌がらせを受けてきたのに、ダンプさんは自分を貫いていらっしゃいました。今はネットで叩かれることはたくさんありますが、ネットを一切見なかったらゼロですよね。まぁ、それでも見ちゃうんですけど。
私も、「こんなことをやったらネットで叩かれるんやろうな」と思って、自分を貫けない場面があるんです。でも、ダンプさんはそうじゃなかったから尊敬の念しかありません。私も、自分の好きな道は貫き通そうと思えるようになりました。
2回目の減量は、筋肉がついていて自分好みの体に
─撮影時は105kgまで増やした体重を、再び減量することにしたわけですが、いかがでしたか?
65kgまで落とした時、みんなに「やせた!」と驚かれましたし、自分でも良いと思ってました。でも今思うとよくある体型で、筋量もまだまだだったかもしれません。
「極悪女王」で筋肉をしっかりつけながら増量したおかげで、体重を落としても、前より筋肉の密度が高くなりました。今の方が、前より体重は重くても、むちっと健康的で、自分らしいなって思います。
─「極悪女王」の撮影中、「せっかくやせたのにまた太って」などとネットでよく書かれていましたが、ゆりやんさんにとっては意味のある増量だったんですね。
ただリバウンドしたんじゃなくて、トレーニングで作り上げた体だったから自信がありました。もしあれが自堕落な生活で太っていただけなら恥ずかしくて嫌だったかもしれません。
みんなはそんなことを知らずに好きなことを言ってたので、私は「数年後に見とけや!」って思ってました。
─「極悪女王」を観た人から、「ゆりやんまたやせた!」って驚かれていますが、今がまさにその時ですね。
ダンプさんの言葉を借りるなら、「ざまぁみろ!」です。でも、いろいろ取材していただいて、今回は体作りの本も出す立場で、「偉そうに」と言われるかもしれませんが、やたらと体重の数字にフォーカスされたり、「美ボディを手に入れた!」って言われたりすることに、もう「ほっとけ!」という気持ちがあります。
私は、健康で自分が好きだと思える体になるためにいろいろやってきているだけなので、数字や「美ボディ」といった言葉で片付けんといてほしいんです。
体が変わったら、心も変わって自信がついた!
─今回、『じぶんBIG LOVE!♡♡♡ ~ゆりやん体づくり本~』という本を出されますが、どのような内容ですか?
本には私が実践している食事や運動の内容についてたくさん紹介していますが、ダイエット本と思われたくなくて、「じぶんBIG LOVE!♡♡♡」というタイトルにしました。
ダイエットというと、何kgやせたとか、スリムになったとか、〝体重至上主義〟〝細至上主義〟ばっかり。私も、「70kgもあるくせに、ダイエット本なんか出すの?」って言われそうやけど、自分の好きな体を作ることの楽しさを伝えられる本にしたかったんです。
自分の体って与えられた〝器〟みたいなもので、チェンジすることはできないじゃないですか。だったら、せっかく自分が乗ってる〝器〟をかわいくしたいし、健康にしたいし、楽しくしたいじゃないですか! 文句言ってる暇があったら、自分の〝器〟をなんとかしたほうが早いし、そうやって自分で好きな体を作り上げることができたら、それがめっちゃ自信につながるんです。
自分に自信がつくと、昔の自分なら「こんなこと言ったらよくないかも」と抑えていたことも、「私は映画を作りたい!」「アメリカで有名になって、世界で成功したら、次は宇宙に進出する!」と口に出して言えるようになってきました。
自分のことを最高に好きだと思えるようになってもらいたい
─ただ体重という数値を減らすだけではなく、内面も変わっていったんですね。
私は今の、筋肉がしっかりついた、むっちりとした丸っこい体が大好き。それに、自分の〝器〟を作ることが楽しいと思えるようになったから、前みたいに〝暴飲グ・マイ・ウェイ〟になることも、もうありません。もちろん、大好きな友達とたくさん食べる日もありますが、バランスを考えられるようになったんです。
だから、この本を手に取る人には、誰かのようになりたいという気持ちを一旦忘れて、自分のことを最高に好きだと思えるようになってもらいたいんです。この本をかわいくハッピーな感じに作ったのも、一家に一冊の『家庭の医学』みたいに、ずっと手元に置いておいてもらいたいから。「何を食べてるのかな」「ゆりやんこんなこと言ってるわ」ってペラペラめくりながら、できることから、やってみたいことからやってもらえたらええな、って思ってます。
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