<地獄のサハラ砂漠マラソン>暴走族あがりの元反社ランナーが250kmを走破した先に得たもの「レース中に一度死んで生まれ変わったような気分で…」
集英社オンライン / 2024年11月23日 11時0分
“世界で最も過酷なマラソン”と称されるアフリカの「サハラ砂漠マラソン」。摂氏50度の中を7日間かけて250km走る、まさに“デスレース”に昨年初めて挑戦したのは現在、愛知県内に格闘技ジムを経営する桜木裕介さん(43)だ。かつての反社会的な活動への罪悪感を払拭するために参加したというが、灼熱の砂漠を駆け抜けた先に見出したものとは一体なんだったのか。
過酷なレースに挑む理由「過去の罪悪感を払拭したい」
“世界で最も過酷なマラソン”と称されるアフリカの「サハラ砂漠マラソン」。毎年4月に開催され、太陽に容赦なくあぶられ続けながら1週間かけて250kmを走りぬく。気温は常に50度超え、砂漠の地表面温度は70~80度と、熱したフライパン級の暑さ。
1時間に1リットル以上の水を飲まないと、瞬く間に脱水症状を起こし、動けなくなる。そんな肉体的にも精神的にも限界を試す場が、まさに「サハラ砂漠マラソン」なのだ。
実は記者自身も「限界を超えた後の自分がどう変化するのか知りたい」という興味本位から、昨年初めてこのレースに参加した。あまりの過酷さにレース中、参加したこと自体を激しく後悔したりもしたが、同時に「ここに挑戦する参加者たちは一体何者で、何を求めて参加したのか」、そんな素朴な疑問が浮かび上がってきた。
そんな中で出会ったのが、格闘技ジム経営者の桜木裕介さん(43)だった。
「かつて仕事仲間が死んでしまい…。僕だけが幸せでいいのだろうか、という罪の意識をずっと持っていました。罪悪感から逃れるために、自分自身に辛いことを課すという名目で、肉体を限界まで苛め抜くようなスポーツに次第にハマっていきました」(桜木さん、以下同)
それに伴い、ありとあらゆる過酷なレースに参加していったというが、トライアスロンの代表的な大会「アイアンマンレース」に参加した際、海外の参加者に「アイアンマンよりサハラ砂漠マラソンの方が過酷だぜ」と言われたことがきっかけで、今回の出場を決めた。
反社加入から脱退までの波乱の半生
現在、愛知県名古屋市に格闘技ジムを経営する桜木さん。端正なルックスに丁寧に整えられた銀髪。微笑みを絶やさず、その優しい眼差しの中には芯の強さが垣間見れるが、服を脱ぐと全身に刺青が彫られ、タダ者ではないオーラをまとう。
桜木さんが肉体を苛め抜いてまで払拭したい罪悪感とは一体なんなのか。サハラ出場までの半生はまさに波乱に満ちていた。
高校時代から暴走族に加入し、深夜の名古屋市内を爆音を響かせながら縦横無尽に改造バイクで走り回る日々を送っていたという桜木さん。高校卒業後は、暴走族の先輩の紹介で、表向きは一般企業として身分を隠して設立したフロント企業に入社。そこで桜木さんは会長秘書として働いていた。
「会長の鞄持ちのような仕事なんですが、24時間会長の傍に張り付きっぱなしで。電話には必ず2コール以内に取らなきゃいけないし、呼び出されたらすぐ駆け付けなくてはいけないので、当時は名古屋市内に7カ所も部屋を借りて常時スタンバイしていました。
そんな日々を送る中で、『僕の人生これでいいのかな…』って疑問がふと脳裏をよぎりました。収入は十分もらっていましたが、常時拘束され続けて、自分の時間も全く取れないし、真の意味で世の中の役に立てていない。この仕事を続けた先に、人生で残るものってなんなんだろうって虚無感を抱くようになったんです」
サハラ完走後に得たものとは
反社の世界を「足抜け」することは、高額な金銭を請求されたり、危害を加えられたりと、非常に難しいのが定番だというが、桜木さんは意を決した。
「不安と緊張で震える声を押し殺しながら会長に辞意を伝えました。すると、意外にもあっさりと『わかった、今日までだ』と承諾してくれて。会長は有能なビジネスマンでもあって、『やる気のない奴は消えてもらった方ほうがいい』と思ってくれたようで、自分は運がよかったんです」
その後、平穏な生活を送っていた桜木さんだったが、しばらくして昔の仕事仲間から連絡が入った。
「お前の後任の会長秘書が、死んだぞ」
桜木さんが会社を去った後、組織内での揉め事なのか…後任が何らかの不幸な出来事に巻き込まれたようだった。
「自分が辞めなければ彼は死なずに済んだのか」
辞めて命拾いしたことへの安堵と、後任の仲間に対する強烈な罪悪感や後悔が桜木さんを襲った。
そんな気持ちを紛らわすために出場したサハラ砂漠マラソン。
灼熱の250kmを走り切ったことで得たものとはなんだったのか。
「一皮むけたどころかレース中に一度死んで生まれ変わったような気分で…、完走し切った達成感で過去が吹っ切れましたね。
正直、このレースは過酷な上に、費用も100万円以上かかり、2~3週間仕事を休まなくてはいけない。いろいろ考えてしまうと参加に対して足踏みをしてしまいますが、一歩踏み出してスタートラインに立った時点で自分にとってはものすごい自信になりました。
いろんなことに、まずは一歩踏み出すことが、日常を変える大切な行動なんだなって改めて気づかせてもらいました」
人は間違いを犯す。過酷な経験をしたことで、それが消えることはないが、やり直すきっかけにはなるのかもしれない。
さまざまな事情や想いを抱えながら、ランナーたちは灼熱の限界に挑んでいるようだ。
取材・文/長沼良和
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