広岡達朗「日本は大リーグの高額複数年契約を真似するな!」10年総額1015億円の大谷翔平は「契約年数の半分もつのか?」
集英社オンライン / 2024年11月24日 17時0分
〈「佐々木朗希はメジャーで通用しない」広岡達朗が持論「1シーズン元気に投げられないし、なぜフォーク多投?」吉井監督の過保護ぶりも疑問〉から続く
今季のMLBワールドシリーズは熱戦の末、大谷翔平と山本由伸が所属するロサンゼルス・ドジャースの優勝に終わった。日本人メジャーリーガーの活躍ぶりを受けて、今後、日本のプロ野球から有力選手が海を渡って挑戦する流れは加速するだろう。球界の大御所、広岡達朗氏はこうした流れに警鐘を鳴らしている。『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』 (朝日新聞出版)より一部抜粋・再構成してお届けする。
大谷・山本のドジャース長期契約は間違っている
最近の大リーグの大型複数年契約には驚くほかない。これまで私が繰り返し警告してきたのは、「大リーグの高額複数年契約を真似するな!」ということだった。
150年に及ぶ大リーグの長い歴史は、オーナー側と強力な力をたくわえた選手会の熾烈な闘争の歴史でもあった。選手の年俸高騰は球団経営を苦しめ、結果としてチーム間の戦力格差を招いた。そのきっかけとなったのは1976(昭和51)年に生まれたFA(フリーエージェント)制度だ。
6年間大リーグ登録された選手はFA資格を取得でき、権利を行使すればほかの球団と自由に契約することができる。FAは選手にとっては移籍の自由をゲットできるが、力のある選手は各球団の争奪戦になり、後ろに腕のいい代理人がついて、年俸のつり上げ、高騰を招く結果になった。
この「悪魔のささやき」は1993年に日本でも採用された。その後、2度改正されたが、いまではすべての選手が8年間(大学や社会人出身選手は7年間)プロ野球に在籍すればどの球団とも契約できる。
そして9年経過すれば、海外移籍のFA権を取得することができる。しかも、1998年には日米野球機構の協定でポスティングシステム(入札制度)が創設され、球団が了承すれば9年待たなくても渡米することができるようになった。これがいま、大リーグの日本人選手急増時代を招いた経緯である。
私は、9年間がまんして世界の高みを目指す海外FAは認めるが、その正規のルールがあるのに、横紙破りのようなポスティングシステムには断固反対してきた。日本の選手が世界最高レベルの大リーグで活躍するのはうれしいが、これでは日本の野球の将来を担う人材がいなくなってしまうからだ。
原則は1年更新だ
日本野球の将来を憂えるとき、私が主催した1988(昭和63)年の「日米ベースボールサミット」を思い出す。日米野球の親睦と日本の野球技術の向上を目指して開催したものだが、特別講師に招いた大リーグの球団幹部たちから聞かされたのは「日本は大リーグのような高額な複数年契約だけは真似しないほうがいいよ」という忠告だった。
この忠告が36年後に象徴的な現実となったのが、10年総額1015億円の大谷と12年総額471億円の山本のドジャース移籍だった。
私はこの耳を疑うようなビッグニュースに驚き、連載しているコラムに書いた。
10年以上もの複数年契約はおかしい。それだけの期間、野球選手がピークの状態を保つのは不可能だ。いつも私が言うように、人間は年齢とともに衰える。大谷は29歳、山本は25歳。2人とも契約年数の半分ももたないと思う。
(中略)
アメリカの専門家はルールを自分たちの都合のいいように変えていく可能性がある。現に大谷の契約内容は、オーナーか編成本部長のどちらかが現職を退いた場合、途中で大谷側から契約を破棄できるオプトアウトが盛り込まれているという。そんな契約は契約と言えるだろうか。
アメリカは民主主義の国である。多民族国家だけに、平等でなければクレームが出る。戦う前から、このチームが勝つだろうと見透かされるような選手補強もしてこなかった。開幕の時点で横一線でなければ観客が来ないからだ。今回の2件の契約は、そうした戦力均衡の精神が崩れたことを意味している。
(「廣岡達朗コラム『大谷翔平、山本由伸……10年以上もの複数年契約はおかしい』」週刊ベースボールONLINE、2023年12月29日
https://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=101-20231229-10)
私はかねがね、勝負の世界であるプロ野球は1年契約が原則で、基本契約以上の活躍をしたらいくらでもボーナスを上乗せする出来高払いにすればいいと思っていた。だから先述の「日米ベースボールサミット」の大リーグ幹部が言うように、複数年契約には反対だ。
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