〈兵庫県知事選に“物議”〉「立花さんに感謝」斎藤知事の“自称広報”PR会社女性社長が投稿動画を削除していた…落選の稲村陣営は刑事告訴
集英社オンライン / 2024年11月22日 21時8分
〈〈斎藤知事“復権”に県職員は…〉「チカラが抜けて涙が止まらない」「実名告発した報復が恐い」…いっぽう最側近の幹部は「次の副知事はオレだ」〉から続く
11月17日に投開票が行なわれた兵庫県の出直し知事選は、パワハラや公金不正支出疑惑に絡む告発文書問題が原因で失職した斎藤元彦氏が再選された。SNSやYouTubeによる世論形成に加え「斎藤氏を応援する」として立候補したNHK党党首・立花孝志氏の行動も斎藤氏を後押したとみられている。ところがこうした今回選挙の“象徴”が、選挙が終わっても物議の種となり、捜査を求める動きも出てきた。兵庫県の混乱はまだまだ続く…。
ネットの反応が恐ろしく、耐えられなくなった人が次々と離れていった
選挙戦は自民党県連の多数派や立憲民主党系の団体、連合などが推した前尼崎市長・稲村和美氏が序盤リードしていた。しかし、ネットの後押しで「疑惑は嘘で、斎藤さんはハメられた」という同情論と支持が急速に広まり斎藤氏が逆転勝ちした。
斎藤陣営が力にしたネットによる情報拡散が、新聞やテレビによる疑惑報道で生まれた斎藤氏のマイナスイメージを覆したことで、「オールドメディアが敗北した」という解説が飛び交っている。
斎藤氏自身も当選を決めた17日夜、「SNSを通じた選挙戦をご支援いただきながら広げさせていただいた。応援してくれる方がSNSを通じて広がるんだという、このSNSの本当にプラスの面をすごく感じたところです」と述べ、選挙でのSNSでの効能を強調している。
SNSの活用に成功した斎藤氏と失敗した稲村氏、との対比で語られる選挙だが、ここへきて稲村氏の陣営は、選挙期間中にネットによる選挙運動が妨害されていたとの主張を強めている。
「稲村陣営もSNSを軽視したわけではありません。しかし支援団体『ともにつくる兵庫みらいの会』が開設したXの公式アカウントが11月6日と12日の2回にわたり、開設して1~数時間後に凍結されたのです。
ヘイトや暴力的なポストを禁じているXは、これら違反行為があるとの通報を受ければ、名指しされたアカウントを運営管理者が凍結する場合があります。しかし会がそうしたポストをしたことはありません。考えられるのは、虚偽の違反通報が一斉になされたということです」(稲村陣営関係者)
22日、稲村氏側は偽計業務妨害罪にあたるとして容疑者を不詳とする告訴状を兵庫県警に提出した。実際に虚偽通報が行なわれたのかや、どのような勢力が行なったのかは県警の捜査を待たねばならないが、稲村陣営の“SNS受難”はこれだけではないと陣営関係者は話す。
「言ってもいないし、そもそも地方自治体の話でもない“外国人参政権推進”を稲村候補が公約に掲げているというデマがSNSで流布されたのです。稲村候補は練り歩きや演説のときに、これを挙げて非難されるということがよく起きました。
また、支持者が稲村候補を応援する書き込みをすると、他の候補を批判する内容でもないのに短時間に数十もの敵意のあるリプが殺到する現象が起きていました。稲村陣営は終盤『あまりにも人がいない』と陰口をたたかれましたが、実はこうしたネットの反応が恐ろしく、耐えられなくなったスタッフが次々と離れていったからなんです」(関係者)
グループチャットでは「〇時に立花孝志さんが来る予定のようです」
在阪記者は選挙の光景を振り返る。
「SNS上の攻撃は斎藤氏も浴びていました。『疑惑があるのになぜ出馬したのか』という非難が多かったですが、疑惑があっても立候補の資格を失うわけではありません。
斎藤氏の演説では選挙戦後半、ほとんどの会場で斎藤氏を非難するプラカードを掲げる“カウンター”が数人現れました。カウンターはヤジも飛ばし、反発した人が手を出して現行犯逮捕される場面もSNSで出回りました。
さらに、選挙戦最終日の11月16日夕に神戸の繁華街で、稲村氏の直後に同じ場所で斎藤氏の演説が行なわれた際は、稲村氏の演説会が終わる前から『帰れ』コールが起こり険悪な空気になりました。ネットでもリアルでも自分の気に入らない候補の支持者の空間に飛び込み、積極的に非難をする人の行動が目につく荒れた選挙でした」
選挙がいっそう異質に見えたのは、斎藤氏を応援するために出馬し「当選は目指さない」と宣言した立花孝志氏が、斎藤氏の街頭演説会の直前や直後に同じ場所で演説を繰り返したり、斎藤氏の疑惑を調査する県議会特別調査委員会(百条委)の関係者の自宅前で演説を行なったりしたためだ。
斎藤氏の疑惑は、今年3月に当時の西播磨県民局長・Aさん(60)がパワハラや物産品のおねだり、公金不正支出疑惑をメディアなどに告発したことに端を発する。
県当局は告発文書の作成などを理由にAさんに懲戒処分をかけたが、県議会は告発に信ぴょう性があるとみて百条委を設置した。こうした中、7月にAさんが百条委での証言の直前に急死。
県当局は懲戒処分の過程でAさんの県公用パソコンに保存されていた私的な情報を入手し、Aさんはこれが出回るのを恐れていたと関係者は話しており、自死とみられている。
「百条委はこの私的情報は告発とは無関係だとし、個人情報であることから公表もしませんでした。しかし立花氏は、斎藤氏の支持者が集まる演説会場で、この私的情報の“中身”を話し、百条委やメディアはこれを隠しながら斎藤知事を陥れた、という趣旨の演説を繰り返しました」(県議筋)
斎藤氏は立花氏との連携を否定するが、二人が近接した時間に同じ場所で演説をすることで斎藤氏の支持者は立花氏の話も聞くことになる。斎藤氏が会場を去っても7、8割の聴衆が去らず立花氏を待つ光景が繰り返された。
60代の女性は「票は斎藤さんに入れるけど、演説は二人とも聞きます」と話した。
さらに「斎藤さんのサポーターが何百人も入っていたXのグループチャットでは『〇時に〇駅北側に立花孝志さんが来る予定のようです』と、立花候補の予定までやり取りされてました」と斎藤氏の支持者は話す。
「広報全般を任せていただいております」と投稿が…
こうした状態が、公職選挙法の趣旨に反するのではないかという声が上がり始めている。公選法は地方自治体の首長選挙の場合、候補者1人について街宣車を1台しか使うことを認めていない。
これに絡み立憲民主党の小西洋之参議院議員が11月19日、【総務省への確認】と記載したうえで、法解釈をXにポストした。
〈一般論として候補者Bが候補者Aの当選のために街宣車、拡声器、選挙ビラ、政見放送などを使用することは数量制限等に違反し公選法の犯罪となる。当選者AがBと共犯関係にあればAは失職し公民権停止となる。例えばAとBが同じ場所で演説会を連続開催する場合も犯罪は成立し得る。〉(小西氏のポスト)
「立花氏が斎藤氏のために街宣車などを使ったと認められた場合は違法で、2人が共犯関係なら斎藤氏は失職、公民権停止となる、と読める内容です。斎藤氏側は立花氏との連携を否定してきましたが、2候補の演説会の開催状況を確認しようという動きも出ています」(県関係者)
さらに、ここへきて新たな動きも。
「斎藤氏の選挙で『広報全般を任せていただいております』とYouTubeで主張した兵庫県西宮市のコンサルティング会社代表取締役の女性が、同じ動画の中で、立花氏に『私としては感謝』と述べていたことが21日に広まり騒ぎになりました。斎藤陣営の中の人物が立花氏への感謝を口にしたことが公になったのは初めてではないでしょうか。
動画は21日深夜に削除されましたが、この女性が言う広報全般を任された、とは何を意味するのか、注目が集まっています」(地元記者)
「集英社オンライン」はコンサルティング会社に11月22日の午前中に電話をかけたが、担当者は「電話での取材は行なっていません、質問があるならメールでお願いします」と答えた。質問状はすぐに送っており、回答があり次第掲載する。
選挙が終わってまだ5日。兵庫県には早くも次の嵐が迫っている――。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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