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アナウンスミス、行程表忘れ…憧れの旅行会社を2年で退職した女性が気づいた違和感…発見が遅れがちな女性のADHDの兆候とは

集英社オンライン / 2024年12月4日 11時0分

〈発達障害グレーゾーンで悩む若者たち〉簡単な質問に”マニアックな長文メール返答”で顧客から大クレームを受けた20代…こだわり、先延ばし…〉から続く

発達障害グレーゾーンのひとつでもある大人のADHDは、社会に出てから発覚するケースが多く、さらに女性の場合はその兆候が発見されにくいタイプが多く見られるという。今回は、行政機関、民間企業、病院などで約1万人の悩みを聴いてきた公認心理師の舟木彩乃氏が気づいた、グレーゾーンで苦悩する人たちの特徴を紹介する。

【画像】失敗ばかりの自分に嫌悪感を抱いて抑うつ状態になることもある不注意優位型

『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

発見が遅れる女性のADHD

これまで、ADHDは男性に多いといわれていましたが、最近では女性のADHDも多いといわれています。

ADHDはその特性の現れ方から「不注意優位型」、「多動性・衝動性優位型」、「混合型」(不注意も多動性も目立つ)の3タイプに分けて考えることがあります。

女性は、この中では「不注意優位型」が多いといわれ、とくに成人期以降に問題になることが多いようです。

幼少期や学童期のADHDの男子は、他の子にちょっかいを出したり、授業中に席を立ったりするなど、分かりやすいADHDの特性(多動性・衝動性優位型や混合型)が出ていることが多いため、周囲に気づかれやすいです。

一方、女性のADHDに多いとされる不注意優位型は、あまりにも忘れ物や失くし物が目立つケースでなければ、学童期に多少ケアレスミスや忘れ物が多くても、周囲がフォローしていると気づかれにくいのです。

ADHDの特性は、年齢によって変わりますが、不注意の特性は成人期まで持続するといわれています。

特に女性の場合は、多動性や衝動性が強く現れにくいため、不注意の特性が目立ちます。

ADHD(不注意優位型)が疑われるGさん

Gさん(女性30代)は、小学生の子どもと夫との3人暮らしで、現在は事務職の契約社員として働いています。

Gさんの幼少期からの悩みは、片付けが苦手でとにかく捜し物をしている時間が長いこと、そして先延ばしにする癖があることです。

もともと地理が得意で旅行好きなGさんは、大学卒業後は大手の旅行会社に就職しました。

1年目に見習いとしてバスツアーの添乗員などを経験しましたが、失敗の連続でツアー客だけでなく、バス会社や宿泊先からも苦情がくるほどだったそうです。

添乗員は、予定が組まれたツアーをお客様の状況などを見ながらスケジュール通りに実行していく必要があります。

Gさんは旅先の食堂や土産屋などに入るたびに、添乗員用の行程表をどこに置いたか忘れて、何度もバスに確認しに戻っていました。

うっかり集合場所を間違えてアナウンスしてしまい、お客様を混乱させることも度々ありました。

結果的に旅行会社は2年も経たないうちに退職することになり、その後は結婚して派遣社員で事務職などを数社で経験したそうです。

しかし、派遣の事務職の仕事でもPCのフォルダ整理や名刺整理が得意ではなく、また不得意なことや面倒なことは先延ばしにするところがありました。

徐々に仕事に影響が出て、上司から注意を受けることが多くなり、派遣契約の延長をしてもらえなかったこともあったそうです。

Gさんは現在も事務職の契約社員ですが、小学校のPTA役員をするようになってから、家庭と仕事の両立が大変になってきたということでした。

現在の派遣先は比較的ゆっくり仕事をさせてもらえて、上司もいろいろとフォローしてくれる職場のようで、今までよりも落ち着いて仕事ができているようです。

しかし、PTAでは細々とした作業が多く、期日までに各所に連絡し確認しなければならないことを複数抱えると処理しきれません。

それがストレスとなって職場でミスを重ねたり、会議でもPTAのことを考えてぼんやりしたりするようになりました。

このような状態が続き、Gさんをフォローしていた上司からも注意されるようになり、ショックを受けているということでした。

大人のADHDの不注意優位型の特性

以前からGさんは、自分がどこか他の人と違い、やたらとミスが多いことを気にしていたようです。

そして、ネットでいろいろと調べていくうちに「ADHD」にたどりつき、特に不注意優位型の特性は自分のことがそのまま書いてあると思ったそうです。

大人のADHDの不注意優位型の特性には、特に次のようなものがあります。

・忘れっぽい(ちょっとした用事を記憶しておくのが苦手)。
・注意の持続が難しく、気が散りやすい(自分が気になっていることに関心が向く)。
・ときどき、うわの空でぼんやりしてしまう。
・1つひとつの作業がきちんと終わらない。
・忘れ物やなくし物が多いので、捜している時間が長い。

不注意優位型の特性は、成人になっても持続することが多く、失敗ばかりの自分に嫌悪感を抱いて抑うつ状態になることもあります。

Gさんは、抑うつ状態になっているような印象はありませんでしたが、きちんと診断を受けてはっきりさせたいと筆者のもとに相談に訪れたこともあり、発達障害の専門医を紹介しました。

医療機関を受診後、不注意優位型のグレーゾーンだったということですが、不注意の特性を和らげる薬(コンサータ)を処方され、それがよく効いており、受診して良かったと話していました。

Gさんのように発達障害のグレーゾーンであっても、状況次第では薬が処方されます。

文/舟木彩乃 写真/Shutterstock

『発達障害グレーゾーンの部下たち』 (SB新書)

舟木彩乃
『発達障害グレーゾーンの部下たち』 (SB新書)
2024/11/7
1045円(税込)
232ページ
ISBN: 978-4815626372

あなたの職場にモヤッとする人はいませんか?もしかしたら発達障害グレーゾーンかもしれません。 

発達障害に関する情報は多いですが、職場にいる彼らと共に仕事をすることについては、必ずしも正確な情報が広がっているとは言えません。本書のテーマである「グレーゾーン」は、発達障害の傾向がありながら、その診断が付いていない人たちです。なおさら正確な情報は、みなさんに伝わっていないのではないでしょうか。
グレーゾーンには、発達障害の人とは少し違った特性があります。
筆者はカウンセラーやアドバイザーとして、これまで行政機関・民間企業・病院などで、約1万人の悩みを聴いてきました。その中には、グレーゾーンの人たち、さらにその上司や部下に当たる人たちもたくさんいました。
グレーゾーンの部下を持つ上司が、部下の言動に振り回され、管理能力がないと評価されて悩んでいる。グレーゾーンの上司を持った部下が、上司の指示がコロコロ変わり、ストレスで会社に行くことが嫌になっている――最近では、職場でのこんなケースに対する相談が増えてきました。
本書は、主にグレーゾーンの部下を持った人に向けて書いていますが、グレーゾーンの上司を持ったときの対応法についても書いています。部下に関する相談は以前からたくさんありましたが、上司に関する相談は、国会議員や首長などのパワハラ報道をきっかけに増えてきた印象があります。
発達障害グレーゾーンは、社会に出てから発覚するケースが多く、職場のサポートには課題が多く残されています。本書は、発達障害グレーゾーンの特性から、彼らとの関わり方まで、職場で起こりうる事例をもとに分かりやすく解説しています。一方で、グレーゾーンの人たちが持つ特性をいかすことも組織全体の成長のチャンスにつながります。第6章では、組織としてできることについて具体例を挙げてご紹介しています。
違和感を抱く部下や上司を持った人、職場のストレスマネジメントに関わる人の必読の一冊です! 

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