「ステーキ9万6800円」でもインバウンドで大繁盛する神戸牛店「確かに私たちの店はバカみたいに高い値段だけど…」外国人観光客がそれでも来る理由
集英社オンライン / 2024年11月29日 11時0分
〈富士そばの2300円の丼ものが「インバウン丼と呼ばれて炎上…」広報直撃! 店舗限定に高額メニューが並ぶ意外すぎる理由〉から続く
コロナ禍が落ち着いてから訪日外国人が急増し、今年の初め頃に各メディアで大きく取り上げられたインバウンド効果。高価なメニューを爆食いする外国人観光客たちが話題になったが、年末が近づいてきた現在、インバウンド向けビジネスを提供している飲食店はどうなっているのか、東京・浅草で取材した。
ステーキが9万6800円! 神戸牛に外国人観光客も大喜び
11月下旬、平日だというのに人はあふれかえり、まともに歩けないほどのにぎわいを見せていた。7~8割ほどは外国人観光客という印象で、有名店には長蛇の列もできている。
浅草といえば老舗店が軒を連ねているとも思われがちだが、実は店の入れ替わりが激しい。数年ぶりに浅草に行くと、すっかり店が変わっており、この地で長くビジネスをすることの難しさを実感させられる。
そんな浅草で、2022年12月に1号店を出店してから、わずか1年ちょっとの短期間で8店舗を展開、現在までに浅草だけで9店舗店を構えるのが、神戸牛専門レストラン「神戸牛ダイア」だ。
メニューを見ると、人気ナンバー1と記載されている「ステーキ重」が6380円(税込み、以下同)。「ステーキ寿司 4貫盛り合わせ」が4290円。
“プレミアムステーキ重”の欄に目を移すと、「神戸牛 フィレ」は220gで 5万4560、「神戸牛 シャトーブリアン」は220gで7万6560、「神戸牛 エンペラーブリアン」は220gで 9万6800円など、とてつもない金額が並んでいる。
今年の2月に同店を取材した際は、「インバウンド効果を感じている」とハッキリ答えていたが、あれから約9か月、今年1年をどのように過ごしてきたのだろうか。「神戸牛ダイア」浅草1号店で、東京エリア責任者の東野秀明さんに話を聞いた。
「3月終わりから4月、ゴールデンウィーク前までにかけての期間が、私たちのグループの中では最高益を出しました。浅草、上野など、桜の名所はこの期間、インバウンドでの人気が高かったのだと思います。
それがいったんのピークかとも思ったのですが、夏終わりからまたグングン伸びてきているので、来年にも期待を持っています」(東野秀明さん、以下同)
その一方で、9月にはスコンと売り上げが落ちていたという。その原因が「地震」だ。
「確かに私たちの店はバカみたいに高い値段ですが…」
8月に日本国内とその周辺では、8月8日に日向灘でM7.1、最大震度6弱、8月9日に神奈川県西部でM5.3、最大震度5弱、8月19日に茨城県北部でM5.1、最大震度5弱と立て続けに強い地震が発生した。
さらにこのころ、気象庁から南海トラフ地震臨時情報が発表されたのだが、これによって観光客がグンと落ち込み、売り上げにも影響が出たのだ。
「お客様の9割ほどは外国人観光客の方なので、そういった情勢はもちろん、円高・円安などの動きは売り上げに大きく関わります。また、季節によってどの国の人が多く来られるのかも変わってきますね。
例えば、2、3月のラマダン(イスラム教の断食月)前では駆け込み需要といいますか、イスラムの方々が非常に多く来店されました。逆に夏になると、暑い地域の国の方が少なくなります。ふだんから暑いところに住んでいる方は、旅行してまで暑いところに行きたくないんですよね、きっと」
さまざまな情勢に左右はされるものの、来年以降の見通しも明るいというインバウンド。しかし、楽観視もしていないという。「神戸牛ダイア」ではハラルメニューの提供や、ラーメンの開発、神戸牛×お好み焼き、鉄板料理など、チャレンジを続けている。
そしてなにより、観光客相手だからといって、“その場限り”と思って対応しないことが大事なのだという。高額なメニューを出すからには、相応のクオリティーとサービスを提供することを心掛けている。
「いまや世界各国、どのお客様もネットのレビューをしっかり見て調べてから店を選んでいますからね。確かに私たちの店はバカみたいに高い値段かもしれませんが、それには理由があり、神戸牛は本当に高いんですよ。
観光客相手だからといって、クオリティーの低いものを高い値段で売ったり、お客様に失礼なことをすれば、それは全世界共通でそっぽを向かれます。私たちはクオリティーも接客サービスも外国の方が喜んでくれ、そこに価値を見出してくれるように努力を続けています」
この日、店を訪れていた外国人客にも話を聞くことができた。5300円の「神戸牛 すき焼き」セットを食べていたのは、タイから来た20歳の女性・メアリーさんだ。
来店した客の率直な感想は……
「神戸牛に興味があり、ここに来ました。来店の決め手は、ここを歩いているときに調べていたら、Googleレーティングが高かったことですね。味はとても“スゴイ! オイシイ!”です。あと、値段は高くもなく、普通に感じますね。おいしいのでそこまで気にはなりません」
また、ラーメンも提供している神戸牛ダイアの「浅草ドンキホーテ店」では、「ラーメン 神戸牛餃子 神戸牛寿司」の2700円のセットを注文した、アメリカ出身の52歳女性・ジョージナさんが取材に応じ、「アメリカではもっと高価なので、この値段はとてもリーズナブルだと思うわ!」と笑顔で答えてくれた。
好調が続くインバウンドだが、楽に稼げるわけでは決してない。その裏ではたゆまぬ企業努力があり、こうした日本の一つ一つの店の努力が、訪日する外国人観光客への日本のイメージを押し上げてくれているのだろう。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部
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