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“東京都公式マッチングアプリ”で30代女性記者が実際に出会ってみた「都知事への誓約書が必須」「AIがお相手を自動提案」当日、現れた男性は…

集英社オンライン / 2024年11月29日 17時0分

今年9月、東京都の婚活支援事業の一環としてリリースされたAIマッチングシステム「TOKYO縁結び」。AIが相性のいい相手を紹介してくれるというが、その精度は一体どれくらいのものなのだろうか。また民間のマッチングアプリとの違いは? 実際に交際相手を探している、30代女性である筆者が利用して、男性と会ってみた。

〈実際の画面〉AIが複数のお相手候補を提案してくる

官製マッチングアプリ、登録はかなり面倒くさい

 東京都は近年、行政主導の婚活支援に力を入れている。未婚や晩婚が増えたことによる少子化に歯止めをかけようとしているわけだ。そして、「結婚を希望しながらも、婚活をしていない人が7割近くいる」という調査結果にもとづき開発されたのが、AIマッチングシステム「TOKYO縁結び」。

18歳以上の独身者で、東京に在住しているか、在勤・在学であれば登録が認められる。

30代前半独身彼氏ナシ、東京在住の筆者。まさに、行政が「早く結婚して子どもを産んでほしい」と思っているターゲット層であろう。そこで、一般に向けてリリースされた9月20日の初日に、さっそく登録してみることにした。

「TOKYO縁結び」は、民間のマッチングアプリとは異なり、登録はかなり面倒だ。まず、下記の6点を過不足なく準備しなければならない。

① 写真付き本人確認書類
② 独身証明書
③ 年収を確認できる書類
④ プロフィール掲載用写真
⑤ 誓約書
⑥ 登録料11,000円

独身証明書は、本籍のある市区町村で発行することができる。筆者は近所の出張所で申請した。一度、本籍地の住所を間違えたせいでトータルで20分ほどかかったが、スムーズにいけば10分もかからず発行してもらえるだろう。

年収を確認できる書類は、源泉徴収票や給与明細などが当てはまる。筆者は個人事業主なので、確定申告書のコピーを提出した。ただ、マイナンバーを隠し忘れたせいで、再提出ということになってしまった。ちなみに、その連絡が来るまで3週間ほど待たされている。

また、「誓約書」とは東京都知事に対して、登録した内容が真実であることや、婚活を前提とした登録であることを誓うものだ。

この間、登録料の支払いを済ませ、本人確認のためのオンライン面談と価値観診断テスト「EQアセスメント」も受けている。正直、何度も心が折れそうになった。

おそらく、取材でなければ、もう登録自体あきらめている。それほどに面倒なハードルが多いのだ。

ちなみに、AIマッチングのキモとなる「EQアセスメント」は、自分の性格についてAとBの選択肢が提示され、共感度がどれくらいか選ぶというもの。設問内容は、よくある性格診断とさほど変わらないように思えた。

ただ、同じ内容の選択肢がくり返し出てくるなかで、自分がとくに優先する価値観はなにか、あぶり出されるように感じた。

交際相手や結婚相手の許せないポイントについて問われるセクションでは、「A. 自分を否定的に捉えており、自信がない」と「B. 仲間内でもめごとがあっても積極的に関わろうとはしない」は、どちらも嫌だけどしいていえば……というように、自分が相手に求める条件を具体的かつ詳細に言語化できたのがありがたかった。

ちなみに筆者は上記のAとBの選択肢なら、Bのほうが許せない。なぜなら、Bは他者との関わり方が、自分とは真逆の人だと思うからだ。このテストを通して、自分は相手に社交性やコミュニケーション能力を求めているのだと気付くことができた。

お相手の提案だけでなく日程調整もAIがやってくれる

こうして、すべての工程を済ませ、年収証明書も再提出し、ようやく活動を開始できるかと思いきや、ここからまったく進捗しなくなってしまう。

10月15日に書類を再提出して、活動開始の連絡がきたのが11月19日。結局1ヶ月以上待たされてしまった。それだけ、登録希望者が多いということだろう。

相手を紹介されるのは毎週水曜日。1ヶ月あたり4人まで、AIがおすすめだと判断した男性がマイページに表示され、お見合いを希望するかどうか返答を求められる。

その下には、相手側からお見合い希望をしている男性のリストも。自分を紹介された相手がお見合いを希望した場合に表示される。

 筆者もさっそく、AIから紹介された男性とお見合い日程を組むことに。活動開始までの牛歩が嘘のように、かなりスムーズで驚いた。

というのも、あらかじめお見合い可能な日時を登録しておくと、システムがそれに合わせた候補を提示してくれるのだ。どちらかが先に回答すると、それが相手にも提案されるという流れだ。都合が悪ければ、ほかの日時を再提案することもできる。

今回は、お互い再提案することもなく、とんとん拍子で日時が決まった。

ちなみに会う場所は、お互いによく使う駅を登録するシステムだが、原則として女性の希望が優先される仕組みとなっている。

お見合い当日、相手は一体どんな人……?

当日、筆者は時間ぴったりに待ち合わせ場所に到着した。目印や行き方など、かなり詳細に説明されているので、とくに迷うことはなかった。しかし、そこに相手の姿がない。

当日の連絡は、クラウド電話を用いて行なう。マイページからアクセスすると、まず自分のスマホに着信があり、数秒間のアナウンスのあとで相手につながる。

お見合い相手によると、場所がわからず遅れているらしい。正直、「あんなにくわしく書いてあるのに?」と思ってしまった。

2、3分遅れて相手が現れた。合流後の動きについては細かく指定されていないが、カフェやレストランに移動するのがセオリーだろう。時間については30分〜60分が推奨されている。

すると相手が、「お店って、アプリが決めてくれてるんですかね?」と聞いてきた。「TOKYO縁結び」にそういったシステムはない。正直、「それくらいわかるだろ」と思ってしまった。

お店は自分たちで選ぶことを教えると、「〇〇(今いる地名)、くわしいですか? 僕はあまりわからなくて」と言われ、さらに萎えてしまった。初対面でダラダラと街を歩くよりは、早めに店に入ったほうがいいだろうと、駅ビル内の飲食店に入ることにした。

会ってすぐに頼りなさを感じたので、最初の印象はあまりよくなかった。しかし、相手から質問をしてくれたり、話題を提供してくれたりしたので、早めに打ち解けることができた。

遅めのランチを食べながら、お互いのことを話していく。まずは、仕事の話から。プロフィールで業種や職種はわかるが、大切なのは仕事に対する考え方だ。話してみると、価値観はかなり近いように感じた。というのも、お見合い相手は来月、勤めている大企業を1年半で退職し、フリーランスのエンジニアとして独立するのだという。

筆者も、会社にあまり長く勤めた経験はなく、フリーランス歴が長い。それは、チームで規模の大きな仕事をするより、自分1人の手が届く範囲で働くほうが性に合っているという理由なのだが、その感覚が同じだったのだ。

また、趣味の話でも共感するポイントが多かった。基本的には外出嫌いでインドアなものの、自分の趣味や好きなことのためには、労力を惜しまず行動できるという絶妙なバランスが似ている気がした。

すごく楽しいというわけではないが、会話が途切れて気まずい沈黙が流れることもない。30分ほど談笑したあと、少し踏み込んだ質問をしてみた。結婚願望がどれくらいあるかということだ。

回答は「ぜんぜん、ありますよ!」。真剣に結婚を考えていなければ、あれだけ面倒な登録作業を乗り越えられないということだった。しかし、いつまでに結婚したいのかと聞いてみると、今度は「僕はいつでもいいかな」という答えが返ってきた。

また、子どもについても「作りたいかどうかは、まだわからない」「家族を持つより、まずは仕事で自己実現したい」とのこと。

ちなみにお見合い相手は、民間のマッチングアプリ「Pairs」を利用したことがあるという。そのときは、メッセージのやり取りが面倒で、自身が組んだシステムとChat GPTを活用し、自動的に返信していたそうだ。

たまにAIが暴走して、ブロックされることもあったとか。会う約束をしてもドタキャンされることが多く、実際に会えたとしても、交際につながったことはほぼないらしい。

一方、「TOKYO縁結び」は、メッセージのやり取りやドタキャンの心配がないのがいいと言っていた。ただ、サービスを利用し始めてから2、3週間で、マッチングしたのは筆者のみだという。

自分から「いいね」や「メッセージ」といった積極的なアクションを起こせないぶん、民間のアプリよりマッチング率は低く感じるとのことだった。

その後、ちょうど60分ほどで話を切り上げ、店を後にして駅で別れた。

交際をお断りすると、200文字以内で理由を書かされる

実際に「TOKYO縁結び」でお見合いをしてみた感想は、価値観は合うのかもしれないが、恋愛感情を持つのは難しいというのが正直なところ。お互い、実生活では交わることがないタイプだったと思う。帰りの道中、2人で歩く姿が一瞬鏡に映ったのだが、あまりにもちぐはぐだった。

ということで、今後の交際については丁重にお断りした。きっと相手も、同じ選択をしたのではないかと思う。ちなみに、交際を見送った理由について、200文字以内で書かされた。

女性は民間のアプリが無料で使えることも多いので、登録料の11,000円は正直高い。だから、このアプリに登録する人は、お金を払ってまで結婚したいと考える人が多いはずだと思っていた。しかし、今回のお見合い相手からは、そこまでの熱量を感じなかった。

たしかに、民間のアプリでも男性は有料の場合が多い。しかも月額3,000円〜4,000円が相場なので、「TOKYO縁結び」の2年間で11,000円という価格はむしろ安いのだ。もしかしたらこのアプリにおいて、結婚に対する意欲は、男女で少しズレがあるかもしれない。

とはいえ、面倒なメッセージのやり取りがないことと、お見合いの日程調整がスムーズなことは民間アプリにはないメリットだ。時間を無駄にすることなく、効率よく婚活できる。

AIマッチングの精度は、ある程度信頼してもいいだろう。結婚相手を選ぶうえで、価値観が合うことを重視する人にはいいサービスだと思う。ただ筆者は、AIを介さずに検索サービスで条件を絞って探したほうが、お見合いしたいと思える相手が多かった。

AIに任せるか、自分の直感を信じるか—。

その後も、AIから定期的におすすめ男性の紹介がある。ただ、この人に会いたいと思える相手は、今のところ1人もいない。

取材・文 /近藤世菜 集英社オンライン編集部ニュース班

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