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取得率0.9%の生理休暇は“名ばかり休暇”⁉《男性上司に言いづらい》《予測できないから休めない…》《年休で取得》の声多数

集英社オンライン / 2024年11月30日 13時0分

先日、SNS上で「生理休暇」を巡って起こった議論が話題となった。制度やその使用に関しては賛成の意見が大半だったものの、なかには《男性上司に言いづらい》《明確に日が予測できないから突然休めない》などの声もあがっていた。厚生労働省の調査でも取得率は0.9%とほとんど使用されていない状況だが、その背景にある本音や課題を探った。

【画像】「上司に『生理中なのね』って思われるの嫌すぎて…」という女性も

生理休暇を巡り議論勃発

今月下旬、女性の「生理休暇」を巡ってX上でこんな議論が繰り広げられた。

一人の女性が彼氏から「女性は生理で休む可能性があるから評価がしにくい」「男女平等なんだよ。生理休暇は許せない」と言われ、思想や価値観の違いから別れることを決意したという文面を別の女性が引用し、

《生理休暇が許せない⁈ 子供を産めるのは女性だけで、その準備のためにあるのが生理。それに対してズルい~!!!って駄々こねるのは もはやお笑い》

《生理は貧血でぶっ倒れたり 腹痛で立ち上がれないレベルの人がいる事を知っているはず》

と投稿。それを巡り、X上では

《生理ってその前から不調でるし、最中もぶっちゃけ歩くのが精一杯。そんで変わらん顔で仕事こなさないといけない 出血と痛みに耐えてな…》

《本当に重い人だとまともに働ける状態じゃないから居ても迷惑なレベルの仕事しかできないし休んだ方がいいと思うな。実際の生理休暇はほとんど無給だし、そんな目くじら立てることなの?生理なんて男性は経験しようがないことなんだから軽率に口を出すべきじゃないんだよ》

《こういう人のせいでまともな男性達が同じ「男」として分類されちゃうのが可哀そうすぎる》

《女性にしか来ない生理現象の事話してんのに、なんで男女平等の話出してくんだよ》

とさまざまな意見が渦巻いた。大半は女性が生理休暇を取得することや制度自体にも賛成のようだったが、実際に使用しているかという議論にまで及んだ時にはこんな意見も…。

《単純に『生理がしんどくて休む』を男性上司に言いにくい》

《上司に『生理中なのね』って思われるの嫌すぎて、生理痛なのに年休で申請している女性は多いと思うよ》

《私の働いている職場は生理休暇から名称を変え、男女関係なく取れるようになりました》

《女性の立場からすると、生理休暇ありがたいが、明確に日が予測できる訳じゃないから、突然は休めない。で、結局利用できないのよ》

《会社がこういう休暇ありますよーって言いたいだけな感じがする》

なぜ生理休暇を取らないのか? 

生理は女性の12歳から50歳までの38年間に450~500回繰り返され、人によっては腹痛や頭痛などを伴うことから、国は戦後まもない1947年に「生理休暇」を法制化。生理日の就業について著しく困難な状況にある場合、正規非正規問わず取得できるとし、日単位だけでなく、半日や時間単位でも取得が可能となっている。

しかし、ほかの休暇と異なり、取得率の低さが目立っているのが現状だ。

厚生労働省によると、2020(令和2)年度中に女性労働者のうち生理休暇を取得した者は0.9%。また女性労働者がいる事業所でも生理休暇の請求者がいた割合が3.3%と、ともに制度化以降、減少の一途をたどっている。

取得率の減少を巡っては、医薬品や生理良品が大幅に改良されたという声がある一方、人員不足などの職場環境による要因も指摘されている。

日本医労連の女性協議会のアンケート調査によると、生理休暇を取っていないと回答した7573人に理由を尋ねたところ、「周りが誰も取っていない」が43.9%と最も高く、次いで「必要ない」(32.4%)、「仕事が多忙で雰囲気として取りづらい」(27.8%)、「人員不足」(18.8%)、「上司に言いづらい」(18.5%)の順で高かった。

さらに東京都労働局が昨年、「生理痛があるのに生理休暇を取得していない人(2809人)」に聞き取りを行ったところ、最も多かったのが「使っている人がいない」で44.9%、次いで「上司や周りに言いづらい」(35.5%)、「雰囲気として取りづらい」(32.8%)だった。

本当は生理休暇を利用したくても上司や女性同士の目線、職場の雰囲気など、周囲に遠慮して使えないというケースも。また「人員不足」(21.7%)、「仕事が多忙」(21%)の理由も多く、自身の体調よりも会社や仕事を優先して我慢している人が一定数いることも判明した。

日常のストレスとPMSのしんどさは相関関係あり…⁉ 

取得率が低迷する背景や、休暇を取りづらい雰囲気を助長させているものは何なのだろうか。女性の労働とライフワークバランスに詳しい近畿大学経営学部の松原光代准教授に話を聞いた。

「男性上司に言いづらかったり、性別的な違いを理解してもらいづらいっていうのも背景の一つにあるのかもしれませんが、それ以上に、取得しない理由の上位に『周りに迷惑がかかるから』っていうのがあるんです。それって育休や介護休暇、有給が取りづらいっていうのと同じで、背景には職場の人手不足や過重労働、長時間労働の問題があるんです。

実際に、生理前にイライラしたり落ち込んだりといった月経前症候群(PMS)のしんどさは、普段のストレスや疲れ、睡眠不足と相関関係があることが近年の研究データで明らかになっています。なので休暇を取ることを推進するというより、そういうストレス過多な職場環境を整えていくことの方が大事だと思います」(松原さん、以下同)

また取得率0.9%という数字についても松原さんはこう話す。

「在宅勤務の導入など多様な働き方が進んだ面も大きく寄与してるんではないでしょうか。また日本は未だに有給休暇の取得率が低いんです。『万が一のために取っておく』という。そうすると、生理痛などの体調不良時に、生理休暇ではなく、給料の発生する有給休暇を先に取得している方も多いと思います。

ただ、有給休暇って心身のリフレッシュのために整備されている休暇なのに、それが“万が一利用”されていることにも問題がありますけどね」

一方、休暇が取りづらい会社にいる限り、社員一人の力ではそのような社風や雰囲気を変えることは難しい。そうなると転職が視野に入ってくるのが自然な流れだ。

「これだけ人手不足で、人材を確保することが難しくなっている時代に、社員が健康で働ける組織づくりは、事情を円滑に運営する上でも大事な戦略であり、経営課題だと思うんですよね。そういう認識を社会的に広げていくことが大切であり、健康経営は社会的な潮流でもあります。

人は健康的に働ける職場に自然と移っていくものなので、仕事のためなら健康を厭わないようなマッチョ軍団のような会社はいずれ淘汰されていくと思います。

生理休暇自体は保険としてあることは大事ですが、まずフィジカル面でもメンタル面でも『しんどすぎる』状況を作らないことが大事であって、社員は健康的に働ける場所へ、そして経営者は危機感を持って健康経営に取り組んでほしいと思っています」

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

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