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「ドラえもんのことが本当に好き」靖国神社に落書きした中国籍の男が法廷見せた不敵な笑みとトンデモ主張〈裁判傍聴〉

集英社オンライン / 2024年12月3日 10時0分

今年5月、東京都千代田区の「靖国神社」の社号標に「Toilet(トイレ)」などの落書きが見つかった事件で、器物損壊と礼拝所不敬の罪で逮捕・起訴された中国籍の姜卓君被告人(29)の初公判が、11月29日に東京地裁(福家康史裁判官)で開かれた。裁判を傍聴した学生傍聴人がその様子を記す。

【写真】現在は削除されている、Bが放尿していると思われる場面

不敵な笑みを浮かべて

この事件を巡っては、警視庁が実行犯とされる中国籍の男3名の逮捕状を取り、指名手配をしているが現在まで姜被告以外は逮捕には至っていない。

姜被告は、幼少期から日本への渡航を憧れていたというが、2023年8月の「ある出来事」から日本に失望して、犯行に及んだという−−。

そんな男の裁判が始まった。

法廷の横のドアから拘置所職員らに連れられて入廷してきた、上下灰色のスウェット姿の姜被告。傍聴席を見渡して、不敵な笑みを浮かべる。

起訴状によると、姜被告は男らと共謀のうえ、今年5月31日午後9時55分から午後10時ごろまでの間に、靖国神社にある神社名が刻まれた石製の「社号標」に、赤いスプレーを噴き付けて「Toilet(トイレ)」と落書きして損壊(損害見積額462万円)し、礼拝所に対して公然と不敬な行為をしたとされている。

罪状認否で、裁判官に「どこか間違っているところはあるか」と問われ、

「間違いありません」

とハッキリとした口調で彼は認めた。

姜被告は、2013年に留学ビザを取得し入国。入国後は、会社員として働き、在留期間は2025年1月までだったという。

検察側は動機について、昨年12月に姜被告は共犯者とされている中国籍の配信者Bの動画を見て、Bの反日的な活動に共感し、強い憧れを抱いていたと指摘。

姜被告はBへSNSでこうメッセージ送った。

《すごく尊敬している。憧れている》

 Bは、中国版TikTokにあたるSNSでフォロワーが約400万人を超えるインフルエンサー(現在、アカウントは凍結)。

反日的な活動のみならず、中国国内でも食品の不正を暴く動画を撮影・投稿するなどしており、中国では超有名な「暴露系配信者」だった。

そんなBは、2023年8月から開始されている東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を受けて、ターゲットを日本に変えた。

Bの抗議活動に共感した姜被告は、今年4月には《あなたにすごく会いたい。私にできることがあれば言ってください》とのメッセージを送ったこともあったという。

そんな彼らが犯した事件の詳細はこうだ。

検察側の冒頭陳述や証拠によると、今年5月初旬にBから姜被告のもとに「日本へ行く」との連絡がきたことから、宿泊先を確保するなどした。

その後、Bから《靖国神社で抗議する》とのメッセージを受けて、同月28日には靖国神社へ下見に行った。

翌29日には、Bらが成田空港から入国。この日、姜被告とBらは初めて対面。

また、犯行に使用された赤色スプレーを入手したのも、姜被告だという。Bの指示を受けて、秋葉原の雑貨店で購入したといい、購入時には店員に対して「壁に使えるか、屋外で使えるか」と執拗に聞いてきたと従業員が供述していた。

犯行当日の31日は、Bらとともに電車を乗り継いでJR飯田橋駅に行き、姜被告は駅付近で待機。その間、Bらは靖国神社へ行き、犯行に及んだのだ。

犯行後、Bらはタクシーと電車を乗り継いで羽田空港に行き、翌6月1日の午前0時頃には中国へ向けて出国している。

証拠調べの後、裁判官は姜被告に対して証言台に座るように促して、被告質問を始めた。なぜか、姜被告は証言台に行くときにも傍聴席を見渡し、はにかんだ。

 「右翼に殺される」

法廷には通訳者も用意されていたが、在留歴11年ということもあり、流ちょうな日本語で彼は質問に答えていく。

弁護人「なぜ、罪をすべて認めたのですか」

姜被告「自分は歴史には興味がないけれども、日本人にとって靖国神社は重要なところなので、これから有罪になると、日本人の右翼に殺される、暗殺されると思い、言いました(罪を認めました)」

逮捕当時は、Bらが「落書きをすることを知らなかった」と否認していたという。

だが事件後、右翼団体の抗議や「高須クリニック」の高須克弥院長が、逃亡しているBらに1000万円もの懸賞金をかけたことから、恐怖を感じていたとのことだ。

一方で、Bらの犯行内容については、直前まで知らなかったと強調する。

「今年の2月の生放送(Bのライブ配信)で(Bが)『大きなことをする』と言っていたが、具体的な内容は知りませんでした」

姜被告は、5月28日の下見をするまで靖国神社にこれまで一度も行ったことがなかったといい、「歴史に興味がなく、靖国神社を恨んでもいませんでした」と弁解した。

弁護側の被告質問では、11年前に日本へ来た理由について問う場面があった。

姜被告は、日本の国民的キャラクターである「ドラえもん」が大好きだといい、長々と語りはじめる。

「子どもの時に、『ドラえもん』が好きで、大人になったら日本へ行きたいという気持ちになりました。『ドラえもん』の話の中に、海洋保護のセリフがあります。『ドラえもん』のことが本当に好き。でも、日本が好きかどうか曖昧になりました」

さらに、日本の教育と処理水放出の矛盾についても語りはじめた。

「日本人は、他の人の気持ちを大切にしているとの教育を受けました。しかし、周辺諸国の気持ちを気にしないで処理水を放出している。教育とは別ではないでしょうか」

姜被告は間髪を容れずに、勾留中の留置場での警察官の対応について不満を述べるなど、日本での体験談を語りはじめた。

弁護人や裁判官が制止しようとするが、「待って、待って」と話し続ける。

被告質問が中盤に差しかかったころ、姜被告は突如息が上がったのか、苦しそうにしはじめ、裁判官は一時休廷を宣言する事態に。13分間の休廷後、公判は再開され、息苦しそうにする場面もあったが、その後は予定どおりに公判は閉廷を迎えた。

「私が協力しなければ、海は10年後、20年後、どうなるのか」と海洋保護の重要性を力説するいっぽう、検察側から「共犯者が捕まっていないことについてどう思うか」と問われた際には、「答えたくないです」と薄ら笑いを浮かべた姜被告。

次回の公判は、検察側と弁護側の双方が意見を述べる論告・求刑と弁論が予定されている。

神社関係者の怒り

靖国神社では、これまでも外国人による放火や爆破事件など、反日的な活動家のターゲットになってきた。

今年8月には、本件と同様の社号標に「トイレ」を意味する漢字などが黒いインクで落書きされた模倣事件も発生しており、警視庁は被疑者とされる中国籍の少年(14)の逮捕状を請求し、行方を追っている。

昨今の外国人によるトラブルについて、神社関係者は心情を吐露する。

「靖国神社は、現代でも慰霊施設として重要です。そのため、神社界では今回の事件について怒っている人が多くいます。

最近でも、明治神宮も外国人によるトラブルに巻き込まれています。

対策をしようにも人員が必要で、費用もかかるので多くの神社が頭を抱えている状況です…」

東京・代々木にある明治神宮では今年に入って2回も大鳥居に文字が刻まれる事件が起こっており、11月には米国籍の男(65)が逮捕されるなど、神社でのトラブルが相次いでいる。

神社関係者は、「なによりも、清掃の対応にあたった職員が可哀想だ」と心を痛めていた。

取材・文/学生傍聴人 

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