エハラマサヒロが明かす吉本退所の真相「5年前くらいから考えていた」幻のグリーン車と700万円を2日で補填してくれた吉本社員の存在
集英社オンライン / 2024年12月3日 11時1分
11月末に所属する吉本興業とのマネジメント契約を終了したエハラマサヒロ。12月1日から個人で活動していくエハラに最速インタビュー。吉本卒業の経緯とこれからの展望を直撃した。(前後編の前編)
【画像】エハラが700万円の借金を作りかけた”伝説”のミュージカル公演
自分の中の「楽しい」がどんどん仕事になってきた
––––まずは退所に至った経緯を教えてください。
エハラマサヒロ(以下、同) 僕はもともと「お笑いを極めるために、ネタをずっと作り続ける」というタイプの芸人ではないんですよ。それ以上に「自分が楽しいと思うものを、全部表現したい」という思いで、ここまでやってきたんです。
だから、お笑い芸人として立ち回りながらも、歌を唄ったり、ダンスをやったり、ヒューマンビートボックスをやったり、マジックをやったり、いろいろなことに挑戦してきたんです。
––––一般的な「お笑い」の形には、最初からあまり固執していなかった、と。
もちろん最初はお笑い界に憧れて、「おもろいことをやりたい!」という気持ちで芸人を目指しました。
ただ、芸能界でいろいろなことに触れていくうちに、やりたいことも増えてきて。歌やダンス、ミュージカル、ヒューマンビートボックス……今までは趣味として消化してきた自分の中の「楽しい」が、どんどん仕事として形になってきたんです。
一方で、もっとフットワーク軽く自分で動きたいと思ったときに、吉本という巨大な企業に所属していると、やっぱり思うようには進まないケースも多くて。吉本は6000人以上の芸人を抱える事務所ですから、社員さんもやらなくてはいけない仕事がたくさんありますよね。そのなかで、僕の優先順位を上げてもらったり、“特例”で好き放題にやらせてもらったりすることはできないんです。
––––所属している以上、守らなければならないルールがありますもんね。
はい。だから会社に迷惑をかけてしまうのであれば、僕1人でやってみようかと。
もちろん吉本という会社は、芸事に集中できるようにいろいろな面をサポートしてくれますし、お笑い芸人を目指す方にとっては、完璧な環境だと思います。ただ僕は、大人になるにつれて、もっと自分のスピード感や熱量を大切にしながら仕事と向き合いたいと思うようになったんです。
「5年前くらいから、もう吉本の仕事はほとんど断っていました」
––––具体的に、事務所に所属していると何ができないのでしょう?
たとえば、先日ミュージカルで福岡に滞在していたんですね。そこでインスタライブをやっていたら、とあるアーティストさんが参加してくれて。「僕も来週、福岡なんですよ」って言ったんで、「俺もおるよ」「飲みましょうよ」「飲むんだったら、ギター持って、お酒飲みながらライブやろうぜ」っていう流れになったんです。インスタライブを観てくれていた人も「行きたい!」とすごく言ってくれて、これは面白そうだなと僕も思ったわけです。
でも、事務所に所属していると、まずはライブをする場所と契約を交わさなくちゃいけないですし、チケット発券を調整するまでに2週間ぐらいかかる。それにたくさんの部署の確認作業があり……開催するまで、最低でも1カ月は必要なんですよ。
でも、それではお互いの熱も冷めてしまう。個人ならすぐに場所を押さえて動き出せるわけですから、もうスピード感が全然違いますよね。
––––すでに個人事務所等も立ち上げられたのでしょうか?
実は、個人事務所はもう3〜4年前に設立しているんですよ。だから僕としては、ようやく本格的に動き出すぞ、という気持ちですね。
それに5年前くらいから、もう吉本の仕事はほとんど断っていて。仕事をするにしても、すべて自分で代理店などから取ってきて、それを会社に渡して、会社からお給料をもらう、というスタイルにしていました。
––––動きとしては、もう5年前くらいから1人でやっていたんですね。
はい。だから、周りの人間には「なんでやめないの?」ってずっと言われていたんですよ(笑)。でも、メディアや広告という側面では、やっぱり大企業が強い。たとえば今後、僕が何か大きなイベントを企画するとします。そうした場合、やはりPRのためにはメディアを使ったほうがいいですよね。その際に吉本に協力していただくためにも、まずはしっかりと会社に利益を渡しておこうと思ったんです。
だから、僕のYouTubeチャンネルに関しても、自分で広告代理店と組んで一緒にスタートさせて。吉本は特に動いていないんですが、毎月必ず3ケタ以上は売上を渡せるようにしていました。
700万円の赤字を用意してくれた吉本社員の存在
––––独立を決断した一番大きなきっかけは、何だったのでしょう?
退所を決意したのは、今年の3月です。理由は2つあって……。
1つは、2018年にピン芸人10周年を記念した自主イベント『ザ・ミュージカルマン』を企画しまして。そのイベントでは、TERU(GLAY)さんや山崎まさよしさん、清水翔太さんといった錚々たる方々にご出演していただいたんです。
一方で、今まで単独ライブの予算が20万円くらいだったところ、1500万円ほどかかることになってしまって。チケットは全部売れたんですが、700万円程度赤字が出てしまったんですよ。
で、僕は「やりたかったことなんで、借金してでも払います」と言ったんです。そうしたら、とある吉本の社員さんが「手伝えることあるなら、入らせてくれ」と間に入ってくれて。イベントを取り仕切っている人に「あとは僕が全部やるので、もうエハラにお金の話はしないでください」って言ってくれたんですよ。それでスポンサーを探してきてくれて、2日後に700万円振り込んでくれたんです。
そのとき、僕は「こんな社員さんがおるんや」とすごく感動して。「絶対に恩返しせなアカン」と、10倍の金額を返すまではやめないって決めたんです。それを果たしたので、やめることを決めました。
––––もう1つの理由は?
これは、ちょっと笑い話のようなものなんですが……。
3年くらい前、当時担当だったマネージャーに「キミが担当を外れたら、俺、吉本やめるわ」と言っていて。いざ担当を外れるタイミングで、その子が「これでエハラさんが思い止まるかわからないんですが……エハラさん、グリーン車になりました」って言ってきたんです(笑)。
––––吉本芸人でグリーン車を使えるようになるのは、かなり難しいんですよね?
そうなんですよ。だから僕も「めっちゃ頑張ってくれたんやろな。これはやめるわけにはいかへんな」と退所を思い止まったんです。
でも、それから移動が全然なくて、グリーン車に乗る機会もなかったんですが……今年の最初に久しぶりにミュージカル公演で福岡に行ったら、飛行機がエコノミーだったんです。
それで社員さんに「俺、ランクアップしたはずなんやけど」と聞いたら、「いや、吉本内の仕事はすべてグリーン車、飛行機はファーストクラスに変わるんですけど、外注のお仕事の際は先方がチケットを手配していて。『エハラさんはグリーン車』とお知らせしていますけど、それで無理だったら無理なんですよ」と。
僕はもう吉本の仕事をしていなかったので、グリーン車のために一生懸命頑張ってくれたマネージャーの顔を立てる必要はもうなくなったかなと思って退所を決めました(笑)。
––––そういう出来事が起こりつつも、円満に退所されているんですよね?
めちゃくちゃ円満ですね! これまでの活動の件もあったので、わだかまりもなく、「エハラさんのやりたいように」という形で送り出してくれましたよ。
取材・文/毛内達大 撮影/集英社オンライン編集部
ーーーー
エハラマサヒロ●1982年5月29日、大阪府生まれ。2009年、「R-1ぐらんぷり」決勝初進出にして準優勝。歌、モノマネ、ダンスなどマルチな才能を武器に、2017年には「ものまね王座決定戦」で優勝。「パフォーマンスZ」(TBS)、「バカソウル」(テレビ東京)などバラエティ番組で活躍する。
2012年以降、「ウィズ~オズの魔法使い~」「ファントム」など人気ミュージカルに多数出演。2018年からはピン芸人10周年を記念した自主イベント「ザ・ミュージカルマン」で歌、ダンス、ヒューマンビートボックス、モノマネ、コントなど独自のステージを展開。2024年12月からは吉本興業を退所して個人で活動をスタートした。
〈エハラマサヒロが「芸人に一番嫌われている芸人」と言われるワケを本人が解説…吉本退所後の野望と、先にやめた尊敬する2人の芸人〉へ続く
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