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〈高齢者から若者への政策シフトに賛否〉「100歳祝い金」廃止で中学3年間の給食費を無償化…自治体の狙いは?

集英社オンライン / 2024年12月11日 18時23分

岐阜県郡上市は2025年度から市立中学3年間の生徒約千人の「給食費無償化」を進める方針を発表した。子どもを持つ親からは喜びの声があがる一方、その財源は100歳の祝い金10万円を廃止するなど、高齢者事業を縮小することで賄われるというが、それについて賛否の声が上がっている。

政策が話題となった岐阜県郡上市で世界的な有名な“徹夜踊り”

高齢者から若者への政策シフト

「2025年度より中学1年生から3年生の生徒約千人の学校給食無償化の検討を進めていく」

今月6日、岐阜県郡上市の山川弘保市長は市議会本会議で、市内の公立中学校の全生徒約千人を対象に給食費の無償化を進める方針を発表した。

同市によると、これまで生徒1人当たり月額4600円を徴収していたが、無償化により、3年間でかかるはずの約16万円が浮くことになる。さらに高校生の通学費の助成に関しても、これまでは市内の高校に通学する生徒のみが対象だったが、来年度から市外に通学、または下宿する生徒にも対象範囲を拡大するという。

これには中高生の子どもを持つ親から

〈素晴らしい!〉〈中学生の給食費無料は現実問題でかなり助かります〉〈いい流れきてる!〉

などとSNS上で喜びの声があがっているが、果たしてこの給食費総額約5520万円はどこから補填したのだろうか。

市によると、100歳を迎えた長寿者褒章での祝い金10万円と、敬老会に対する1人2千円の交付金を廃止するなど、高齢者事業を一部縮小することにより補填したという。

「高齢者事業の一部縮小ばかりが注目されていますが、他の事業でも予算を調整できないか検討しています」(郡上市の担当者)

としつつも、SNS上ではこの“高齢者から若者へのシフト”が注目を浴び、さまざまな議論が渦巻いている。

ひろゆき〈子育て世帯に敬遠される自治体の先は消滅〉 

「ひろゆき」こと西村博之氏は、自身のXを更新し、〈子育て世帯に優しい自治体に未来があるけど、子育て世帯に敬遠される自治体の先は消滅だからねぇ。。 時代は変わりつつあるやも。〉と意見を投じた。

ほかにもX上では、

〈子供たちと、子育て世帯を支援することが、市の発展につながると思う〉

〈無駄な老人向けばら撒きを全て廃止し、子供達への支援には惜しみなく公金を使いましょう〉

〈こういうの待ってた。過剰な高齢者優遇をやめて若者にお金を回していく、いい流れが始まったかな〉

〈大英断ですね。財源がないっていうのは嘘か甘えってことがよく分かります〉

と賛成の意見があがる一方、

〈若者支援は大事だけど、高齢者への感謝の気持ちも忘れちゃいけないと思います〉

〈結局、限られた予算の中で、どこに重点を置くかの問題なんだろうけど、バランスを取るのは難しいですね〉

〈100歳ってそんなに毎年いるのか…。祝い金カットしなくても両立できないのかな〉

〈郡上市で育った若者は将来郡上市に税金を還元してくれるのだろうか〉

などと、疑問の声もあがった。

今回、給食費無償化を打ち出した郡上市の山川弘保市長。今年4月に市町に就任したばかりだが、この政策の狙いとはなんなのか。山川市長本人に話を聞いてみた。

「本市のような中山間地の小さな自治体は、人口減少が激しく、消滅可能性を否定できない自治体であるとの指摘が続いており、これを脱却することを目標としています。

若い世代が戻ってくれる郡上市、住んでくれる若い世代の将来に大きな負担を残さない郡上市を目指したいと考えています。そのために限られた予算規模の中で、全事業を見直して財源を捻出しつつ、若い世代への支援策を検討しているところであります。

高齢者の方々には、地元のためにこれまで大変一生懸命やってくださった、そういう感謝の気持ちは忘れることなく、医療機関の交通手段などの政策も検討しています。

市民全員が互いを敬い、一緒にこれからの新しい郡上市を築いていきたいと考えています」

「シルバー民主主義」の壁 

超少子高齢化社会へと進んでいく中、このような政策を進める上での課題や今後の展望について、近畿大学で地方自治法を専門とする村中洋介准教授に話を聞いた。

「高齢化がどんどん進んでいく中で、医療費も含め祝い金など高齢者への予算は自然と膨れ上がっていくわけですよね。その一方で、子どもの数は減っているので、子ども世代に意識的に予算を割り当てない限り、増えることはない。

世代間のバランスを取った時に、今まで高齢者に手厚かった予算を、将来世代へとシフトしていくことは、政策の内容にもよりますが、方向性としては間違っていないし、むしろ大事なことなのではないでしょうか」(村中准教授、以下同)

X上でも概ね「賛成」の意見が多く上がっていたが、現場レベルで「賛成派」が多数でも、実行されるに至っては、「シルバー民主主義」という壁が大きく立ちはだかっているという。

「現場では『将来世代へ予算を割り当てた方がいい』と思っていても、投票率の高い高齢者中心の政策を打ち出すことで選挙に勝ち残る『シルバー民主主義』の壁によって、議会が言うことを聞かず、高齢者に不利益な政策を通しづらいという課題もあります」

2012年、当時大阪市の橋下徹市長が身を切る改革の一環として打ち出した「70歳以上の高齢者が無料で地下鉄やバスに乗れる敬老パスの廃止(半額負担)」に対し、高齢者から「裏切者!」「高齢者いじめだ」などと激しい批判にさらされたこともあった。

またX上であがった「世代間の分断が生まれる」という意見に対しては、

「それほど影響は大きくないのではないでしょうか。年金を支給しないとか、高齢者事業を全て廃止することになったらまさしく分断ですけど。

ただ配慮としては、10万円の祝い金に関してもお金はなくすけど、市長のコメントが入ったお祝い状をあげるとか、それこそ予算を割り当てた地域の子どもを呼んで敬老会を開催したりとか、みなさんの幸福度がマイナスにならないように目を配るなどといった必要があるかもしれません。

補填した世代との交流イベントを開催したりとか、別の形で敬意を示したりするなど、行政が積極的に提案して納得してもらう形を探ったらいいのではないでしょうか」

将来世代への手厚い支援を進めると同時に、補填先となった高齢者への感謝や配慮も忘れてはいけない。

 取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

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