もはや日本人はお呼びでない? 2000万円越えの「レクサスLM」を使用した「ハイヤー」新サービスの主要ターゲット
集英社オンライン / 2024年12月20日 7時0分
運転手付きの貸し切り乗用車「ハイヤー」は、会社役員やエグゼクティブ向けの乗り物。しかし、バブル崩壊とコロナで需要が低迷。そんな中、新たな需要をもたらすと期待されているのがインバウンドだ。
バブル崩壊とコロナで需要低迷
そもそもハイヤーとは単なる移動手段ではなく、ワンランク上の快適な空間が最大の特徴だ。
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の資料によると、バブル崩壊前後の1991年平成3年の特別区・武三地区(東京都23区と武蔵野市・三鷹市を合わせた地域)の運送収入は約1290億円に達していた。
会社の役員が出社する際に自宅まで乗り付け、退勤するときも、足となる。会食があるならその間は飲食店の近場で待機し、ゴルフ場などへの移動にも使われている。
また、作家などVIPのおもてなしのために使用されたり、数多くの取材場所を回る必要がある新聞社の記者や、航空会社のパイロットたちにも利用されてきた。
例外なく高級車を使用し、運転手も専任となるため、料金は相応に高額だ。
大和自動車交通株式会社の担当者によると、1台を1年契約した場合、およそ792万円ほどになるという。
「好景気の時代には、航空会社のパイロットはもちろん、新聞社に就職して1年目の新人記者でさえ、取材のための移動に利用するのは珍しくありませんでした」(以下同、大和自動車交通株式会社担当者)
些細な移動でさえ高級感を求め、ハイヤーを気軽に利用できた状況は経済的な豊かさの象徴といえる。そのため日本経済の低迷に合わせて、ハイヤー業界は大きな影響を受けることとなった。
「バブル崩壊後は、多くの企業の財務状況が悪化する中、3K費(交通費、交際費、広告費)削減の流れの中で、企業からのハイヤーの受注が減少しました。さらに追い打ちをかけたのが、コロナ禍による出社減少です。コロナ禍後、契約数は伸びているのですが、最盛期ほどの水準には至っていない状況です」
前述の同資料によると、特別区・武三地区の令和2年の運送収入は約240億円で、最盛期の5分の1程度にまで落ち込んでいる。
だが、ハイヤー需要の低下が顕著の中、新たな需要をもたらすと期待されているのがインバウンドである。
1泊100万円超のホテルに泊まる外国人観光客の移動手段とは?
観光庁の発表によると、2024年1月から10月までの訪日外国人客数が過去最速のペースで3000万人を突破した。
訪日観光客が増える中で、あまり議論されてこなかった課題があった。
「東京には5つ星ホテルが多数あり、宿泊料も高騰する中、1泊100万円を超えるハイグレードな部屋が満室になることも珍しくありません。そういった富裕層も、移動する手段は基本的にはタクシーしかないんです。一般的なタクシー運転手は英語などの外国語を話すことはできませんので、特に空港とホテルの往復で難儀します。荷物が多く、また、空港に着く前にここだけ寄ってほしいという要望に一般のタクシーでは対応できないのです」
さらに、ホテル側にもハイヤーの予約がしにくい事情がある。
「ハイヤーの予約は弊社の場合、メール・電話・FAXのいずれかの手段で発注していただく必要があり、また、前日の予約など急な要望にはほとんど対応できません。加えて、最低利用時間が2時間からと設定されているため、短時間利用はできないのです」
海外の富裕層が帰国の2日前にホテル側にお願いすれば利用できる道理ではあるが、そのシステムは理解できないだろう。
そもそも車内決済の必要がなかったり、企業に契約してもらうことを前提にしたシステムのため、時代に適さない非効率な配車システムが未だに残されているのだ。
この課題に対応するため、大和自動車交通はニューステクノロジー社と提携し、2024年11月から都内のホテルを通じた訪日客向けハイヤーサービス「TOKYO CHAUFFEUR SERVICE」を開始した。
「その他ハイヤー」という新しい需要、雇用の変化に期待も
サービスの特徴は、配車のデジタル化だ。タクシーアプリのように簡単にハイヤーの予約ができる。予約の全プロセスがオンラインで完結可能で、必要に応じてチャットや通話でドライバーと直接コミュニケーションを取ることもできる。
「これまで運行状況の確認をする際は、ホテルがハイヤー会社に連絡し、ハイヤー会社がドライバーに電話をかけるという手順がありました。新しいサービスではスマホやパソコンから車両の現在位置をリアルタイムで確認できます。
また、法律上、ハイヤーは2時間以上の契約が必要ですが、今回は『その他ハイヤー』というカテゴリー区分で運行することで、短時間の利用も可能になりました。これにより、都内観光のスキマ時間にもタクシーと同じ感覚でハイヤーを利用できます」
ハイクラスな乗車体験も魅力だ。ドライバーは語学堪能で、東京シティガイド検定を取得しており、東京中の観光名所を熟知している。
車両は、レクサスLM、トヨタ アルファード、ヴェルファイアなどから、希望のクラスを指定できる。
レクサスLMを実際に試乗してみたところ、ラグジュアリーな乗車体験を味わうことができた。タッチパネル操作で正面モニターに映像を投影でき、冷蔵庫やスマートフォン充電器、Wi-Fiも完備されている。運転席と客席の間にはパーテーションがあり、音声を遮断できるためオンライン会議も可能。揺れが少なく、走行音も静かで、乗り心地は非常に快適だ。
現在、車両は13台が導入されており、2年後には都内で50台まで増車する目標を掲げている。またこのハイヤーサービスは、雇用形態の変化をもたらすことも期待されている。
「従来のタクシー運転手は歩合給で、都内の道を覚えることが収入に直結し、稼ぐハードルが高い側面がありました。一方、このハイヤーサービスは主に空港からホテルまでのルートを担当するため、固定給での雇用も可能なのです。さらに、英語力や観光案内など、従来のタクシーとは異なるスキルが求められるため、新たな人材の発掘にもつながるでしょう」
現在の主なターゲットは高級ホテルの外国人利用者だが、今後は国内の富裕層の移動手段として普及を目指しているという。
新たな雇用や、需要が広がることはもちろん大歓迎だが、我々日本人には現状関係のないサービスとなっていることが少し寂しい。日本のエグゼブティブたちにも奮起してもらいたいところだ。
取材・文/福永太郎
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