〈クリスマスにも百条委〉「パワハラは確認できず」“斎藤知事はシロ”は本当か? いまだ疑惑は決着つかず…知事がたじろいた記者の鋭い質問とは?
集英社オンライン / 2024年12月14日 12時0分
〈〈疑惑の兵庫県知事選〉1500人超の斎藤支持者のオープンチャットで「立花さんのポスター貼りました!」百条委県議の自宅前の街宣も“参集の呼びかけ”〉から続く
パワハラや違法な公金支出などの疑惑告発を背景に失職し、出直し選で返り咲いた斎藤元彦兵庫県知事。選挙では「疑惑はでっち上げ。斎藤さんは陥れられた」とする主張がSNSで広がり斎藤氏の力になったが、いまだ疑惑払しょくに至っていない。12月25日には県議会の調査特別委員会(百条委)で斎藤氏が3回目の証人尋問を受ける可能性もある――。
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12月11日、Aさんの4月の窓口通報を受けた調査結果を発表
疑惑をめぐる動きを整理すると、問題は3月12日に当時の西播磨県民局長・Aさん(60)がメディアや県警など10か所に7つの疑惑を書いた告発文書を送ったことで始まった。
「文書を入手した斎藤氏は3月21日に片山安孝副知事(7月に辞職)らに発信者探しを指示します。これを受けた片山氏は目星をつけたAさんを3月25日に尋問して文書を発送したとの供述を取り、Aさんの公用パソコンを押収しました。
2日後の3月27日、斎藤氏は記者会見でAさんのことを『嘘八百』『公務員失格』と罵倒したんです」(全国紙記者)
これを聞いたAさんは、4月4日に県の公益通報窓口に通報手続きを取っている。「この際Aさんは3月の文書の中の1項目を外しただけで、ほかの6疑惑はそのまま訴えました」と全国紙記者は話す。
この通報を受けた調査が続いていた5月、斎藤氏らは告発文書を「誹謗中傷する文書」と断定し、これを作成・配布したなどとの4つの理由を挙げてAさんに懲戒処分を出す。
その後、告発には信ぴょう性があるとの見方が強まり、県議会に百条委が設置される。しかし百条委での証言を前にAさんが7月に自死。この時期、片山氏が押収したパソコンにあった私的な文書を県幹部が持ち歩いており、Aさんはこれに苦しんでいたとの証言がある。
結局、百条委も疑惑の結論を出せない中、3月の告発に対する不適切な対処で県政を混乱させたという唐突な理由で斎藤氏の不信任決議案が県議会で可決。そこで失職を選んだ斎藤氏が出直し選を勝ち抜き県庁に戻って来た、という流れだ。
県がAさんに行なった対応を元同僚はこう語る。
「3月に告発文書が送られた時点で、発信者の特定や不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法によってAさんへの圧力は許されなかったとの見方が強いです。しかし斎藤知事は『文書は誹謗中傷性が高く、公益通報ではない』として当時の措置は妥当だったと言い続けてきました」
その斎藤氏が戻って来た後の12月11日、兵庫県はAさんの4月の窓口通報を受けた調査結果を発表した。
通報された6項目の疑惑のうち、パワハラとおねだりに関しては、「今回の調査では、パワハラと認められる事案があったとの確証までは得られなかった」「(贈答品の中に)貸与を装った贈与と誤解を受けたケースが確認された」と結論づけた。
「財務部はパワハラの有無は今後百条委で…」
この結果に基づき県は、ハラスメント研修を充実させ、物品受領のルールを明確にする是正措置を取るとも発表。斎藤知事は自らこの方針を記者会見で説明した。
パワハラとおねだりに関し、“シロ”を宣言するような調査結果の発表は、斎藤氏が主張する正当性を後押ししそうだ。
だが、他の4つの疑惑をどう判断したのかは明らかにされていない。今回の発表で斎藤氏が望む方向に事態が進むかどうかは不透明だ。
「調査主体である県財務部は、県政記者クラブの記者らに、『調査は是正措置を講じるかどうか判断するためのもので、パワハラの有無は今後百条委などで明らかにされると認識している』と話しました。つまり財務部は、パワハラはあったともなかったとも判断していない、と認めたのです」(地元記者)
もう一つ大きな意味を持つのは、制度に基づきAさんが行なった通報に県組織が正式に対応していたという事実だ。斎藤氏の会見では全国紙記者から、以下のような鋭い質問が出た。
記者「財務部に先ほど1つ確認した。通報に公益性があったかどうか。(財務部の答えは)『(Aさんが)公益通報して受理して是正措置に繋がったということで、公益性があった』ということだった。(Aさんの告発は)単なる誹謗中傷ではなく、一定の公益性があるということになる。このことの受け止めを」
この問いから始まった一連の質疑で斎藤氏の答弁は大きく揺れた。
まず斎藤氏は、「担当課がどのようにレクしたかは、私はちょっと承知してないので、担当部局、担当課長なりが説明されたということが全てだという風に(思います)」と、通報に公益性があったか否かについての答えを回避した。
記者からはさらに「県当局が調査を行なったのは、通報には真実相当性もあると判断したためではないのか」という趣旨の質問が出た。
これに斎藤氏は「今回ハラスメントと認められる事案があったとの確証までは得られなかったという調査結果があった」と反論。しかし財務部は前出の通り、パワハラの有無は判断していない。
記者に問い詰められた斎藤知事は…
結局、財務部が調査に入ったこと自体、Aさんの通報内容は確認する必要があると判断されたということになる。
そして調査の結果、是正すべき部分があると判断されたことで通報が嘘ではなかったことがはっきりした。そこでこの記者はさらに斎藤知事を問い詰めた。
「今回3月の文書とほぼ同じ内容の4月の公益通報について、公益性、真実相当性が一定認められたことで、3月の文書も外部通報の要件を満たす可能性が出てきたと考えられる。3月の文書の告発者をいきなり捜す初動対応が不適切だったことが、今回の内部通報(への県の対応)からも推認される」
これに対し斎藤氏は、「3月の半ば(の告発文書)については我々としては公益通報というよりも真実相当性含めてですね、確認できなかったというところで初動も含めて対応させていただいて。そして公益通報をしたということではなくて、作成された文書の内容も含めて4つの非違行為をされたということで懲戒処分させていただいた。これについては適切な対応だったという風に考えてます」と答えた。
3月の文書は真実相当性が「確認できなかった」ので、発信者探しという「初動」をしたというのだ。
だが斎藤氏はこれまで、3月文書が公益通報に当たらないと判断した理由として「誹謗中傷性の高い文書」だからだと言い続けてきた。
文書の真偽に関する表現が大きく変わったと記者に指摘された斎藤氏は、これに対し、「(3月文書は)元県民局長(Aさん)がうわさ話を集めて作成したということでしたから、これが外部通報の保護要件に該当することにはならないという風に判断したということです」と返答した。
4月通報とほぼ同じ文面の内容よりも、Aさんが「うわさ話を集めて作成した」と供述したことを重視し、嘘八百だと思ったというのだ。
だが「うわさ話」を集めたというAさんの供述は、斎藤氏が発信者探しを指示した4日後の3月25日、片山副知事の事情聴取で初めて出ている。
告発内容の多くに根拠があることが見えてきた今、情報源を守る方便だった可能性も高いが、それを考慮の外においても、斎藤氏が犯人探しという「初動」を命じた時点ではうわさ話というキーワードは存在していない。
「真実性の有無にかかわらず、公益通報ではないと勝手に判断すること自体、公益通報者保護法の趣旨から外れていますが、それ以前に斎藤氏の説明は矛盾が目立ちます」(フリージャーナリスト)
斎藤氏の会見と同じ時間帯に、百条委は12月25日に斎藤・片山両氏を証人として呼ぶことを決めた。「出席についてのご要請があれば、そこはしっかりと対応していきたい」。そう述べ、斎藤氏は逃げない姿勢を強調する。
クリスマスの尋問は、Aさんが訴えた疑惑を追及する山場になりそうだ。
一方で斎藤氏を巡っては、西宮市のPR会社「merchu」の代表取締役・折田楓氏が公職選挙法で買収に当たる可能性がある、インターネットを使った有償の選挙運動を斎藤陣営で行なったと“暴露”した問題もくすぶり続ける。
2025年も兵庫県政の大混乱は続きそうだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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