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〈兵庫県政大混乱〉斎藤知事、PR会社社長への告発が「異例のスピード受理」された理由…デマ拡散にも捜査拡大か

集英社オンライン / 2024年12月17日 11時0分

〈クリスマスにも百条委〉「パワハラは確認できず」“斎藤知事はシロ”は本当か? いまだ疑惑は決着つかず…知事がたじろいた記者の鋭い質問とは?〉から続く

兵庫県議会の不信任決議を受けて失職し、出直し知事選で再選された斎藤元彦知事。その斎藤氏の陣営が、公職選挙法が禁じる有償でのインターネットの選挙公報をPR会社に依頼したとの疑惑に絡み、斎藤氏を「買収の容疑者」とする刑事告発を兵庫県警と神戸地検が受理した。複数の疑惑で告訴、告発が出されている選挙を巡り、斎藤氏の複数の支援者が虚偽情報をSNSで拡散させたとの指摘も出ており、今後捜査対象は拡大する見通しだ。

【画像あり】兵庫県知事選再選直後、支持者にあいさつする斎藤氏と見つめる折田氏

告発が県警と地検の双方に受理された

兵庫県西宮市のPR会社「merchu」の代表取締役・折田楓氏が選挙の3日後の11月20日に自身のnoteで、選挙で斎藤陣営の4つのSNS公式アカウントの「管理、監修」を含む広報全般を“仕事”として手掛けたと受け取れる選挙活動記録を公表したことで、疑惑が発覚した。

公選法はネット上の選挙運動について、業者が主体的に企画・立案を行い、この業者が選挙運動の主体と認められる場合、報酬の支払いは買収罪に当たる可能性があるとしている。

候補者本人や陣営幹部の買収行為が認められれば、候補者の当選が無効になる場合もある。

「折田氏のnoteは違法との指摘が出ると、問題のある個所が次々と削除・改変されました。斎藤氏自身は疑惑に対して『公職選挙法に違反するような事実はないと認識している』『代理人、弁護士に対応をお願いしている』とだけ話し、その代理人として登場した奥見司弁護士が11月27日に記者会見したんです」(地元記者)

その会見で奥見氏は、斎藤陣営が「ポスターデザイン制作」などの名目で計71万5000円をmerchuに支払ったと認めたが、折田氏はSNS広報を「ボランティア」で行なっており、主体的な関与もないと主張し、違法性を否定した。

奥見氏は、折田氏のnoteの記載は自分の役割を大きく見せるために「盛った」のだと説明した。

この斎藤氏側の主張を受け、自民党の裏金問題を解明した神戸学院大の上脇博之神戸学院大教授と、元検事の郷原信郎弁護士が、斎藤氏本人は買収罪の、折田氏は被買収罪の、それぞれ適用対象だとする告発状を兵庫県警と神戸地検に送付。

この告発が県警と地検の双方に受理されたと、16日にメディアが一斉に報じた。

2週間で、検察、警察双方で告発受理に至ったのは異例の扱い

告発状発送翌日の12月2日に郷原氏はオンライン記者会見を開き、選挙前に斎藤氏本人が折田氏から、SNSの利用について選挙で協力できるとの説明を受けていた経緯がnoteの記述から明らかになっていると指摘。

その上で、斎藤氏側はSNS広報戦略が本業のmerchuから、SNS広報提案を聞きながら仕事でなくボランティアでやってもらった、との不自然な主張をしていると説明。

「そんな会社があるのか」と強調し、支払われた71万5000円はSNSを含む選挙運動への報酬で、これは買収にあたると解説した。

上脇氏も「(折田氏が)主体的なPR活動を行なっていたことは明らか」と分析し、これに報酬が出ているため買収・被買収罪を構成する要件はそろっていると説明していた。

告発を県警と地検の双方が受理したことについて地元記者は、「知事は県警組織のトップでもあるため、今後、知事側の捜査は検察が、merchu側の捜査は県警が、それぞれ分担して当たることになるでしょう。

merchuと斎藤氏の接点や選挙期間中の折田氏の行動を解明するため、斎藤氏の有力支援者や地方議員ら広い範囲の関係者への事情聴取が予想されます」と見通す。

目を引くのは県警と地検の告発受理が、上脇教授と郷原弁護士が発送した告発状の送達から2週間で明らかになったことだ。郷原氏は16日、Xに、

「最近、とりわけ政治家を被告発人とする告発については、捜査当局が慎重な姿勢であり、東京地検特捜部等では、刑事処分の直前に受理するのが通例になっていることからすれば、今回、告発状の到達から2週間で、しかも、検察、警察双方で告発受理に至ったのは異例の取扱いであることは確かです」

とポストし、驚きを隠さなかった。さらに郷原氏はその背景として、

「告発状公開後、告発人の私の元に、兵庫県民の方々から、様々な資料、情報の提供があり、それを逐次、捜査当局に提供してきたことにより、犯罪の嫌疑が一層明白になっている」と明かしている。

また上脇教授もXで、

「わずか2週間で受理とは確かに異例の速さですね」とポスト。“選挙不正告発のプロ”ともいえる2人が、そろって捜査当局の動きを予想を超える反応だと見ていることがうかがえる。

一方、出直し知事選を巡る疑惑はこれだけではない。県の関係者が話す。

「今回の選挙をめぐっては表になっている問題だけでも、①merchuを巡る買収・被買収疑惑、②NHK党の立花孝志党首による兵庫県議会関係者や斎藤氏の疑惑を告発した元県幹部に対する脅迫や名誉棄損疑惑、③斎藤氏の対抗馬だった前尼崎市長・稲村和美氏候補を支援するXのアカウントが、虚偽通報 が寄せられたことによって凍結された威力業務妨害容疑、④SNSユーザーが稲村候補や県議会関係者に関する虚偽情報を拡散したとの公選法上の虚偽事項公表容疑――があります。

このうち②は、兵庫県警が斎藤氏の疑惑を調べる兵庫県議会特別調査委員会(百条委)の奥谷謙一委員長に対する名誉棄損容疑での事情聴取を行うと立花孝志氏に通告し、立花氏は22日に聴取を受ける見通しです。(♯16)また③も、既に稲村陣営が刑事告訴しており、捜査が進むか注目されています(♯7)」と話す。

これに加えて、今後④も前面に出てくる可能性があるとの見方が強まっている。

虚偽情報を拡散した疑いがある“公式”オープンチャット

斎藤陣営の支援者は複数のチャットで連絡を取り合っていた。その中で「チームさいとう公式(※現在“公式”の文字は削除)」と名付けられたLINEのアカウント内に設けられたオープンチャットでは、

「連合赤軍のあさま山荘事件の警察が鉄球でアジトを破壊する動画を引き合いに出して稲村派=過激な左派系団体が取り巻きというイメージ戦略で、動画作成の中で引き合いに出してみます」

などと、斎藤氏のイメージを上げつつ稲村氏は「左派」だとの印象 を拡散させるアイデアが交換されていた。(♯15

さらに「百条委メンバーで調査に積極的な丸尾牧議員は大量の虚偽内容の動画で誹謗中傷にさらされ続けたとしてYouTubeに計17本の動画の削除依頼を行い、名誉棄損での告訴も検討していますが、問題のオープンチャットではこの告訴対象に挙げた動画の拡散も促されていました」(稲村陣営関係者)

斎藤氏の支援者が運営したチャットの実態は全体像がまだ見えないが、「丸山氏を誹謗中傷した動画のほか、稲村氏の公約や政治姿勢に絡む虚偽の情報の拡散が呼びかけられていた可能性があり、捜査当局もその動向を注視しているようなのです」と地元メディア関係者は話す。

また県政関係者は「これらチャットなどSNSによる広報、指示体制を構築、運営したり拡散に関与したりしたとみられる人物の中には、SNS戦略の経験を持つとみられる関東近辺の人物や、関西にある中国資本の会社の幹部社員がいる可能性がある。

彼ら彼女らの中にはネットだけでなく、斎藤候補の街頭演説で聴衆の整理に当たる姿が目撃されるなど、リアルでも選挙に深く関与していたようです。こうした人物らがなぜ斎藤氏の支持者をまとめるポジションにつき、何を目的とし、何をしていたのかもこれから解明されるべきです」と話す。

12月25日には県議会百条委で、選挙前から続いている疑惑に関する斎藤氏の3回目の証人尋問が行われる可能性もある。それと並行し、選挙前の疑惑と選挙に絡む疑惑をめぐる解明作業が音を立てて動き始めた。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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