〈甲斐・巨人入り〉FA・ドラフト大量補強の裏でソフトバンクから生え抜き選手の大量流出が止まらないワケ
集英社オンライン / 2024年12月17日 17時0分
ついに今年の目玉が決断した。福岡ソフトバンクホークスの甲斐拓也捕手(32)は、17日国内フリーエージェント(FA)で読売巨人ジャイアンツに移籍することを決めた。長年ソフトバンクを支えた球団の顔の電撃移籍の背景とは…。
【画像】「意外と流出多し!」ソフトバンクからFA移籍した選手一覧
甲斐はなぜ巨人入り?
「一度きりの権利だと思ってますし、いろんな話を聞いてみたい」
1か月前、FA宣言した直後の甲斐は神妙な面持ちでこう答えた。
甲斐といえば、2010年に育成ドラフト6位で入団し、2017年〜2022年まで6年連続でゴールデングラブ賞を受賞、同期入団の千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)とともに育成選手史上初の五輪代表選手に選出された。昨年のWBCでも侍ジャパンの主力として活躍するなど、ソフトバンクのみならず球界を代表する捕手だ。
そんな球界ナンバーワン捕手の“電撃移籍”に驚きの声があがっている。
「甲斐の出身は大分県大分市で、高校も地元の楊志館高校。地元・九州の人気球団の正捕手としてプレーすることを甲斐自身がいちばん喜びに感じていました。今の巨人はレギュラー争いも激しく、正捕手にこだわる甲斐は残留すると思っていたんですが…」(球界関係者)
今季の巨人の捕手事情は、侍ジャパン経験もある大城卓三(96試合)、小林誠司(42試合)と岸田行倫(88試合)といった実力者によるハイレベルな正捕手争いが繰り広げられた。それでも、巨人は甲斐に対してソフトバンクを上回る5年総額15億円以上の条件を提示したと言われている。
「甲斐の今季の年俸は2億1000万円(金額は推定)。ソフトバンクは4年総額10億円超を提示して引き留めにかかりました。しかし、巨人はさらにそれを上回る好条件を提示したと言われていますが、カネの問題で甲斐が移籍したとは考えられないですね。球団の経営や捕手としての評価に疑問を感じていたんだと思います。
ましてや、移籍先の巨人監督は甲斐と同じく捕手出身の阿部慎之助です。阿部監督が自身の現役時代の背番号「10」を提示して熱心に口説いたとしたら、捕手として高みをめざす甲斐が巨人入りを決意したのも頷けます」(前同)
今回の移籍には、かつて球界を代表する名捕手だった阿部監督の影響も少なくないが、それ以上にソフトバンク球団の経営戦略に疑問を感じていたのではないかという声もあがっている。
積極補強の裏で自軍の生え抜き選手には…
「ソフトバンクは親会社が携帯電話のキャリア会社なんですが、携帯電話って他のキャリアからのりかえて新規契約するユーザーとは料金設定など高待遇で契約するんです。だけど、長年契約しているユーザーに対してはあまりサービスや待遇がよくないんですよ。
だからってわけではないと思いますが、他球団から来た選手には手厚く、生え抜き選手には辛い球団になってしまってますね」(パリーグ球団スカウト)
実際、ソフトバンクはFA補強に対して金に糸目をつけない傾向がある。2021年又吉克樹、2022年近藤健介、嶺井博希、2023年山川穂高と、毎年いずれも破格の条件でFA選手を補強。さらに2022年オフにはMLB帰りの有原航平、今年も同じルートで上沢直之を獲得している。
一方で、自軍の生え抜き選手との契約には渋いところがある。多くの選手をFAで獲得しているが、意外にも資金力豊富なはずのソフトバンクから流出する選手は多い。今年も甲斐だけでなく、すでに石川柊太がロッテにFA移籍している。
さらに、12球団で唯一4軍制を敷くソフトバンクは、毎年育成枠で大量の選手を獲得して大量の戦力外通告を行なっている。球界で最も競争の激しい真のプロ球団という見方もできるが、こうした方針に疑問を持つ見方も少なくない。
「今年は、ウエスタンで最優秀防御率の三浦瑞樹(中日入り)、2軍で4割の打率を残したスイッチヒッターの仲田慶介(西武入り)、2軍で24試合登板して防御率2.82の左腕・笠谷俊介(DeNA入り)も戦力外になりました。にもかかわらず、ドラフトでは支配下で6人、育成で13人獲得しています。
この競争こそが常勝ソフトバンクの強みでもあるのですが、もう少し生え抜き選手に対して手厚く、長い目で育成に力を入れてもいいのでは……とも思います」(前同)
かつてソフトバンクに所属した千賀は、海外FA権を行使してメジャー移籍する際に「ホークス批判とかじゃない」としていたが、ポスティングシステムをめぐる球団の対応についてSNSで発信したところ物議をかもしたことがある。
千賀と同じく育成ドラフトから這い上がり、球界を代表する選手となった甲斐もソフトバンクを去る。
「今の自分があるのは、間違いなく、 ホークスに育てていただいたおかげ」
14年間、苦楽をともにした球団から離れることを決断した甲斐は熱いコメントを残したが、その胸中には複雑な思いがあるだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部
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