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3万円超えのクリスマスケーキが続々完売。物価上場、節約志向の時代にも高級品が売れる理由

集英社オンライン / 2024年12月19日 11時0分

原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動による物価高が進んだ2024年。食料品の高騰化も例外ではないが、ホテルなどで販売されている3万円オーバーのクリスマスケーキがすでに予約完売しているという。節約志向の時代に、なぜプレミアムな商品たちが売れ、流行しているのだろうか。

【画像】完売した35000円のクリスマスケーキ

「ハイアット リージェンシー 東京」の35000円ケーキ

今年のクリスマス用に「ハイアット リージェンシー 東京」が予約販売する限定30台の最上級クリスマスケーキ「ノエル・ネイジュ」は35000円、「ザ・プリンス パークタワー東京」予約販売する限定20台の最上級クリスマスケーキ「クラウン」は38000円など、庶民感覚からすると目玉が飛び出るような超高額ケーキが、人気を博しているという。

日本も格差社会になりつつあると言われているため、こういった超高額クリスマスケーキの販売は富裕層向けビジネスなのだろうか。

そこでまず「ハイアット リージェンシー 東京」のクリスマスケーキ販売担当者に話を聞いた。

「近年、材料費の高騰で販売価格も上昇しておりますが、特段予約の状況に変動はなく、むしろ完売日は年々早まっております。

今年は10月1日から4種のクリスマスケーキを予約販売し、そのなかの『ノエル・ネイジュ』(35000円)と『クローシュ・ド・ノエル』(25000円)はそれぞれ30台の限定ケーキでしたが、11月上旬で2種共に完売いたしました。

当ホテルのケーキはそれぞれターゲットを定めて販売しており、『ノエル・ネイジュ』と『クローシュ・ド・ノエル』の限定商品2種は、“富裕層”・“パーティー利用”向け。

そして『ノエル・ショコラ』(6800円)と『ルドルフ』(6800円)の定番商品2種は、“ファミリー層”・“カップル”・“単身世帯”向けとなっています。

12月6日には4種全てのクリスマスケーキが完売いたしましたが、実際予約していただいた方々もおおむねターゲットどおりだと考えております」(「ハイアット リージェンシー 東京」クリスマスケーキ販売担当者)

「ハイアット リージェンシー 東京」の場合、3万円オーバーの最上級クリスマスケーキは“パーティー利用”も想定していたとのことで、ターゲットを“富裕層”だけに限定しているわけではない模様だ。

実は富裕層だけでなく中流層にとっても購入に値する商品

高級クリスマスケーキのターゲット層について、フードアナリストの重盛高雄氏の見解を伺ってみよう。(以下、「」内は重盛氏)

「3万円オーバーという価格帯のクリスマスケーキも、富裕層だけではなく中流層にもターゲットに入るのではないかと思います。年に一度の“ハレの日”を有意義に過ごしたいという方々には非常にいい商品ではないでしょうか」

重盛氏の見解も「ハイアット リージェンシー 東京」の回答と符合するところがあるが、クリスマスケーキに3万円以上使う世帯とは現在一般的なのだろうか。

「当然ながら使える金額の上限はあるので、『何にお金を使うか』は重要ですが、ホテルのケーキならクオリティの信頼は担保されているし、なによりホテル名がブランド化しておりバリューがあります。

そのため中流層の消費者にとっても、年に1度のクリスマスというハレの日には、購入するに値する商品だと認める人が少なくないのでしょう。

高級シティホテルの歴史や格式といった商品を裏付けするバックボーンも、購入する価値に含まれているのではないでしょうか」

たとえば先ほど紹介した「ハイアット リージェンシー 東京」の「ノエル・ネイジュ」は、雪が降り積もる大きなモミの木をモチーフにしたケーキで、高さが約33cm、重さが2.5kgもあってビジュアルからして豪華な存在感がある。

たしかに、こういった高級シティホテルのクリスマスケーキがテーブルの中央にあるだけで、自宅であってもその空間と時間が格上げされたように感じるのではないだろうか。

その価値を考えれば、富裕層だけでなく中流層も手が出せる価格帯なのかもしれない。

「ですからこういった高級クリスマスケーキの登場は、格差社会が広がっている影響というわけではなく、クリスマスというハレの日に有意義な時間を過ごそうという中流層の水準が上がっているためだと考えています」

「“高くてもいいもの”はいいから買う価値がある」という考え方

物価高の時代でも高級志向があるのは、重盛氏いわく「現在は『安くないと売れない時代』ではないから」だという。

「中流層であってもさまざまな商品の値上がりに対して、納得して受け止めている方々も少なくありません。

それは値上げ理由が消費者に対してきちんと発信されているためでしょう。

極端な例になりますが、バブル期は品質に関わらず『高ければいい商品』といった考えが刷り込まれていました。

しかし、今は商品の情報を正確にキャッチでき、消費者の選択眼が磨かれているので、消費者も値段にとらわれず『高くてもよくないものがある』ことを知っています。

だからこそ逆に『“高くてもいいもの”はいいから買う価値がある』と考え、高額な品でも納得すれば購入する時代になっているのです」

それが物価高で節約志向が浸透している時代でも、高級志向が残っている理由ということか。

「『自分へのご褒美』などの高級志向は今後も存在し、節約志向と両立していく家庭もあります。

それはお金を抑えるところは抑えるものの、価値あるものに対しては使うときは使う、という意識が定着してきており、シティホテルの高級クリスマスケーキなどは金額に見合った価値があると考える人が中流層にもいるからでしょう」

「クリスマスケーキに3万円」という値段だけ聞くと驚いてしまうが、1年に1度の贅沢な価値ある時間を含めて買っていると考えると、案外妥当なのかもしれない。

物価高の時代でも選択眼の磨かれた消費者たちは、今後もプレミアムな商品と共存していくのだろう。

取材・文/十六夜瑠奈(A4studio)

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