約7年前にSNSが炎上、仕事はゼロに…ドン底を経験した角田信朗が『傾奇者恋歌』の歌詞にみつけた「漢の生きざま」
集英社オンライン / 2024年12月22日 13時0分
格闘家、歌手、俳優、タレントとしてマルチに活躍する角田信朗氏。63歳になった今でもその肉体は衰え知らずだが、7年前にSNSで炎上し仕事がなかったときがあったそうだ。それでも彼が仕事を諦めていない理由は一体なんなのか、角田が背負い続ける「漢」という道を聞いた。(前後編の前編)
格闘家、ボディビルダーを経て、今の仕事は「応援する人」
――現在の角田さんの仕事は主にどういったものになるのでしょうか?
角田信朗(以下、同) 企業のインナーイベントが多いですね。CMやパブリシティーというより、社員の士気を高める決起会だとか。
2023年から、横浜DeNAベイスターズの『横濱漢祭』応援総長を務めさせていただいていますが、ご存知の通り、今年ベイスターズは1998年以来26年ぶりに日本一に輝きました。
自分で言うのもなんですが、僕が関わったところっていい成績を残したり、右肩上がりの成長を見せることが多いんですよね。
――「漢・角田信朗」が世に求められているということですね。
パチンコ「CR花の慶次」シリーズの『傾奇者恋歌』や『よっしゃあ漢唄』などの楽曲に代表される、このお仕事の存在は大きいですね。
特に『よっしゃあ漢唄』という楽曲に出会ったことは、今の仕事や出会いにかなり大きく影響していると思います。
ベイスターズのお仕事しかり、ガソリンのENEOSウイングの社歌「WING HAPPINESS」を歌わせていただいたりと、「花の慶次」の数々の楽曲がさまざまな化学反応を起こし、新たな世界のお仕事につながっていると感じています。
――格闘家やかつては子ども番組の司会者をやられていたり、多様な顔を持つ角田さんですが、今は人を応援することが仕事なんですね。
『傾奇者恋歌』には「女(ひと)に微笑(えみ)だけ残しゆく」という歌詞があるんですが、僕の仕事…というより、お役目がそこにあると思っているんです。
行ったことのない場所の、会ったことのない人たちに向けて、僕が歌うだけでみんなが笑顔になる。それを見届けたら、僕は次の場所へ。
つまり、僕の特技は「人を笑顔にすること」なんですね。
――ほかにも、三大都市で単独ライブを行なわれたり、舞台にも出演されています。普段の角田さんの仕事のペースを教えてもらえますか?
東京と大阪に拠点(自宅)があって、北海道から九州まで全国を回らせていただいています。これだけ忙しいと、曜日や暦の感覚もなくなるんですよね。オフもほとんどありません。
――休みなしですか?
そうですね。マネージャーに「年内はいつから休めます?」と聞いたら、「12月30日までお仕事入っています」と(笑)。
28日が青森で、30日が長野。そして、年明けは3日に金沢(笑)。
でも、ありがたいことですね。
60代といえば定年を迎えて老後を楽しむ年代ですが、この歳でこれだけお仕事をいただけるって幸せなことです。
――「涙と感動の浪花男」といえども、そのスケジュールだと体力的にキツかったり、「やめたい」と思うこともあるのではないでしょうか?
無いとは云いませんが、お仕事を断ると「ここで仕事が途切れるかもしれない」という危機感は常にありますね。
特に芸能や格闘という世界は定年もない代わりに保証もありませんから。
今のお仕事を来年もいただけるという保証はありません。だからこそ、いただいたお仕事は基本引き受けます。
そうしていればまた次の仕事につながっていくものです。
炎上しても手を差し伸べてくれた恩人たち
――どうして、そこまで本気を出せるのでしょうか?
7年ほど前に、SNSで炎上してしまったことがありまして……。
打たれに打たれまくり、多くの人が僕から離れていき、芸能のお仕事も0に近い状態になってしまったんです……あれは、人生でも一番だと思えるくらいにキツかった。
ただ、そのときに手を差し伸べてくださった方がいまして、そのひとりがカーコンビニ倶楽部の林成治社長なんです。
――どのように救われたんですか?
林社長は初対面で「角ちゃん、俺と出会ったら忙しくなるよ」と。2回目にお会いしたときは「角ちゃん、うちのCMに出てよ」と。
炎上のことなんて何も聞かずに、あれよあれよという間に撮影してCMは完成、そしてOA。
このときの御恩は、一生かけてお返ししなければならないと思っています。
――今やカーコンビニ倶楽部のイメージキャラクターを務めていらっしゃいますよね。
僕から離れた人たちっていうのは、いずれ離れていく存在だったのだと思います。あのとき手を差し伸べてくれた人たちが僕の周りにいて、皆でいいお仕事ができている。
辛くて苦しいときに歯を食いしばり、しゃがんだらジャンプ! 誠実に実直に精進していれば、必ず手を差し伸べてくださる人たちと出会えるんです。
――しかし、SNSの功罪というものを考えさせられますね。
SNSって、実に自分本位で人を傷つけたり、嫌な思いをさせたりすることが平気で行われている。
SNSって素晴らしい側面もあるんだけど、諸刃の剣。心ない投稿で、人間の命を奪うことだってある。
そんな残念な世の中だからこそ、「人を幸せな気持ちにすること」の大切さを実感します。
だから、僕の役目は人を笑顔にすることなんだと、ひしひしと感じてます。
まぁ、「芸能界はやっぱり恐ろしい世界だな」ということですね(笑)。
どれだけ辛くても貫く「漢という生き様」
――たくさんの人の支えがあって、今があるということですが、それにしても、どんなときも「漢でいる」のは大変ですよね。
僕らのお仕事って、失敗が許されないんですね。ひとつ失敗したら、それで全部お仕事が飛んでしまう。今の政治家のセンセイ達とは大違い(笑)。
人生、成功するのは本当に難しいこと。でも、失敗する人はいくらでもいますよね?
失敗は至るところに転がっていて、成功できる人はほんの一握りなわけだから、失敗しないことって実は、成功する以上に難しい。
それを考えると、息が詰まることもありますよ。
――それは「角田師範」という肩書が常に付きまとうためでしょうか?
「師範」って肩書きがつくと、「角田信朗プラスアルファ」できちんとしていないといけないでしょ?(苦笑)
僕だって羽目を外したいときもあれば、いい加減にやりたいって正直思うこともありますけど、「K-1の角田」だったり、「角田師範」であることって、そんな緩んだ気持ちを引き締めてくれるんですね。
――「漢」のイメージが強すぎて、「背負い過ぎている」と思うことはありますか?
まぁ確かに「漢」を背負うのってしんどいことだとは思うんだけど、そこを「花の慶次」の例えで云うなら、
だがそれがいい、と(笑)。
取材・文/集英社オンライン編集部 写真/立松尚積
〈90年代年末の風物詩だったK-1「あいつが生きていたら続いていた」…すべての夢を実現した角田信朗の人生で唯一の後悔〉へ続く
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