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品数“厳選”勝負で業績好調の「業務スーパー」が抱える2つのジレンマ…ユニクロやニトリに類する神戸物産のビジネスモデル

集英社オンライン / 2024年12月20日 7時0分

「トレンドを見誤った」営業利益9割減で正念場の日産、カルロス・ゴーン独裁時代との“奇妙な符合”〉から続く

「業務スーパー」を運営する神戸物産の業績が好調だ。2024年10月期は1割の増収。これは3期連続の2桁での増収で、売上高は初めて5000億円を突破した。営業利益も1割の増益。2期連続の営業増益で、過去最高を更新し続けている。そんななか、足元で進めているのが外食・中食事業の強化なのだが、いったいなぜなのか。

【グラフ】神戸物産の業績推移

来期の業績見通しを早くも引き上げ

神戸物産は2024年3月期の期初に売上高を前期比7.9%増の4980億円、営業利益を同0.9%増の310億円と予想していたが、着地は売上高が99億円、営業利益が34億円とそれぞれ上振れた。

決算を発表した12月13日に中期経営計画の上方修正を発表。来期(2026年10月期)の売上目標を190億円、営業利益を40億円引き上げており、足元の好調ぶりがうかがえる内容だ。

業務スーパーの直営はわずか4店舗、1000以上展開する店舗のほとんどがフランチャイズ加盟店だ。

神戸物産は商品の製造と卸を行ない、店舗の仕入高の1%程度という加盟店からのロイヤリティで収益を得ている。

全国スーパーマーケット協会によると、業界の平均的な営業利益率はおよそ1%(「スーパーマーケット年次統計調査」)だが、神戸物産は7%に近い。

これはビジネスモデルの違いによるところが大きい。

ただし、フランチャイズ加盟して211店舗運営するG-7ホールディングスの2025年3月期上半期、業務スーパー事業の利益率は3.9%と高い。

神戸物産が開示している業務スーパーの標準的な店舗の営業利益率は2.1%。平均的なスーパーよりも高収益体質なのが特徴だ。

ここが一番のポイントで、神戸物産は加盟店オーナーを儲けさせるモデルを構築し、業績拡大に弾みをつけているのだ。

価格を抑えられているのはなぜか

一般的にスーパーマーケットはおよそ1万種類もの商品が置かれていると言われている。しかし、業務スーパーは5000を超える程度の品数だ。

フランチャイズオーナーの意向はあるものの、生鮮食料品はほとんど扱わず、冷凍食品や調味料、加工食品に強みを持っている。

売れ筋商品にフォーカスして廃棄も少なくしているため、店舗の収益力を高めやすいのだ。

一番の特徴である安さの背景にあるのが、スケールメリットとプライベートブランド(以下、PB)だ。

日本で1000を超える店舗を持つ会社は、ボランタリーチェーン方式で加盟店を支援する全日食チェーンや、イオンの小型店舗である「まいばすけっと」など数が限られるのだが、業務スーパーもそのうちのひとつで2024年10月末時点の店舗数は1084。

さらに、今期は1118まで増やす計画を立てている。

しかも、業務スーパーは知名度の高いブランドの商品はあまり扱っていない。

醤油やマヨネーズ、ケチャップなどの調味料は超大手の寡占化が進んでいる。

そうした状況のなか、知名度が高くはないブランドの調味料を製造する会社にとって、大量に商品を購入する神戸物産は好都合だ。多少の値引き交渉があっても取引を厭わないだろう。

大手メーカーの商品は価格優位性を獲得しづらく、業務スーパー側にとっても商品を低価格で販売できるというメリットが生じるのだ。

神戸物産のビジネスモデルはユニクロやニトリと同じ?

神戸物産は2000年代に入ってから中小の食品メーカーの買収を繰り返すようになった。

この頃、中国が2001年にWTOに加盟し、急速に生産額を拡大していたタイミングで、安価な商品が大量に流通するようになった一方、安全性を疑問視する声が出始めていた時期で、それは2014年の鶏肉偽装問題で表面化することになる。

神戸物産は透明性の高い国内生産に切り替え、顧客の信頼を獲得しようとした。これが今のPBの拡大につながるのだ。

業務スーパーの現在のPB比率はおよそ35%、これを37%まで引き上げる計画を立てている。全国スーパーマーケット協会の調査では、一般的なスーパーのPB比率は10%程度だ。

PBの商品は、販促費などの余分なコストがかからないために粗利率が高い。

業務スーパーは一般的なスーパーマーケットよりも、ニトリホールディングスやユニクロのファーストリテイリングのモデルに近いと言える。

両社ともにスケールメリットを活かして安さという武器を手に顧客開拓を進め、製造も手掛けるようになった。

それはやがてSPA(製造小売業)という洗練されたビジネスモデルに行き着いた。

業務スーパーはなぜ出店スピードが落ちているのか?

しかし、神戸物産にも弱点がないわけではない。それは店舗を急拡大しづらいというものだ。

全国のスーパーマーケット数はおよそ2万3000。業務スーパーはわずか5%ほどであり、出店余地はあるように見えるが、2024年10月期における店舗純増数は36であり、2023年10月期の41からは勢いを失った。

2021年10月期から純増数は減少しており、2025年10月期も純増数は34となる見込みだ。

出店スピードを上げられない背景に、顧客の来店頻度を高めづらいことと、1店舗当たりの商圏が広いことがあるだろう。

市場調査などを行なうナビットは、業務スーパーに関する消費者調査を行なっている(「一般客も歓迎、業務用スーパーについて大調査【1000人アンケート】」)。

それによると、業務スーパーに毎日来店するとの回答はわずか0.1%。週4~5日、週2~3日を合わせても全体の4割ほどとなっている。

全国スーパーマーケット協会のスーパー利用動向調査によると、ほぼ毎日との回答は5.3%。週2~3日、週4~5日を合わせると7割近くなる(「消費者アンケートでみた スーパーマーケットと 他業態」)。

業務スーパーは冷凍食品やレトルト食品、調味料などの日持ちする商品の購入が中心となるため、来店頻度が低いのだ。

顧客の来店頻度を高めるためには生鮮食品を扱う必要があるが、それでは業務スーパーの強みが活かせなくなる。「商品点数」と「廃棄量」を増やすことになるからだ。

業務スーパーの競合にコストコがある。両社の特徴は、わざわざ足を向けさせる吸引力があるというものだ。ただし、顧客が日常的に通う場所ではない。

業務スーパーの顧客は目的を持って来店するため、通常のスーパーよりも商圏が広くなりやすい。

過剰な出店が顧客の奪い合いという、命取りにつながりやすいのだ。コストコの国内店舗数は36であり、数が多くないことがそれを物語っている。

外食・中食事業の営業利益率が7%を超える

神戸物産はビュッフェレストラン「神戸クック・ワールドビュッフェ」、焼肉店「プレミアムカルビ」、惣菜店「馳走菜(ちそうな)」を展開している。

2024年10月期の外食・中食事業の売上高は前年の1.3倍の141億円、営業利益は2倍の10億円に急拡大した。営業利益率は7.3%だ。

プレミアムカルビはフランチャイズ化に向けて本格的に動き出し、現在の店舗数は22だ。

神戸物産は基本方針と戦略のトップに「外食・中食事業の拡大」を掲げている。

中長期的な拡大を目指すにあたって、事業ポートフォリオの拡大に動く神戸物産の戦略はスマートだ。

生鮮食品はドラッグストアが扱うようになり、市場には過熱感がただよっている。

この領域を強化したドラッグストア「ウエルシア」は食品の売上が全体の2割まで高まったものの、売上総利益率は18.5%と高くない。カテゴリー全体では30%を超えているのだ。

神戸物産の外食・中食事業は今のところ堅調。今後の成長には外食のフランチャイズ化が一つの山場となりそうだ。

取材・文/不破聡 写真/Shutterstock

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