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〈早期退職者の後悔〉「今は毎日お金の心配ばかり…」地方公務員を50歳で退職…定年までの15年間の「自由」を選んだ男性の苦悩

集英社オンライン / 2024年12月23日 17時0分

東北地方に住む田中さん(仮名、男性)は50歳の節目を迎えた昨年、31年勤めた地方公務員を早期退職した。定年まで残り15年の安定した収入を手放し、勝ち得た「自由な暮らし」だが、早期退職者を待ち受けていたのは厳しい現実だった。

【画像】少し疲れた様子で「後悔」を口にする田中さん

新卒から勤めた地方公務員を50歳で早期退職

「毎年、変わり映えのない仕事内容や人間関係の煩わしさに、年を負うごとに嫌気が差して、もう我慢の限界でした」

そう語るのは、東北地方に住む無職の田中さん(52)。昨年、新卒から31年間勤めていた地方公務員を50歳で早期退職した。現在、妻と猫一匹と賃貸アパートに住んでいる。

定年まで残り15年。どうして地方公務員という安定した仕事を手放し、早めにリタイアすることを決めたのか。

「子どもの頃から親に公務員になるように言われて育ちました。親は収入が不安定な職業だったので、自分の子どもには苦労してほしくなかったんだと思います。だから高校進学した段階で、迷うことなく公務員になるコースを見据えていました。他にやりたい仕事も思い浮かばなかったですしね。

ただ公務員にはなったものの、毎日変わり映えのない仕事内容に飽きてきて、人間関係も煩わしく、年齢を重ねるごとに嫌気が差してきたんです。とはいいつつ転職する勇気もなかったから、結局そのまま31年間公務員として働き続けました」(田中さん、以下同)

そんな変わり映えのない日々を過ごしていた田中さんだったが、早期退職を決める大きなきっかけは公務員の定年制度が変更になったことだった。従来の60歳から退職年齢は5年延長され、65歳となった。

「80歳が寿命としたら残りの時間が30年。そのうち半分の15年を仕事に奪われるんですよ。もう我慢の限界でしたね」

田中さんは50歳の段階で、ある程度の資産は貯まっていた。早期退職か、定年まで勤めるか…迷った末に「自由」を選ぶことにした。

家事労働とお金の不安に取りつかれる日々

「このままでは精神と肉体を疲弊させてボロボロになる。残りの人生は自由でありたい」

そんな思いから50歳で早期退職を決意。専業主婦の妻を説得するのは大変だったが、最終的にはこれまで勤め上げてきたことに対し、ねぎらいの言葉をかけてくれ、背中を押してくれた。

しかし、上司に早期退職を伝えた瞬間、田中さんの心は予想外に動揺していた。

「気分的にスカッとするかと思いきや、『本当にこれでよかったのか?』と後悔ばかりが押し寄せてきました。退職の日を迎えても、どちらかというと喜びよりも不安の方が大きかったです」

いざ退職してみると、夢に見た「自由」な生活は、意外にも質素で地味なものだった。

「自由時間が増える目論見でしたが、妻と家事労働を折半するようになり、案外やることが多くて忙しい毎日です。

月・水・金に本格的に家の掃除をして、猫トイレの洗浄と風呂掃除もする。なかなかの大仕事です。あと買い物が毎日のようにあります。週の半分は食事当番で、うちは夕食が早いので午後3時ごろには調理を開始しなくてはいけないんです」

そして常に脳裏をよぎるのはお金への不安だ。

「二度と働きたくないと思っていましたが、根が心配性なので、資産を30年期間で見ると、決して裕福には暮らせません。退職してすぐにクラウドソーシングの仕事を始めましたが、生業というわけではなく、小遣い稼ぎ程度です…」

「毎日お金の心配ばかり」 

安定した収入を失い、手元の資産を切り崩して生活費に充てる日々。早期退職してから1年半、お金への不安は尽きることはない。

「退職してから毎日、お金の心配ばかりしています。

一応、80歳までは生き残るマネープランとなっていますが、これは将来、公的年金を予定通りもらえることを前提としています。国の年金制度自体が10年後ぐらいに改悪されることも十分考えられるので絶対安心ということはありません。

クラウドソーシングの仕事を始めましたが、収入は微々たるもので、悠々自適な生活を送れているわけではありません。倹約しなければいけないので、気軽に他人に奢ってあげたり、金銭的に援助してあげたりはできないですね」

早期退職をしたことに後悔や前職への心残りはないのか。率直に問いをぶつけてみたところ、

「あと2~3年、退職を我慢してもう少し蓄財してからでも遅くなかったかな…と思わないでもないです。ただ元の公務員の世界に戻りたいかというと、全くそうではないし、前職に関しては未練はないです。

後任は上手く仕事をこなしているのかな、と気になることもありますが、退職後は一度も連絡がないので、知る由もありません…」

SNSやネットニュースを見ていると、若い人たちが早期退職やFIREを目指す傾向が強くなっているが、田中さんはその流れに危機感も感じている。

「気持ちは分かりますが、早期退職やFIREは決してゴールではなく、その先にも長い人生があります。自分の場合、何度もライフプランを練り直したり、シミュレーションを繰り返して、かなり計画的な早期退職ではありました」

計画性のない人や節約できない人には早期退職は難しいそうだ。さらに田中さんは、早期退職をしてもう一つ気付いたことがあったという。

「孤独に耐性のない人も早期退職には向いてないですね。何のコミュニティにも属さないので、人間同士の交流が全くなくなります。どうやら人間は、他人と喋らないと精神的にキツいようです。

うちは妻と猫がいてくれて本当に助かったと、今では思っています」

早期退職は十分な人生と資産のプランニングをしてから、よく考えて実行に移すのがよさそうだ。

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

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