お金を運用するのに必要なのは3つの「基本」だけ…山崎元氏が後世に残した、今年こそ始めたい超簡単な投資術
集英社オンライン / 2025年1月3日 10時0分
〈世界の長者番付トップ10内に入ったサラリーマンの稼ぎ方とは? 出世より収入…令和に求められるマインドセット〉から続く
「一度しかない人生を、お金の心配をせず、自由に気分よく生きていくために」……2024年の元日に亡くなった経済評論家の山崎元氏が最後に遺した書籍『経済評論家の父から息子への手紙』には、健やかに人生を送るためのヒントが散りばめられている。
中でも本当に誰でもが実践ができるお金の運用方法を、書籍から一部抜粋・再構成し、解説する。
お金の運用について必要な「基本」はこれだけ
手短に結論から述べよう。お金を効率良く増やすには、次のようにするといい。
(1)生活費の3〜6カ月分を銀行の普通預金に取り分ける。残りを「運用資金」とする
(2)運用資金は全額「全世界株式のインデックスファンド」に投資する
(3)運用資金に回せるお金が増えたら同じものに追加投資する。お金が必要な事態が生じたら、必要なだけ部分解約してお金を使う
投資する金額の決め方、投資対象の選択、「買い」と「売り」のタイミングについて説明したので、お金の運用について必要な「基本」はこれですべて説明したことになる。簡単だろう?
「父ちゃんは、長年お金の運用を専門にしてきて、本もたくさん書いているのに、これだけかよ?」と君は言いたいかもしれない。だが、本当にこれでいいのだ。この運用法を上回ることは、運用の専門家にとっても簡単なことではない。
現実には、例えばNISAやiDeCoといった制度を利用すると得なので、使える制度は最大限有効に使うといいが、これらは、お金を運用する際に利用したら有利な置き場所であり、言わば「器」だ。その利用法は「基本」を実行する上でのアレンジに過ぎない。すべて、「全世界株式のインデックスファンド」ないしは、これに類似する運用商品に投資したらいい。
これらの制度について説明しない。制度は時々で変化するし、利用法は常識で分かるはずだからだ。
借金なしに済む「生活資金」は常に確保せよ
多少の支出の集中があっても借金をしないで済む程度のお金は、別途確保しておくべきだ。通常、生活費の3カ月から6カ月分くらいだろう。
クレジットカードのリボルビング払いやキャッシングなどの細かな借金もしないように注意せよ。これらの借金残高に対する金利は高く(例えば年率15%)、運用の期待利回り(株式でも短期金利+せいぜい5〜6%)を遥かに上回る暴利だ。
父は、かつて大学で講義する際に、「デートの際にクレジットカードをリボルビング払いで決済する相手とは結婚しない方がいい」と毎学期教えていた。経済観念の乏しい相手と結婚すると苦労するからだ。
運用資金は全額「全世界株式のインデックスファンド」でいい
運用資金の全額を「全世界株式のインデックスファンド」に投資していい。インデックスとは株価指数のことだが、全世界の株式で構成されたインデックスに連動する投資信託に投資するのだ。
今なら、通称「オルカン」こと「eMAXISSlim 全世界株式(オール・カントリー)」でいい。理由は、有利な形で分散投資されていて、運用の手数料が安いからだ。
手持ちの運用資金のすべてを株式に投資することに抵抗感があるかもしれない。
インデックスファンドに投資した場合の株式投資のリターンは、100年に二、三度クラスの「最悪の場合」でも1年に3分の1くらいの損失、同じくらいの確率の「幸運な場合」では4割くらいの利益、平均的には短期金利がほぼ0%なら年率5〜6%くらい、だと実務の世界や学者の間では考えられていて、父も「そんなものだろう」と思っている。
正確な数字は誰も知らない。
本書の執筆時点(2023年秋)の日本の短期金利はほぼゼロなので、これプラス5%と見て、株式投資の期待リターンをおおむね「年率5%」くらいだと考える。現在の日本の税制では、実現した利益に対して約2割の税金が掛かるので、実質は年率4%くらいとなる。
この条件に、運用資金のすべてを投入することに君は抵抗感があるだろうか?確かに、「3分の1の損失」に当たると痛いし、日々の株価の変動が気になるかもしれない。
しかし、考えてみよう。特に、若いころの運用資金額はたかがしれたものであるはずだ。
自分自身のその他の経済的リスク
これに対して、自分自身のその他の経済的リスクを考えると、会社やビジネスの浮沈、給与・ボーナスの変動や、転職などによる収入の改善や逆に減少、健康状態の変化、家族や周囲の状況の変化、など多くのリスクに直面しながら、これらに「何とか対処している」はずだ。
例えば、お金が足りなくなれば、より多く働いて稼いだり、あるいは生活費を節約したりして、何とかなっているのではないか。
しかも、運用資金は「当面使わないお金」だ。数字で表れていて分かりやすいからといって、金融資産の損得にばかり注意を向けるのはバランスが良くない。では、月日が経って投資が進み、金融資産の額が大きくなった時にはどうなのか。
この場合、「3分の1の損失」の金額は、収入のアップダウンよりもかなり大きなものになっているかもしれない。しかし、金融資産の額がそもそも大きいということは、それだけ経済的な余裕が大きくなっているということだ。
やはり、「運用資金」を全額「全世界株式のインデックスファンド」で持っていて問題がない場合が多いはずだ。
お金を引き出そうとした時に、株価が大きく下がっているような事態が「結果的に」あるかもしれない。その時には残念に思うだろうが、「意思決定時点の(事前の)選択として正しかった」けれども、運が悪かったのだと考えて納得せよ。
その損失は「サンクコスト」(埋没費用。既に発生していて取り返しが不可能なコストのことで、意思決定上は無視するのが正しい)だ。それ以上の意思決定はできなかったのだし、株価はコントロールできない。
人生にあっては、コントロールできないことについて悩んでも仕方がない。できることは確率・期待値的に良い選択をして、後は好結果を祈るだけだ。それ以上はない。
しかも、損をしても、幸い「お金で済む話!」だ。命を取られたり、信用を失ったりするような問題ではない。
どうしても損が嫌なら「個人向け国債変動金利型10年満期」
本当は教えたくないのだが、「絶対に損をしないお金」を別途確保しておきたい場合は、「個人向け国債変動金利型10年満期」にお金を置くと、低利回りだが安全で無難だ。
商品の詳細は財務省のホームページで調べろ。銀行、証券会社、ゆうちょ銀行などの窓口で買える。十中八九、他の商品を勧められるだろうが、売る側が手数料の高い商品を買わせたいだけなので、窓口でのセールストークはすべて無視せよ。
金融機関はネット証券大手がいい
運用に使う金融機関は大手のネット証券がいい。取り扱い商品が豊富で手数料が安いことが長所だが、それ以上に人間のセールスマンと接触せずに済む点がいい。
父は長年世話になったので、これぐらいは言っておこうか。「楽天証券は悪くないはずだよ」。君が、まだ小学校の低学年の時だった。
一緒に風呂に入っていたら、「応援しているプロ野球チームがある」と言う。「どこだ?」と聞いたら、「楽天。父ちゃんが楽天だから」と答えた。何と素朴な。涙が出そうになるくらい可愛かったことを思い出した。
写真/shutterstock すべてイメージです
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