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〈キン肉マン〉「俺が最強の矛を守る盾」ハートは熱く涙もろい…サンシャインがこだわり続けた二人のオトコ「悪魔にも友情はあるんだ」

集英社オンライン / 2025年1月2日 9時0分

【キン肉マン】つきまとうのは「人間に負けた超人」のレッテル、“カメハメ討ちの功績”も本人は自覚ナシ。悪魔超人界きってのヘビー級・最高幹部の悪夢「超人墓場では仕事もせずプカプカと浮いていた」〉から続く

キン肉マン原作45周年、アニメ化40周年を記念した『愛と絆の原画展』が、2024年8月「池袋サンシャイン」で、同年11月には「心斎橋オーパ」で開催された。『キン肉マン』最新87巻の発売のこのタイミングで、会場で販売された「公式図録」より、業界イチのキン肉マン好きで知られる事件記者が、悪魔超人の最高幹部でありながら人間に負けたサンシャインの素顔に迫る。(前後編の後編)

【漫画】ジェロニモの底力!!

〈悪魔騎士の首領格サンシャインは、人間時代のジェロニモに負けた過去を持つ。敗北後ただちに肉体改造を行い、アシュラマンとコンビを組んで出場した宇宙超人タッグ・トーナメントでジェロニモに雪辱を果たす。だが、ネプチューンマンとビッグ・ザ・武道のヘル・ミッショネルズに殺害され、超人墓場送りに。なおも受難は続く〉

王位争奪サバイバル・マッチ最終決戦のキン肉マンチーム対スーパー・フェニックスチーム戦。知性チームの中堅ジ・オメガマン(本名オメガマン・ディクシア)は、超人墓場から脱獄を図った不届き者5人の頭部を、背中の巨大な五指に亡霊超人として召喚。その1人がサンシャインだった。しかも、小指担当である。

そして真の屈辱は、ジ・オメガマンの相手が、因縁のジェロニモだったことだ。

「サンシャインはどんな思いでジェロニモの肩にかぶりついていたのでしょうか。亡霊だからか、言葉は発しませんでしたが、晒し者にされ、まさに〝砂を噛む思い〟だったに違いありません。定着した誤用である『悔しい』という意味でも、本来の『味わいがない』という意味でも……」(悪魔超人関係者)

超人の各種記録に詳しい「週刊HERO」の翔野ナツ子記者が補足する。

「タッグ・トーナメントの後、ハワイ超人ヘビー級選手権に出場したジェロニモは、地元の至宝ジェーシー・メイビアを破り、第5代ハワイ超人ヘビー級チャンピオンの座を獲得しています。王位争奪戦では、闇討ちに遭って負傷したウォーズマンに代わり、キン肉マンチームの副将として最終決戦に参加。ローカルながら初タイトルも手に入れ、コスチュームも一新して、この大舞台に挑んだのはよかったのですが……。超人ハンターの異名を持つジ・オメガマンの相手にはならず、惨敗。焼かれた超人予言書ごと、いったんはこの世から消滅してしまいます」

ジェロニモの不甲斐なさが目立つほど汚点は際立つ

伸び悩むこの若手超人の存在こそ、サンシャインの人生について回る、逃れられない呪縛だった。ジェロニモは超人転生後、重要な局面で全く実績を残せていなかった。彼がもっと弱かったはずの人間時代に完敗しているサンシャインとしては、立つ瀬がない。ジェロニモの不甲斐なさが目立つほど、サンシャインの汚点は際立ってしまうのだ。

「完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)の第一陣が襲来した際、若手のジェロニモは真っ先に飛び出していくのですが、ストロング・ザ・武道の正拳突きで〝瞬殺〟された挙句、ダルメシマン、ターボメン、クラッシュマンの3人にも〝残酷ショー〟の如く弄ばれます。超人の回復力でなんとか戦線に戻ろうとしましたが、ネメシスら完璧・無量大数軍第二陣が地上に降り立つと、彼らの自己紹介を兼ねた連続攻撃を受け、またしても再び病院送りに。

とにかく相手が悪かったといえばそれまでですが、いつまでたっても正義超人軍の二軍感は拭えませんでした」(同前)

他方、悪魔将軍率いる悪魔超人軍本隊と超人閻魔ことザ・マン陣営の師弟全面戦争で戦線に復帰したサンシャインは、ニューヨークで完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)の1人シングマンと対峙。敗北寸前でシングマンを欺き、悪魔らしい逆転勝利を演じた。涙も交え、シングマンの情に訴えた欺瞞の弁舌には、切実な本音らしき心情も見え隠れする。

「オレは以前超人でありながら…、人間に負けてしまうという大失態を犯してしまったことまであったのだ~~っ。あの時にオレは誓ったはずなのだ…、もう生き恥は晒さねえと~~っ」

武士の情けを見せたシングマンを出し抜いて、狡猾に勝ちをもぎ取ったサンシャインは、こうも主張した。

「人間に負けたことは確かだ! しかしいつまでも記憶してちゃあ、悪魔超人は務まらねえ。〝都合の悪いことは忘れよ!〟。悪魔超人には記憶の欠如が必要なんだよ」

ジェロニモに思いの丈を告白

はたして、どちらがサンシャインの本心だったのか――。それを知る機会は、超人ジェロニモの覚醒とともにやってくる。

神々の棲む天上界から「調和の神」一派が下天し、地上に侵攻した〝超神の乱〟は、超人の存亡を懸けた大戦だった。その最終局面、超神8人と全宇宙を代表する超人8人が、天界に繋がるバベルの塔で対決。

3属性全超人から選抜された「リアル・ディールズ(真の男たち)」のメンバー8傑は、正義超人軍からキン肉マン、ロビンマスク、ウォーズマン、そしてテリーマンの名代ジェロニモ。悪魔陣営からはバッファローマン、アシュラマン、サンシャイン。完璧超人の看板を一身に背負ったネプチューンマン。

レフェリーを務めた宇宙超人委員会のハラボテ・マッスル委員長が解説する。

「トップバッターに名乗りを上げたのが、最年少のジェロニモじゃった。このバベルの塔は神が超人に仕向けた試練であり、初戦で超人側が勝たないと、他の7人は誰も次へと進めないハードな仕組み。つまり、最初の審判を受ける一番手は、全てを左右する最も重要な役回りじゃった。ジェロニモはプリズマンから『対超神戦の切り札』と認められたとはいえ、8人の中では実力、実績ともに最も見劣りするのは明白。

アシュラマンはジェロニモじゃ突破口の大役は無理だと猛反対。ネプチューンマンも同調し、正義超人のキン肉マンでさえ、不安をのぞかせた。そんな中、『前途ある若者の勇気を買って行かせてやろうじゃないか』とジェロニモに助け船を出したのが、なんとサンシャインだったんじゃ」

サンシャインはここで、長年飲み込んできたジェロニモへの思いの丈をぶちまける。ハラボテ委員長や部下のノック氏の証言をもとにサンシャインの言い分を再現すると――。

「(人間時代に五重リングで対戦した)あの時、確かにお前は強かった。だからあの負けに関して実はそこまで文句はない。だが許せんのはその後のお前の有様だ! オレに勝った時の気迫はどこへやら。その後すっかりヘタレて、負け犬と化したお前の負けが込むほどに、オレの評価も下がる一方。それがオレは一番許せん! お前のせいでオレがどれだけ理不尽に評価を落としてきたか」

無機質の砂なのに非常に超人臭い超人味のある漢

血が滲むほどジェロニモの肩を強くつかんだサンシャインは、こう続けたという。
「だが今日は違う! 今日のお前からはあの日と同じ気迫を感じる。だから今こそ見せてやってほしい、ここでこの場で! オレとおそらくテリーマンだけが見抜いていた…、本当のお前の強さを」

他のメンバーたちも、サンシャインの熱弁に心を打たれ、納得してジェロニモを一番手に送り出す。奇しくもその相手は、かつて自分にスーパーマン・ロードの試練を課し、人間から超人に引き上げた元「進化の神」だった。下天後の超神名はジ・エクスキューショナー。ジェロニモはこの闘いに勝利し、サンシャイン戦以来2度目、超人としては初のジャイアントキリングを果たすのである。

冒頭の悪魔超人関係者が称える。

「あの場面でジェロニモを推すのは、サンシャインが図体だけではなく、器も大きい証ですよ。ジェロニモの勝利によって、彼の自尊心はようやく救われたと思います。無機質な砂のボディでありながら、ハートは熱く、ウェットで涙もろい性格でもあるんです。体の奥には、ちゃんと肋骨も眼球も存在している。サンシャインは非常に超人臭い、超人味のある漢なんですよ」

サンシャインは「悪魔にだって友情はあるんだ!」「なんだそのオモシロ起源説は?」など、名言メーカーとしても知られる。バベルの塔の戦いでは、再び盟友アシュラマンとタッグを結成。「オレはアシュラマンという最強の鉾を守る盾だ!」など、悪魔の友情に溢れた名台詞を残すと、ザ・ナチュラル(元安寧の神)を道連れに、両者ノックアウトでリングに散る砂となった。

情に厚く、悪魔超人道一筋。勝利の歓びも、敗北の苦みも、巨体の砂に染み入っている。この先いつか、丹下段平のように哀愁漂う名トレーナーとして、後進悪魔を育てる存在になっていくのかもしれない。

取材・文/落花豆男
集英社オンライン編集部ニュース班

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