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あなたの親は片足で立つことができる? 高齢者の転倒事故がいちばん起きやすい家のなかのある場所とは

集英社オンライン / 2024年12月30日 11時30分

「懐かしい」と感じることで幸せホルモンが分泌…認知症のリハビリにもなる「回想法」とは? 年末年始は帰省先でぜひ老親と昔話を〉から続く

現役世代には何ら負荷を感じない日常の生活動作も、高齢者にとっては十分危険になりうる。靴を脱ぐときや服を着替えるときに片足になる動作は、特に危険だという。

【画像】料理を作るより身体的負荷が高い日常の動作がこちら

書籍『親への小さな恩返し100リスト』より一部を抜粋・再構成し、帰省中に簡単に実行できる、日常生活を補助するアイディアを紹介する。

毎日の生活動作に〝不便〟が生じている

毎日の家事動作には健康を維持する効果があります。身体活動の強さはメッツという単位で示され(※METs=安静時は1.0メッツ)、たとえば「料理を作る」は2.0メッツ、「風呂掃除をする」は3.5メッツ、「掃除機をかける」は3.3メッツ。「階段を上る」は4.0メッツです。

親が自立生活をしているなら、今日できたことが明日もできるように、暮らしの環境をサポートしてあげましょう。

ただし、現実問題として老化は避けることができません。転倒などのリスクも高まっていきます。そこで子に求められるのは、親の身体機能や認知能力が低下したときのことを想定した対策です。

Cさん(80代・女性)は55歳で夫を亡くし、以来30年近く一人暮らしをしていました。ヨガ教室に通うなど、体は丈夫で元気でしたが、70代後半からもの忘れが多くなりました。80歳を過ぎると、認知症の症状が顕著になり、瀬戸物の急須を直接ガスコンロにかけたこともあります。

帰省して、母親の危険な行動を目撃した娘さんは、その日のうちにコンロをIH(電気)式に交換しました。これは正解です。でも、認知症が進行する前にIHに切り替えていれば大正解でした。

高齢になれば、自分でできる(と思っている)ことがあればあるほど、家の中でトラブルを招く危険も多くなります。しかし、その危険から親を守ることも、事前の対策で可能になります。

身体機能の衰えとともに、親の毎日の生活動作には〝不便〟が生じてくると思ってください。そして、不便を解消する手助けをして、〝快適〟な生活を一日でも長く続けられるようにしてあげるのが子にできる恩返しです。

玄関、脱衣所にはイスを置く

「片足で立ってみて」と、親にお願いしてみてください。ふらつきはないでしょうか?足腰が弱くなると、片足で重心を取るのが難しくなり、転ぶ原因になります。

日常生活の中には片足立ちになる瞬間があります。たとえば靴を脱ぐとき。じつは玄関は転倒事故が起きやすい場所です。外出から戻ってきて気が緩むことも手伝って、靴を脱いでいる途中で転ぶケースが少なくありません。

座った状態で靴を履いたり脱いだりすれば転倒は避けられます。玄関にはぜひイスを置いてください。座面の下に収納スペースがあるスツールでもいいでしょう。もしも玄関が狭く、イスを置きっぱなしにすると邪魔になるようであれば、折りたたみ式のイスが便利です。

着替えでズボンや下着を脱ぐときも片足立ちになります。浴室の脱衣所にもイスがあったほうがいいでしょう。そして、着替えるときは「安定した姿勢で座る」ことが習慣になるよう、親に促してください。

浴室用イスは座面の高いものに

どこの家庭でも浴室にはイスが置いてあると思います。でも、その高さを考慮していますか?銭湯のイスと同じくらいのサイズでは、高齢者には低すぎます。玄関や脱衣所のイスにも当てはまりますが、高齢者にとって低いイスは、立ち上がるときに膝や腰に大きな負担がかかります。

親の安全を思えば、いますぐ座面の高い浴室用のイスに買い替えましょう。親が変形性膝関節症などで要支援・要介護の認定を受けるほど足腰が弱っているなら、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してアドバイスを受けてください。

場合によっては、病院やデイサービスなどの浴室でも使用されている介護用品を推奨されるかもしれません。介護用の入浴用イスは座面が高く、作りもしっかりしていて安定しています。

背もたれや肘掛けが付いたものや、高さが調節できるもの、またコンパクトに折りたためるタイプなど種類も豊富。買うとなれば数万円はしますが、介護保険が適用されれば1~3割の負担で購入することができます。

ベッドに起き上がり用の手すりを付ける

高齢になると、体のバランスを保つ働きを手で補おうとするようになります。杖や、階段の手すりは、そのために必要な器具です。言い方を換えれば、足腰が弱っても〝つかまるもの〟があれば、日常の生活動作への支障は軽減できるのです。

親が家の中で壁や家具をつたって歩いていたら、その動線に沿って手すりの設置を検討してください。そして、いずれは必要になるのがベッドの手すり。

腹筋や背筋が衰えてくると、上体を起こす動作はどんどん困難になります。そうなる前にベッドに手すりを設置しておけば、動くときは「何かにつかまる」ことを普段から親に意識してもらえるようになると私は考えています。

手すりナシで生活できていると、人間の行動心理で「手すりなんかなくても大丈夫」と、設置を嫌がるかもしれません。そんなときは地域包括支援センターに相談してください。介護保険が適用されれば、手すりは一週間ほど無料で試せますし、専門家の提案ならば、親も「使ってみよう」と思うのではないでしょうか。

ドアノブを回転式からレバー式に交換

スキンシップのきっかけに親と指相撲をしてみては?と、第3章に書きましたが、実際にやってみれば、親の握力が弱くなったと感じると思います。高齢になれば握力は低下します。私が訪問先でしばしば耳にするのは、「ドアが開けにくい」という親世代の悩み。

回転式のドアノブは、ひねって押す(引く)という動作に高齢者は不自由を感じることがあります。その場合は、ノブをレバー式に交換してあげるといいでしょう。

レバー式への変更は、介護保険で対象となる住宅改修の種類に含まれます。親が元気でも、まずは地域包括支援センターに相談し、要支援(要介護)の認定を受けられるかどうか確認してください。認定が下りれば支援センターの担当者が福祉用具専門相談員に依頼し、図面や見積書などを作成した上で、役所への事前申請も代行してくれます。

ペットボトルオープナーをキッチンに

ひねって開ける動作は、ペットボトルも同じ。キャップの固さは水道の栓以上ですが、この不便さは100円(税別)で解消できます。

ペットボトルオープナーはいろいろな種類が市販されています。電動式のオープナーもありますが、お箸を使うくらいの握力があるうちは、100円ショップなどで扱っている安価なもので十分です。その多くに缶のプルトップを開ける機能もついています。冷蔵庫の近くやリビングのテーブルサイドに置いておくと、とても重宝します。

握力の低下は、循環器系の疾患や認知症のリスクが高まるという研究データもあります。できるだけ現状の握力を維持できるように努めてもらうことも大切です。

「テレビを見るときはにぎにぎしてね」と言い添えて、ハンドグリップなどの運動器具をプレゼントするのも思慮深い恩返しになります。

写真/shutterstock

親への小さな恩返し100リスト

田中克典
親への小さな恩返し100リスト
2024/12/13
1,650円(税込)
192ページ
ISBN: 978-4391164107

離れて暮らす親は気づけばもう70代。帰省のたびに、「親の老い」を実感しませんか? 
その姿を見ると、仕事や家庭の事情などで、ずっと一緒にいてあげることはできないけれど、「いつかなにか親孝行、恩返しをしたい」という気持ちが湧き上がってきます。

ですが、そう思っているうちにも、親は確実に老いていきます。
もしかすると、恩返しができるタイミングを失うかもしれません。
ケアマネジャーとして、介護の現場に長く身を置いてきた私は、そういった子の「後悔」の声を幾度も耳にしてきました。

「もっと好きなごはんを食べさせてあげればよかった」
「もっと一緒に旅行すればよかった」
「もっと話を聞いてあげればよかった」

そんな後悔をしないために、そして親に幸せな晩年を過ごしてもらうために、「恩返し」を始めませんか。

何をすればいいのか、何から始めればいいのか、考え悩む必要はありません。離れて暮らしていてもできる、また、次の帰省時にすぐできる「小さな恩返し」はたくさんあります。

この本ではそんな「小さな恩返し」を12の章に分けて、計100項目をリストアップしました。
できることから一つずつ始めることで、親は「いつまでも元気でがんばろう」という生きる意欲と気力を呼び起こすことでしょう。

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