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〈クリスマス百条委員会〉「私のところに告発が来たらクシャっとしとったのに」号泣辞職した元副知事が“覚醒”して声荒らげる独演会、斎藤知事は再度パワハラ認めず

集英社オンライン / 2024年12月26日 18時27分

「対立候補は極左」「反日」「洗脳されてる」斎藤知事支援者のデマ投稿についに捜査のメス…ウソだらけのオープンチャットの中身と「PR会社に監修頼んだ」重要証拠の存在 〉から続く

兵庫県の斎藤元彦知事やその側近がパワハラや公金不正支出などの疑惑を指摘された問題で、斎藤知事と片山安孝元副知事が12月25日、県議会調査特別委員会(百条委)で証人尋問を受けた。11月の出直し知事選で斎藤氏が再選されてからは初めての尋問で、二人とも強気の答弁に出る中、内部告発の“処理”をめぐる考えも浮かび上がった。

【画像】7月の会見では涙を流し辞職した片山副知事

当時「知事を支えられなかった」と号泣会見した副知事は…

今年3月に明らかになった一連の疑惑で百条委は2月議会に報告書を提出したい意向だが、実現できるかは不透明だ。問題は1年越しで続くことになる。

3月12日、当時の西播磨県民局長・Aさん(60)がメディアや県議らに告発文書を送った。これに気づいた斎藤氏は片山氏らに告発者探しを指示。片山氏はAさんを3月25日に尋問し、自分が文書を作ったと認めさせたうえ、Aさんの県公用パソコンを押収。2日後の3月27日、斎藤氏は記者会見で、文書は「嘘八百」でAさんは「公務員失格」だと断罪した。

「県には公益通報窓口がありますが、ここに持ち込んでも意味はないと考えたAさんは外部に告発しました。しかし嘘八百扱いされたので改めて県の窓口に4月に通報手続きを取りました。

Aさんは3月の文書では7つの疑惑を挙げましたが、4月の通報ではうち一つを外しただけで、ほぼ同じ内容だとメディアに説明しています。しかし窓口通報を受けた調査が終わっていないのに、県は5月、文書は他人を誹謗中傷したとし、Aさんのパソコンの中から見つけたデータで分かったとするほか3つの問題行為を合わせ、Aさんに懲戒処分を出したんです」(地元記者)

だが告発には信ぴょう性があるとの見方が強まり、県議会に百条委が設置される。設置をやめてくれと県議会に働きかけた片山氏は7月、阻止に失敗すると会見を開いて、「知事を支えられなかった」と言って泣き、辞職した。

この直前には、百条委での証言を前にAさんが自死した。片山氏が押収したパソコンにあった私的な文書を片山氏の部下が関係者に見せて回り、Aさんはこれに苦しんでいたという。

百条委の調査などを基に疑惑が連日報じられていた9月、告発に不適切に対処し県政を混乱させたとの理由で斎藤氏の不信任決議案が県議会で可決される。

失職を選んだ斎藤氏はSNSの応援も力にし、出直し知事選で返り咲いた。しかし疑惑には決着がついておらず百条委は斎藤氏と片山氏に、それぞれ3回目となる尋問をクリスマスに行なった。

片山氏の独演会…「BPOに提訴しているところでございます」 

先に行なわれた片山氏の尋問では、斎藤知事に近い維新の増山誠県議が、Aさんのパソコンの中から、Aさんが県幹部やOBらとともに斎藤県政に打撃を与えようと画策したことを示す文書が見つかったとして、その内容を紹介した。

片山氏はこれを受け、「知事の改革を進めさせないというのは、これはある意味クーデターという風に解釈してよろしいんではないかと思っております」と応じ、Aさんの告発は県政転覆という「不正の目的」があったため、通報者が保護される公益通報に当たらない、と主張した。

さらにメディアに対し「知事や副知事が悪。こういう前提に立った報道ばかりだと思ってます」と猛批判を始めた。特にAさんが亡くなったことを「殺した」と出演者が発言した9月のフワイドショー番組を挙げ、「BPOに提訴しているところでございます」と表明。

NHKも「反斎藤派の県職員OB、反対派職員ばかり」をインタビューしたと非難し、地元神戸新聞の報道も問題だと熱弁。ほとんど片山氏の独演会になった。

もっとも、告発文書の記載に絡む不適切な行動については、片山氏も認めざるを得なかった。Aさんは文書で「(斎藤氏らは)県下の商工会議所、商工会に県からの補助金カットをほのめかしパー券を大量購入させた。実質的な実行者は片山副知事」と書いていた。

これに絡み、これまでの調査を基に別の議員が行なった質問で、斎藤氏が政治資金パーティー券の売り先を探すため名簿を集めてくれと片山氏に指示し、これを受けた片山氏が県内の商工会議所に電話をかけて会員名簿を出すよう求め、県の信用保証協会の幹部2人に名簿を取りに行かせていたことを片山氏は認めるしかなかった。

さらに“演説”の後には別の議員が、Aさんの告発は嘘だという幹部らは、なぜ怪文書扱いして無視しなかったのかと質問。

これに片山氏は、企業名も書かれていたので無視できなかったと言いながら、2つ目の理由を挙げた。

「最初に私のとこに来とったらクシャっとしとったのに、最初に来たのは知事とこ来てまっしゃろ。副知事マターやったらいくらでもしときますわ」

自分に届いたのなら握りつぶしたともとれる表明である。

片山氏は7月に辞職するまで、県の内部通報窓口に寄せられた通報に対応する「公益通報委員会」のメンバーでもあった。

「Aさんが県の公益通報窓口に最初に持ち込まず、文書で外部に知らせたのは、片山氏のような人物が通報内容を扱うことを知っていたからでしょう。また告発は不正目的だと言うなら、片山氏はなぜ7月に辞任したのでしょう」と、取材に当たった記者は話す。

さらに県政界関係者は「片山氏は斎藤氏と一緒に沈むのを恐れて先に逃げ出したものの、斎藤氏の再選を見てまた副知事に戻りたくて百条委でブチ上げたような気がします」と話す。

「第三者委員会の立ち上げに向けて、いま準備をしているところです」

一方の斎藤氏は、Aさんの文書は「誹謗中傷性が高い文書」「核心的な部分が事実と異なる」として公益通報に該当しないとの従来の主張を繰り返し、Aさんは公益通報者保護法が定める保護対象にならないので懲戒処分は適正だった、と強調した。

だが、Aさんが文書で指摘したパワハラ事例で、斎藤氏から怒鳴られたという当の県幹部は、「社会通念上必要な範囲とは思いません。理不尽な叱責を受けた」と以前の百条委で証言している。

これらを挙げ、百条委の議員が「それでも核心的な部分は事実ではないと言うのはなぜか」と尋ねた。

これに斎藤氏は「強く指導させていただいたり、注意したっていうことありますけども、暴行罪や傷害に当たるような社会通念上、度を越えて極端なことをしたということではないです。ハラスメントについては客観的な認定がされるものだという風に思っています」と答えた。

尋問の終盤、ここでも増山県議が斎藤氏をアシストする。Aさんの処分をめぐっては4月の窓口通報の調査が終わっていないのに3月の文書を理由に処分したことの是非が大きな焦点になっている。

増山氏は、4月の通報内容は知事らには知らされず、3月の告発と全く違う可能性もあると主張。窓口通報の調査結果を待たなければ告発に絡む処分ができないとなれば、「誹謗中傷文書を流布した者が内部公益通報を行なった旨発表すれば、永遠に処分されない事態を招きかねない」と、質問時間に持論を述べた。

これに対し斎藤氏は、「そうですね。同じ認識です。(窓口での)公益通報っていうものは基本的に行政内部含めて非公表、非共有という形になってますんで、その調査を待って処分を待つべきだということをやってますと、ある意味ずっと処分ができないということになる」と同調。迅速な処分は必要だったと強調した。

ところがAさんのパソコンから県当局が抜き出した私的情報は、前述のように片山氏の部下が見せて回り、さらにこの情報と疑われる内容を、出直し知事選に「斎藤氏を応援する」と言って出馬したNHK党の立花孝志党首が演説やSNSで公言している。

この事態に対し斎藤氏は、「文書の同一性含めて弁護士などに客観的に調査を、確認してもらう必要がありますので、早急に第三者委員会の立ち上げに向けていま準備をしているところです」と繰り返した。

問題発覚からすでに5か月が経過。いまだに「準備」をしているというのは、Aさんに対する迅速な対応とは対照的だ。

「職員が漏洩した可能性も、外部からの不正なアクセスもある。間違いなく個人情報の漏洩あるいは虚偽の情報拡散によって県の名誉を著しく傷つけている。第三者委員会のレベルではなく速やかな刑事告発をすることが、私は県民の個人情報を預かる県の責務だと思う」

百条委委員からは危機感に満ちたそんな言葉も出た。それでも斎藤氏は表情も答弁も変わらなかった。県政の“混乱”はまだまだ続きそうだ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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