「タマの大きさが女性の手のひら超え」ひたすら金蹴りを食らわせる「玉狩り大会」に潜入…そこで見えてきた、参加者たちの“まさかの顔”
集英社オンライン / 2025年1月8日 18時0分
イベント参加者の男性たちがひたすら女性から金蹴りを喰らい、苦痛のなかに喜びの顔をのぞかせる一風変わったイベントがある。「ドSのいおりん独裁政権 玉狩り大会」だ。2024年12月28日に行われた、第2回大会で自らの性癖を謳歌する者たちの自由を取材した。〈前後編の前編〉
ファウルカップのようなものを入れているのかに見えたが…
「バチンッ」「ビタンッ」という音の刻みのなかに、時折、「ドスッ」と鈍い音が混ざる。リングのなかで、男性の股間めがけて女性が蹴り上げる。
東京・新宿歌舞伎町にあるラブホ街に佇む、一軒のキックボクシングジム。第2回「ドSのいおりん独裁政権 玉狩り大会」での一幕だ。
蹴られる男性・通称ドM軍4名に対し、蹴る側の女性はそれより少し多い。1名のM男が一定時間攻撃に耐えたら、次の選手に交代する。入れ代わり立ち代わり金蹴りを行い、戦闘不能に追い込めば、S女チームの勝利なのだという。
好き者が押し寄せる無法地帯――そんな印象を持つ人もいるだろう。だが実際には鉄の掟が存在する。主催者のいおりん氏はこう話す。
「性器の露出や射精などが禁止なのは当然ですが、相手の同意なく身体に触れるのも厳禁です。もちろん、M男として登録していない一般来場者が金蹴りをされることもありえません。
また、写真撮影は原則禁止で、許可した一部のカメラマンについてもSNSへアップする際には参加者・来場者の顔ぼかしを義務付け、全員が安心して参加できる運営を心がけています」
あらゆる人々が秘密裏に参加するだけに、イベントそのものが安全基地となる必要がある。
ドM軍のなかに一際目立つ男性がいた。睾丸の大きさが成人女性の手のひらの大きさをとうに超えている。当初、ファウルカップのようなものを入れているのかに見えたが、レフェリーの入念なチェックの結果、どうやら生身の大きさであることがわかった。
たま金二郎さん、誰もが知る大手金融系企業に勤める50代だ。何十発という蹴りを被弾しても動じず、むしろ前に突き出すポーズに余裕がにじむ。彼の性癖への目覚めは早い。
「小学生の頃、有名なアニメで女性が男性を蹴るシーンがあって、それを一時停止して見るたびに興奮しました。女性の足が好きだと自覚したのもそのくらいだったと思います」
その後、性癖について打ち明けることはなく、30年以上をすごしたという。欲を解放できる場所は性風俗店だけ。蹴られていくと、徐々に変化が現れた。
「もちろん最初は痛いです。しかしだんだんと痛みが薄くなり、ここ10年くらいはあまり感じなくなりました。睾丸も最初は一般的なサイズだったと思いますが、蹴られていくにつれて大きくなったんです」
しかし、たま金二郎さんはSM系の性風俗店には足を運ばないのだという。
「いわゆるプロフェッショナルではなく、男性の睾丸を蹴ったことのない素人女性に蹴られるのが好きです。足を使ったプレイをしたことのない女性にしてもらうことに興奮するんですよね。したがって、本格的なお店には行きません」
2024年の累計は56789発
何回目かのローテンションののち、ドM軍のひとりが片膝をついた。会場が唸るようにどよめいた。ドM軍は難攻不落ゆえ、これまで苦痛に歪む顔さえ見せない。うずくまったのは、のぞむ氏。30代独身男性だ。
かがむような態勢から立ち上がってファイティングポーズを取ると、会場は再びどよめいた。その後、一切手加減ない攻撃にさらされ、マットに沈んだ。イベントが終わると、清々しい表情で「倒れはしたけど、最後まで参加できてよかった」と語った。
のぞむ氏の「蹴られたい願望」は唐突に訪れたのだという。
「中学生くらいのとき、本当に急に『女性に蹴られたい』と思ったんです」
その後、M性感の風俗店などで金蹴りのオプションをオーダーしてその快感に目覚めた。
「最初は緊張しながらだったのですが、自分が想像していた通りの痛みや快感があって、その魅力にハマっていきました」
東海地区最強と呼び声の高い金蹴られ戦士も参加していた。つっちー氏、40代だ。現在は「平凡な会社員です」という彼は、“修行僧”のような細身の風貌をしている。だが、その容姿からは想像できないほどタフな睾丸を持つ。1回、2回と蹴りを繰り出す女性のほうが疲弊していく。
その類まれな睾丸を武器に、今大会の優勝をもぎ取った。彼が性癖に目覚めたきっかけはなんだったのか。
「小学生の頃、女子が男子に電気あんまを食らわせていたのを目撃したんですよ。私にもやってほしいなと思ったんです」
初めての金蹴られ経験は20歳を超えたとき、当時交際していた女性からだった。
「痛みは感じましたが、そこまで悶え苦しむ感じではなかったですね。現在も、もちろん痛みがないことはないのですが、蹴られる喜びの方が大きいです」
だが、そんなつっちー氏も、周囲に身バレすることを警戒した時期はあるという。
「活動してしばらくは、地元のイベントには参加できませんでした。あるときから『なんも悪いことをしているわけではないし、バレたら仕方ないか』と思って地元での活動を始めました。ただ、積極的に自分から告白することは今でもありません」
つっちー氏は金蹴りをされるとき、カウンターを手にしている。蹴られた回数を数えているのだ。2024年の累計は56789発だったという。金蹴りの醍醐味とはなにか。
「本能的な喜びでしょうか。他人を蹴る女性の姿が美しいと感じますね。また、こうしたイベントに参加することで日常をリフレッシュできるのもいいですよね。自分の心身の調子をはかる物差しになっていると思います」
「痛みが愛おしいんですよね」
あらゆる金蹴りイベントで栄光に輝き、“ドSのいおりん独裁政権 第1回”の覇者に輝いた、金蹴られ侍シンジ氏もまた今大会に参加していた。このイベントの美点についてこう答える。
「いおりんさんによって、民度の低いエロ目的のマゾが完全に遮断されているところですね。私たちは我慢比べがしたいわけではなく、『痛そう』の向こう側に挑戦したいと思っています。大会の参加者がおしなべて表現者であることも、魅力のひとつだと思います」
シンジ氏の目覚めは、中学2年生のころ、同級生の女子に蹴られたことがきっかけだという。
「自分で稼ぐようになってからは、女王様に蹴ってもらうことで満足していました。痛みはもちろんあります。でも、その痛みが愛おしいんですよね。痛みのなかにも蹴り手さんとの信頼関係が生まれて、感謝できるようになった頃、少し丈夫になったのかなと感じます」
シンジ氏は、パートナーに対しても自らの性癖を隠していない。
「別のイベントで知り合ったパートナーがいるのですが、すべてをオープンにできる関係です。もちろん、理解してくれています」
イベントで喝采を浴びるたび、得られるものもあるのだという。
「どんな裕福な人にも買うことのできない、観客の感情の盛り上がりを肌で感じられるところが最高ですね」
一般に急所への攻撃はあらゆる格闘技において禁止されている。だが“ドSのいおりん独裁政権”においては、すべての選手が笑顔で自らの股間を差し出す。痛みの一歩先の快楽を知る者たちの宴は、今後も続く。
後編 容赦なく金蹴りを繰り返すドS女性の壮絶な人生…6歳のときの性暴力、その後“玉狩りイベント”を立ち上げるまで に続く
取材・文・撮影/黒島暁生
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