〈べらぼう・全裸遺体役〉「7時間伏せたままだった」「トイレも我慢」NHK大河“女郎の遺体シーン”を演じた女優が話す初めてのコト
集英社オンライン / 2025年1月7日 17時57分
1月5日から放送開始となったNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』が話題を呼んでいる。日本のメディア産業の礎を築いた蔦屋重三郎の生涯を描いた本作の初回放送では、開始1秒で大火事に襲われた“吉原炎上”が描かれた。その中盤では病で倒れた女郎たちが着物を剥がされ全裸で捨てられるシーンが映し出された。その痛ましい遺体役を演じたのは、AV業界でも一目置かれたある事務所に所属する女優たち。当日の過酷な現場について聞いた。
〈画像〉話題となった3人の女優たちのオフショットと、布一枚、妖艶な藤さんのバレリーナ姿
裸の遺体役を演じたのは3人の人気女優
横浜流星演じる蔦重こと蔦屋重三郎は、江戸で喜多川歌麿や葛飾北斎らを見出し、日本のメディア産業の礎を築いたとされる人物。
ドラマでは18世紀後半の江戸を舞台に、吉原で生まれた蔦重が貸本屋から身を起し、さまざまな文化人たちと交流を重ねながら“江戸の出版王”へと成り上がっていくさまを描く。
話題となったのは、蔦重が幼少期から世話になった「河岸見世」という、吉原の中でも格式の低い店で働く朝顔(愛希れいか)が衰弱死し、全裸で地べたに捨てられているシーンだ。女郎たちの着物は金になるからと、死んでなお身ぐるみ剥がされてしまったのだ。
その朝顔のもとに蔦重が駆け寄り、布をかぶせ「きつい勤めだけどおまんまだけは食える。(略)それが吉原なんだよ! それがろくに食えもしねえって、こんなひでえ話あっかよ!」と涙を流す。
このシーンでは朝顔の臀部を隠すように上に別の女郎の遺体が、さらにその足元や左隣にも別の女郎の遺体があり、計4体の遺体が転がっているという衝撃的な映像が放送された。
そしてもうひとつ話題となったのが、朝顔の臀部を隠すように折り重なっていた遺体と、その傍らに捨てられた2体の遺体を演じたのが、AVモデルプロダクション「エイトマン」に所属する吉高寧々さん、藤かんなさん、与田りんさんの3人の人気セクシー女優だったことだ。
朝顔の遺体の足元に捨てられていた遺体を演じたのが、以前、集英社オンラインでもインタビューをした、大阪大学大学院卒で理系研究職からセクシー女優に転身した藤かんなさんだ。本人に撮影当日の様子を聞いた。
「撮影したのは昨年9月28日で、ロケ地は鎌倉の円覚寺でした。朝4時に集合し、髪のセットや遺体に見えるように青白っぽいスプレーを全身に振りかけ、地べたに7時間ほど伏せていました。
地面は冷たく、体温を奪われ、私も同じ事務所の吉高寧々さんも与田りんさんもどんどん顔が青白くなっていき、本当の遺体みたいな顔になっていました」
7時間も裸で地べたに伏せるのは相当きつかったのではないかと問うと、「50人くらいのスタッフの方が休憩なしに動く姿に本気を感じたし、きついというより皆さんが納得する絵が撮れることだけを考えていた」と言う。
「ただ、水は飲ませていただいたのですが、スタッフさんたちが動き続ける姿を見ていると『おトイレに行きたい』とは言えず、後半の時間帯は少しだけトイレを我慢しました(笑)」
大河では初めて「インティマシー・コーディネーター」を起用
また、今回はNHKドラマ10『大奥』に次いで、NHK大河では初となる「インティマシー・コーディネーター」が起用されたことも話題となった。これは性的な描写の撮影の際に現場に立ち会い、演者の尊厳を守りつつ効果的な演出に繋げる役割で、藤さんはその手厚さを感じたという。
「撮影に入る1ヶ月前にリモート打ち合わせで、局部が見えないように前貼りの着用やバストにもシリコンブラをつけることなどの説明を受けました。現場では前貼りを3重くらいつけていただき、シリコンブラの下にはバストトップシールまでつける厳重さでした。カメラの切り替えなどの合間は5、6人のスタッフが集まりタオルで囲いを作ってくれ、肌見せを最小限にするために気遣っていただきました」
藤さん本人は「そこまで気を遣っていただかなくても…」と感じるほどだった。
「おそらくスタッフの皆さんも、『裸の女優が現場にいる』という、これまで経験したことのない状況に困惑していて、かなりピリついている感じは見て取れました」
だが今回の撮影に参加したことは、藤さんにとっても「かけがえのない経験になった」と言う。
「吉原で裸で働く女性たちに対し“おまんま食えるように俺らが頑張る”って意気込む蔦重に、なんだか裸で働く私たちまで応援してもらったような気がして…本当に良い体験をさせていただきました」
「セクシー女優さんは“見せていい人”という意図を感じた」
エイトマンには一体どんな経緯でNHKから撮影依頼が来たのだろうか? 代表は「詳しい経緯は話せないが」と前置きをしながらこう話してくれた。
「NHKさんは数あるAV事務所の中からエイトマンを選んでくれました。女優の指名は特になく、キャスティングは任せてもらえたんです。最初は実は遺体役は嫌やなあって思ったけど、視聴者の皆さんが“NHKが攻めてる!”とか“本気を感じる”と盛り上がってるのを見て、こんなに多くの方が本気を感じる作品に加われたことはなによりやと思いました」
ただ一方で、NHKドラマに詳しいライターの田幸和歌子氏は、この話題のシーンにこんな違和感も覚えていた。
「4人の遺体のシーンでは、元宝塚歌劇団の愛希れいかさん演じる朝顔の臀部を隠すようにセクシー女優さんが折り重なって転がされていました。まるで愛希さんは“見せちゃいけない人”で、セクシー女優さんは“見せていい人”というような意図を感じてしまいました。その待遇の格差や、脱ぐ役としてセクシー女優を起用した意図にグロさを感じてしまいました」
理不尽な格差や搾取を描くドラマだからこそ、その表現や演出自体に理不尽な部分が出てくると、観る側は違和感を覚えてしまうものだ。だからこそ、賛否両論のあるシーンだったのかもしれない。
取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班
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