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「いつまで風俗で働くんだ」夫から見下されても性的なことが“好き” 結婚してもやめられない人妻風俗嬢ハルカの恋愛遍歴

集英社オンライン / 2025年1月16日 18時0分

ノンフィクションライターの小野一光氏が、風俗で働く女性に綿密な取材を行い、彼女たちひとりひとりの“事情”に肉薄した書籍『風俗嬢の事情』(集英社文庫)。

【画像】人妻風俗嬢ハルカの元彼の職業

本記事では書籍より一部を抜粋・再構成し、セックスレスの人妻・ハルカさんの恋愛遍歴と、彼女が結婚してからも風俗を続ける“事情”を明らかにする。

※ハルカさんはホストの彼氏と7年間同棲、店に通うために風俗嬢になった。ホストと同棲解消後、陸上自衛隊に勤務する男性と付き合うが…

人妻・ハルカの恋愛歴

「年下。5つ下の人で、陸上自衛隊の子。1年くらい続いたかなあ。彼が途中で長崎に異動になっちゃって、私が長崎に行ったりとかしてたのね」

「彼とはどうして別れたの?」

「それは……いや、プロポーズされたんですよ。『長崎に来ない?』みたいに言われて。でも、そっちに行っても知ってる人とかいないし、若いから働かなきゃいけないでしょ。で、スタイリストの勉強を始めたばかりだし、それもなくなっちゃうんだって思ったら、ねえ……。そのときはそこまでの情熱がなかったの。で、『ごめん、行けない』でお別れしちゃった」

やがて専門学校を卒業したハルカだが、スタイリストの世界は、その仕事内容や待遇を含めて、予想していた以上に厳しいことを思い知る。挫折した彼女がまたもや選択したのは、〝勝手知る〟風俗の世界だった。

「渋谷のイメクラで働くようになって、そのときは仲良くなった店のボーイさんが、私の部屋に転がり込んでくることとかあったんだけど、まあ、問題ありの人で……ははは。別に女がいると思ったら、もっとたくさん女がいたの。その人とは3か月くらいかな」

間もなく30歳というとき、友だちの集まりで飲んでいたハルカは、自分と同じ××(町名)に住んでいる男性と知り合う。

「こんど××で偶然会ったらお茶しましょうって話してて、本当に偶然会ったのね。それで連絡先を交換して……それがいまのダンナさんとの出会い」

「そのときハルカさんはなにをやってると話してたの?」

「ふつうに派遣でバイトしてるって。事務をやってるって話してたのね。向こうは飲食店を始める前で、会社員をしてた。で、何回か会ううちにお互いの家を行き来するようになって、3、4か月くらい経って、これだったら一緒に住んじゃったほうがよくない?って話になって、同棲するようになったの」

「その時期って、風俗の仕事は週にどれくらい出てたの?」

「週4日くらいかなあ」

「通勤のふりをしてたわけ?」

「だからあ、もう自分から言ったのかな。わりと早めの段階で。じつはこういう仕事してる、みたいな……」

周囲を気にする必要はないにもかかわらず、ハルカは最後の部分を小声で言った。私は彼女が夫に風俗の仕事の話をしているとは知らず、素直に驚いた。

旦那は風俗の仕事をしていることを知ってる

「え、言ったんだ。向こうショック受けてなかった?」

「正直、向こうもびっくりしてて……」

ハルカは苦笑する。

「受け入れてくれた?」

私の問いかけに黙って頷く。

「受け入れられて、どう思った?」

「よかったと思った」

「ハルカさんも正直に言えたし……」

「そうそうそう」

こういうとき、じつは質問者のほうがどぎまぎしてしまう。なんとも他人事とは思えない心境になってしまうのだ。

「告白してから、向こうの態度に変化とかってあった?」

「態度の変化は……知ってるがゆえの、見下した言い方をされますよねえ」

「見下されるって、どういうふうに?」

「なんか、たまにね、向こうが頭にきた場合とかに、『いい歳こいてさあ』とか、『いつまでそんな仕事してんの』とか言われる」

これまで笑いの多かったハルカが、このときばかりは神妙な顔をして言う。

「いまも(風俗の仕事を)してるって知ってるの?」

「知ってる」

「てことは、同棲、結婚を含めて、それ以降は風俗から離れたことはなかったんだ」

「なんか店を変えたとかはあったけど、ないですね」

「結婚って何歳のとき?」

「37歳……」

「つまり7年以上同棲してたわけだよね。それがどうして結婚に踏み切ったの?」

「きっかけは、ホストの彼と同棲してたときから猫を2匹飼ってて、彼と別れてからもずっと飼い続けてたのね。その、最後の1匹が亡くなる前に介護状態だったから、2人で協力して病院に連れて行ったりとかしてて……。それで亡くなったときになんとなく、みたいな。結婚しようって言ってきたのは、向こうからかなあ。1か月くらいしてから……」

危機を共有したことで、同じ時間を過ごした相手との、より深い結びつきを求める心理が働いたのだろう。

それは気持ちよくなりたいってこと?

「ダンナさんから、結婚を機に(風俗を)辞めてくんないか、とかはなかったの?」

「なんか言ってきた。事あるごとに言ってきたかな。で、私は『う~ん』とか言ってごまかしてた」

「答えを出さないでいたら、向こうが引っ込めるって感じ?」

「そう」

「それを言われるのは、いつ頃が多かった?」

「結婚前も、結婚後も……」

「なんで(風俗を)辞めないんだろう?」

「なんでだろう?やっぱり根本は、イヤっ、とか思いながらも、好きなのかもしれない」

「性的なことが?」

「そうだねえ~。なんか最近は。だから、前はさ、嫌々っていうのがあったんだけど、最近はそれが逆転してるっていうか……」

「自分からやりたい?」

「そうそう」

「それは気持ちよくなりたいってこと?」

「うんうん。あと、いまダンナさんと(セックス)レスなんですね。で……」

「それは聞いてたけど、レスになったのはいつから?」

「けっこう早くからですよ。結婚する前から、ほぼほぼレスだったの」

2人のセックスレスは、同棲期間からだったという。ここでハルカは予想もしていない言葉を口にした。

写真はすべてイメージです
写真/shutterstock

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限界はいつだって表現(スタート)地点だ。

過去の傷を薄めるため……。
「してくれる」相手が欲しい……。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライター・小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

著者が20年以上にわたる風俗取材で出会った風俗嬢たちのライフヒストリーを通して、現代社会で女性たちが抱えている「生と性」の現実を浮き彫りにするノンフィクション。

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