大河『べらぼう』の全裸遺体となった下級遊女よりもひどい仕打ち…現代の吉原の嬢が受ける「梅毒をうつしに来る客」「重度の歯周病の客」のオンパレード
集英社オンライン / 2025年1月12日 18時0分
1月5日に放送が開始されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。江戸幕府公認の遊郭・吉原を舞台とし、第一話から「河岸(かし)女郎」と呼ばれた下級娼家の女郎・朝顔(愛希れいか)が餓死し裸で打ち捨てられるという衝撃のシーンが話題となったが、現在の吉原はいったいどうなっているのか、関係者に話を聞いた。
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現代の吉原には「高級店、中級店、格安店」が40店舗ずつ
ドラマでは、花の井(小芝風花)のような「花魁」と呼ばれる上級遊女が常連客を迎えに出向く艶やかな「花魁道中」のシーンも映し出されたが、一方の下級女郎である朝顔は飯も十分に食えず餓死して裸で打ち捨てられる。
当時の吉原内では、店がある場所も上級と下級ではっきりと分かれていた。
花魁がいる店は大店(おおだな)といって街の中心部に、下級女郎の店は街の外周を囲む黒く濁った「お歯黒溝(おはぐろどぶ)」と呼ばれる溝沿いの「浄念(じょうねん)河岸」や「羅生門河岸」と呼ばれるエリアに軒を連ねていた。
現代の吉原にも大きく分けて高級店、中級店、格安店とあるが、店の場所は江戸時代のようにはっきりと分かれているわけではない。
現地を訪れると、遊郭で遊んだ男が名残惜しくて振り返った柳あたりにあったことから名付けられた「見返り柳」はまだ残されていた。吉原大門があったとされる場所には赤い柱が立ち、さらに『べらぼう』ブームに乗って蔦重が開業した書店を模した店などができていた。
吉原に事務所を構え、風俗嬢の宣材写真を撮り続けて14年目になるカメラマンの酒井よし彦氏は言う。
「現在は高級店、中級店、格安店がそれぞれ約40店舗ずつあり、全部でおよそ120店舗あると言われています。江戸時代の吉原と街の面積と道筋は変わっていませんが、エリアごとに店の格が分かれているようなことはありません。
月に80人くらいの女性を撮影しますが、撮影中は女の子から愚痴を聞くこともあります。安い店だから悪い客が集まるなんてことはなく、高い店でもなかなかひどい客が来ると嘆いていますよ」
「歯ブラシが血で真っ赤に染まるほど重度の歯周病の客も…」
最近は吉原でもインバウンド客を迎え入れる店が増えているようで、文化の違いから女性従業員に対しひどい扱いをしてくる客もいると、酒井氏は言う。
「インバウンド系の客の中でも、『女性は男性よりも劣位にある』という認識が強い文化圏の方は、髪をつかんで無理やり口淫させようとしてきたり、女の子を物のように扱う人も多いと聞きますね」
ただ、日本人客の中にもこんな困った客はいるようだ。
「首絞めが気持ちいいと感じる女性がいるとか、挿入時に腹をパンチするとオーガズムに達するとか、そういう間違った性知識を持ったお客様がいて、それを女の子に試そうとするようです」
実際に風俗店で働く女性数名にも話を聞いた。
最初は格安店、現在は中級店を経て高級店で働く吉原歴5年のAさん(31)は言う。
「格安店では口臭がきつい、爪が伸びてるといった不潔なお客様もいらっしゃいましたが、歯磨きさせると歯ブラシが血で真っ赤に染まっちゃうくらい重度の歯周病の方などもいらっしゃいました。
でも、そんな方ともキスをしなければいけないので、本当にメンタルがやられました。ただ、不潔な方は店のランク問わずいらっしゃいます」
「プレイ後に理不尽なクレームをつけて返金を求められた」
吉原の高級店には “即尺(入浴前に口淫する専門用語)”というプレイがあり、これを求めて来る客も多い。それであえてこんな嫌がらせをする客もいると言うのだ。
「お風呂に何日も入らずに来店される方がいます。高級店でもあまりに汚い方は入店を許可しない店がほとんどですが、独特なルールを持つ老舗店では“どんなに汚くてもお客様だから”と教えられるので、新人時代は涙を堪え、吐き気を我慢して接客をしたこともあります」
また、昨年吉原を引退するまで15年近く高級店で勤務した経験のあるBさん(42)は、こんな客を迎え入れたこともあるという。
「本当に汚くて臭いがキツいお客様が来たことがあります。新人時代なので断ることもできず、まずお風呂に入ってもらいましたが、垢もすごくたくさん出て……臭いも取れないし、そのお客様の後はお部屋が使えないほどでした」
さらにBさんは、別の利用者ではこんなトラブルに見舞われたという。
「偏った知識のお客様が、自分が望んでいたプレイができなかったと怒り始め、受付にクレームを言い出しました。“金を返せ、他店は返してくれたぞ”と。
おそらく他店の返金対応で味を占めて、私の店でも同じようにプレイして返金してもらおうと企んだのだと思います。本当にひどいお客様でした」
「梅毒に罹患した客」「婚姻届にサインして来店する客」
また、中には性感染症に罹患しているにもかかわらず、遊びに来る客もいると、Bさんは言う。
「いま現在、梅毒が全国で流行っていますが、近年の吉原で梅毒が最初に猛威を振るったのは2017年頃だと記憶しています。
その当時、梅毒に罹患されたお客様が来店されて、私の知り合いの女の子が罹ってしまったことがあります」
さらに、自由恋愛のもと、体の関係を持つサービスをする店ということもあり、客がストーカー化することも少なくないそうだ。
「あるお客様はお店にサインした婚姻届を持ってきました。その後、私の後をつけて自宅を特定して郵便物を漁った挙句、電話をかけてきました。
さすがにその方は出禁にしましたが、2023年5月に起きた、高級店で女性従業員がストーカー化した男性客に刺されて亡くなった事件の一歩手前のようなことは、吉原で働く子なら珍しい経験ではありません。
体を張って働いているのは、本当に昔も今も変わらないと思います」
現在、三ノ輪の浄閑寺には吉原で命を落とした遊女たちの慰霊のための「新吉原総霊塔」が建っている。
吉原で働く女性が健やかに過ごせることを願うばかりである。
取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班
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