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プリウスの屋根を切ったオープンカーで登場!“戦闘服”、リーゼント、警察がすぐに駆けつけて「秒で捕まった」沖縄・二十歳式典2025「でも以前のようなドヤンキーはいなくなった」

集英社オンライン / 2025年1月14日 17時45分

「成人の日」の12日、全国で門出を祝う集会が開かれ、新たに二十歳になる男女が社会への巣立ちの時を迎えた。成年年齢の引き下げとともに名称が変わった、いわゆる「成人式」を巡っては、ヤンキーたちがバカ騒ぎする南国・沖縄での式典の様子が、無軌道な若者の振るまいが目立つ「荒れる成人式」として一種の風物詩となっていた。「令和」のいま、彼の地での若者たちの式典はどうなっているのか。「晴れの日」の一日をルポする。

【画像】お巡りさんもすぐに登場…奇抜な髪形、赤や銀のモールでデコられた車、特攻服のような袴…

「衣装代に数十万円かける新成人も」

「○○中の人、並んでくださーい」
県中部・沖縄市の公共施設は12日早朝から慌ただしい雰囲気に包まれていた。

夜も明けきらぬ時間帯から集まったのは、この日の「二十歳の集い」に参加する若者たち。式典に参加するための袴の着付けのために、仲間とともに市内の各所から足を運んだ。

赤や黄、シルバーと色とりどりの生地に、卒業した学校名や名前、思い思いのメッセージを縫い上げたド派手な袴に身を包む。

着付けた袴と同じ赤色に染めあげたリーゼントに、星形やハート型に刈り残したツーブロック。衣装に負けじと奇抜な髪型でも自身の存在感を誇示する。

 スタッフとともに着付けの作業に追われていた貸衣装会社「スマイリー」(那覇市)の比嘉基生社長は、「彼らの多くは、出身中学の仲間とともに衣装を作っています。お揃いののぼりや扇子を用意したり、衣装代に数十万円かける子もいますね」と話す。

比嘉社長らが午前3時ごろから始めた着付け作業を全員分終えたのは午前7時半すぎ。衣装を身につけ、早朝から“お祭りモード”に突入した若者らが向かうのは、県内屈指の観光地としても知られる北谷町の撮影スポットだ。

午前10時。北谷町の米軍基地の返還地に建設された「アメリカンビレッジ」という街区に、式典に参加する若者たちが続々と集まってくる。

その名の通り米国の都市を思わせるような、映画館や商店が建ち並ぶ街並みの中で、お揃いの派手な袴を身につけた若者の集団が異彩を放っている。

「式典前にゲームセンターがあるビル前で記念撮影するのが例年のパターン」と明かすのは地元事情通。かつては街区の中心部にあった観覧車前が撮影スポットだったというが、ビルの建て替えで観覧車が撤去され、式典当日の若者の動線も移動したのだという。

「1、2、3、ハイいきまーす」

旗を囲んでポーズを取るグループに向かって、らせん階段の上からカメラを向ける青年に声をかけた。

「あ、僕はハタチではないっす。あの人たちはしーじゃ(先輩)っす。自分は撮影を頼まれて来たって感じです。来年は自分も? そうですね。自分も来年はうっとぅ(後輩)に撮影をお願いするつもりっす」

地元でのつながりを通して、“祭り”の伝統は受け継がれていっているようだ。

プリウスを改造してオープンカーに

「具志川は『車』も出すみたいっすよ」

北谷の撮影スポットに集まっていた新「ハタチ」の一人にそう聞いて、県中部うるま市の式典会場に向かった。

式典開始前の午後1時から、会場前にはスーツや振り袖を着た「ハタチ」の男女がずらり。同級生との再会を懐かしむ男女や、わが子の成長を喜ぶ保護者らが談笑する温かいムードに包まれる会場に、耳をつんざく爆音が響いた。

ブンブブブンブブブンブンブン―。

吹かしたエンジンをメロディーのように奏でる「コール」を響かせた改造バイク3台が会場前の駐車場に乱入。
リーゼント頭に「戦闘服」よろしく派手な袴を身につけて旗竿を振り回す。駐車場内を蛇行運転していた新「ハタチ」の6人組は、すぐに待機していた警察官に身柄を確保された。ただ、取り押さえられた若者と警察官とのやりとりはどこか牧歌的だ。

その場で違反切符を切られながら、「ほかにも走ってるのいるぜ」と若者。警察官は「は、検問やってるぞ。また捕まるよ」と笑いながら応じる。楽しげに見守るギャラリーの一人が、「成人初逮捕だな」とはやし立て、緊迫感はゼロだ。

しばらくすると、「ファーン」と大きなクラクションの音が鳴る。今度は紅白に塗り分けた「オープンカー」のお出ましだ。

「プリウスの屋根を自分らで切った。オープンカーにしたのは2日前やっさ」と笑うのは、うるま市で自動車解体業を営む名護琉樹也さん(20)。

車両を積載して会場近くまで運びこみ、仲間とともに2キロかけて会場に乗りつけた。

言うまでもなくこちらもすぐに検挙対象に。「保安基準を満たしていない」として道路交通法違反で御用となった。「秒で捕まったや。もうちょい楽しみたかった」とタバコをふかす名護さんの趣味は、雄の鶏を戦わせて勝敗を競う「タウチー(闘鶏)」。袴の背面には、「ルーキー」という自身の呼び名とともに、そのタウチーにちなんだ文言を刺繍していた。

地元メディアによると県内では12日、「二十歳の集い」の関連で5人が道路運送業違反や道交法違反などで逮捕されたという。

やはり沖縄の若者らの一部にヤンチャな気風は受け継がれているようだ。派手な袴に袖を通す若者たちの多くが、そういうマインドの持ち主なのかというと、そういった単純な図式に当てはまらない背景もあるようだ。

「『どヤンキー』なウーマクー(やんちゃ坊主)もほとんどいなくなった」

「袴はヤンキーじゃなくっても着ますよ」と語るのは、仲間とお揃いの袴で式典に臨んだ訓練学校生の上原琉羽空さん(20)。「友だちの声がけで記念だからってことで作りました。一生に一回のことだし、絆が深まるような感じがしていい」と続ける。母のこず恵さん(49)も「息子にとって記念になるなら」と目を細める。

 お揃いの袴でポーズを取る、村吉政汰さん(19)と山内栄洋さん(20)。村吉さんは、県外の大学で医療機関での事務職を目指している。山内さんは左官職人として、そして一児のパパとしても忙しい毎日を送っている。

「17歳からオヤジ(社長)の所で働いている。ハタチにもなったし、7カ月になる娘のためにもがんばっていきたい」と山内さん。村吉さんは、「久しぶりに会った仲間と同じ袴を着るのは最高の気分。将来は沖縄に戻って働きたい」と笑顔を見せた。

約10年前から「二十歳の集い」のための袴や振り袖のレンタル、販売を手掛けてきた比嘉社長は「沖縄の『成人式』はここ数年で様変わりしました」と明かす。

比嘉社長によると、かつて「荒れる成人式」と言われていた通り、旧成人同士の揉め事も多く、式典前には式典当日のトラブルを警戒する警察からの連絡も受けていたという。

「最近は警察からの連絡もなくなり、式典でのトラブルもほとんど聞かなくなりました。年々減ってきてはいましたが、コロナの後はさらに減ってきていて、以前いたような『どヤンキー』なウーマクー(やんちゃ坊主)もほとんどいなくなりましたよ」(比嘉社表)

華美さを競う沖縄の若者たちの一生に一度の晴れ舞台は、沖縄のヤンキーの代名詞ではなく、一種の「文化」になりつつあるようだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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