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〈スギ薬局が被害・韓国アヤシイ薬広告〉顧客相談室に電話をすると…正体不明の「かんせ」薬、韓国ネットでは“詐欺広告事件扱い”されていた

集英社オンライン / 2025年1月15日 18時8分

韓国で製造された「関節薬」をうたう錠剤が日本のドラッグストア・スギ薬局で売られているかのような動画広告がSNSで流れていることが発覚し、騒ぎになっている。この“薬”を巡っては、韓国のネットで「詐欺広告事件」と決めつけられ、パッケージに書かれた「顧客相談室」の電話は不通になっている。「日本の薬は効果がある」というイメージがアヤシイ薬の宣伝に悪用されているらしい。実態を取材した。 

〈注意〉インチキ広告は韓国でも“詐欺事件”扱い…話題となった「かんせ」薬

「日本で1秒に3箱売れる」とインチキ映像が拡散

問題の薬らしい製品は1月3日、「韓国に住んで8年」という女性がXに「韓国人の友達に『この薬、日本で大人気なんでしょ??』って言われたんだけど、日本で一度も見た事ない。」とポストしたことで注目された。

ポストで紹介された薬は「かんせ 上」という不自然な日本語の名前がつけられている。韓国の検索サイトでこれと同じものを探すと、ハングルで「かんせつ」と書いた製品のホームページに行き当たる。関節を柔軟にする効能があるとうたっており、ハングルの名から日本語に翻訳するときに、なぜ「かんせつ」から「つ」を除いたのかは不明だ。

薬は「上」と「下」の2種類があり、「上」が膝、足首、股関節に、「下」が肩と肘、手首、腰に、それぞれ効果があると書いてある。30錠ずつの上下セットで割引価格67800ウォン(約7300円)となっている。

韓国語でつくられたインスタグラムの動画では、撮影者が日本のスギ薬局店内を歩き、商品棚に並ぶ「かんせ」を買い物かごに入れレジへ持っていく映像が流れる。そこに、

「効果がめちゃすごくて日本で1秒に3箱ずつ売れている、老人比率1位の国である日本の国民関節薬を紹介します」「とっても有名な日本の博士が開発してものすごい話題になりました」

「のめばびっくりするほど痛みが消えるとニュースにまで出た製品です」

「日本の薬は効果があることで有名じゃないですか。私も両親に贈ると『とっても良く効くからもっと買ってきて』と言われたんだけど、これを買いに日本に行けないと思っていたら、ちょうど“かんせつ”ブランドが韓国で販売を始めたんですよ」

というナレーションが流れる。

だが、動画に映るスギ薬局を運営するスギホールディングスの担当者は、「過去も含めてこのような製品の取り扱いはございません」と断言。商品棚にパッケージを勝手に置いたところを撮ったインチキ映像であることが確認できた。

日本でこの名の薬品や健康補助食品が許認可されたとの情報もない。

「お客様のおかけになった電話番号は…」 

動画には、ドラッグストアのレジの前にこの製品の広告チラシが置かれている場面や、東京メトロ渋谷駅のそばの屋外大型スクリーンに広告が出ている場面もある。いずれも実際にはあり得ない光景で、フェイク処理を施されているもようだ。

関節の痛みに効くと宣伝されている「かんせ」のパッケージの下部には「固形茶」との表示もあり、もはや何の製品なのかよくわからない。

そこで、YouTube広告に映るパッケージの裏面やホームページの記載を基に、この製品はいったいどういうもので、なぜ日本のドラッグストアで売られているかのような映像があるのか、直接質すことにした。

ところが販売をしているというM社は、釜山のリゾート地と表示されている本社の電話番号を公開していない。販売部門とみられる「顧客相談室」はソウルの金融街に所在しているとの記載があるが、そこに電話をかけると「おかけになった電話は、お客様の事情によりおつなぎできません」との韓国語の案内が流れる。

M社は「マーケティング問い合わせ」受付などとしてメールアドレスをホームページに載せているものの、摂取する製品についての電話では連絡がとれなくなっているのだ。

さらにパッケージには「製造元」として韓国南西部、全羅北道益山市のB社の名がある。もはや「日本の薬」とも言えない状態だ。このB社が公開している電話番号にかけると、今度は「この番号は現在使われておりません」との案内が流れる。

韓国最大の検索サイト「NAVER」で、ハングルで「かんせつ」と打ち込むと、この製品ホームページより先に一番上に現れるのは、「ナム(木)ウィキ」と呼ばれる“韓国版ウィキ”の「かんせつ関節薬詐欺広告事件」というページだ。

韓国に暮らすメディア関係者が話す。

「このナムウィキの記述によると、『かんせ』のネット広告は2024年4月から現れ、今年に入ってXで騒がれると、ホームぺージで日本語パッケージの製品写真が韓国語パッケージのものに差し替えられた、となっています。

さらにこのM社は、以前も『ヨーロッパの薬局で在庫がないほどよく売れているダイエット薬』とする製品を扱い、イタリアの薬局でその製品が販売されているような動画広告を流していたが、全部ウソだった、との指摘もナムウィキでなされています。今回と同じ手法のインチキ広告を以前から繰り返している疑いがあります」

悪質な偽広告の舞台にスギ薬局が使われたことについてスギホールディングスの担当者は、「YouTubeやインスタの広告で出ていた動画なので、運営会社に動画を取り下げるよう求めています。抗議という形です」と話している。

健康被害も憂慮されるインチキ薬が“日本ブランド”を信じた人に買われていたとなれば恐ろしい。発覚した以上、韓国の保健当局は厳しく対処してほしいものである。

※「集英社オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(旧Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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