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「SNS監修はPR会社にお願いすることに」神戸市議が暴露した決定的証拠のLINEは警察にも持ちこまれていた…その意図とは?〈兵庫県政大混乱〉

集英社オンライン / 2025年1月16日 11時0分

〈大荒れ兵庫県政〉斎藤知事は百条委に“クロ認定”されれば法廷闘争か? 一方、死亡した局長らへの誹謗中傷やデマ拡散は止めず。そして新たな“疑惑”も…〉から続く

昨年11月の兵庫県知事選挙で再選された斎藤元彦氏の陣営が、公職選挙法が禁じる、インターネットを利用した選挙広報の対価を払っていたのではないかと指摘される疑惑で大きな展開があった。現職の神戸市議が、選挙前に斎藤陣営の選対幹部からSNS広報の監修を西宮市のPR会社に任せる、とLINEで知らされていた、と暴露したのだ。市議は知人が無断でこのLINEをメディアにリークしたと非難したが、このLINEはメディアが報じるかなり前から兵庫県警が入手し捜査着手の契機になっていた。

〈画像〉斎藤知事とともに折田氏の説明を受ける広報担当者のK氏(写真左)

折田氏は主体的な関与ではなくボランティアだったと主張していたが…

まずは公選法違反が疑われている疑惑を整理しておこう。

パワハラや公金不正支出疑惑を背景に県議会全会一致による不信任決議案可決を受けて失職した斎藤氏は、SNSでの応援に力を得て11月17日の出直し知事選で当選した。

ところが3日後の11月20日、西宮市のPR会社「merchu」の代表取締役・折田楓氏が自身のnoteで斎藤陣営のSNS戦略の内幕を公開したのだ。これが大問題に発展した。

noteで折田氏は、自分が斎藤陣営のXやインスタグラムなど4つの公式アカウントを「管理・監修」したと説明。「監修者として」運用戦略立案やアカウントの立ち上げなどを責任を持って行なったとしたうえで、こうした作業を「会社が手掛けた」とし、ボランティアではなく会社の業務だったとも明確に表明している。

「おそらく彼女は自分が自慢した内容が重大な意味を持つことを知らなかったのでしょう。公選法は、業者が主体的にネットでの選挙運動の企画・立案を行ない、この業者が選挙運動の主体と認められれば報酬の支払いは買収罪に当たる可能性があるとしています。さらに候補者本人や陣営幹部の買収行為が認められれば、候補者の当選が無効になる場合もあります。

noteの内容は、SNS広報を主業務として扱ってきたmerchuが仕事として斎藤陣営のSNS発信を担ったことを疑わせます。折田氏が被買収罪で有罪になるような事態になれば、斎藤氏の当選無効も現実味を帯びてきます」(全国紙デスク)

斎藤陣営の選挙戦術は、折田氏の言う通りのものだったのか。

「斎藤氏本人は『公選法に違反した認識はない』とだけ繰り返し、説明を代理人弁護士に丸投げしました。そこで登場した代理人の奥見司弁護士は記者会見で、折田氏はSNS広報に携わっていたが、主体的な関与ではなくボランティアだったと主張しました。ただし、陣営がmerchuにポスターデザイン制作などの名目で計71万5000円を支払ったことは認めたのです。

これを受け、自民党の裏金問題を解明した神戸学院大の上脇博之教授と、元検事の郷原信郎弁護士が、斎藤氏本人は買収罪に、折田氏は被買収罪に、それぞれ当たるとする告発を兵庫県警と神戸地検に行ない、12月中旬までに受理されました。

SNS広報戦略が本業のmerchuが、ボランティアで広報を担ったという説明には無理があり、支払われた71万5000円はSNSを含む選挙運動への報酬であり、買収にあたる、というのが告発の理由です」(在阪記者)

「確認のためLINEの画像を送るよう言われた」と上原市議は説明

結局、merchuや、社長の折田氏が陣営のSNS戦略を主体的に担ったのか否かが違法か適法かを分けることになる。

「そこで斎藤氏側に大打撃となる報道が出ました。選挙告示前の10月6日に斎藤陣営の広報担当者が支援者あてに、『SNS監修はPR会社にお願いする形になりました』というメッセージを送信していたと、読売新聞が12月20日に報じたのです。SNSの“監修”を、折田氏個人ではなく“PR会社”に任せたとの認識を陣営幹部が持っていたということは、折田氏のnoteでの主張と一致し、違法だとの見方を補強する重要証拠になります。

メッセージを送った広報担当者とは、斎藤選対で幹部を務めたK氏。折田氏のnoteの記事にも、斎藤氏がmerchuを訪れ広報のプレゼンを受けたときの場面の写真などに、斎藤氏と一緒に写っている人物です。選対の事務局長だったと言う人もいます」(県政関係者)

さらに今年1月13日、文春オンラインがこのメッセージについての詳細を報じた。

「昨年10月5日に、神戸市議が斎藤氏とK氏に会いSNS戦略での協力を申し出たところ、翌6日朝、K氏が市議に『昨日の会議内容 SNS監修はmerchuさんにお願いする形になりました』とのLINEを送ったとの内容で、LINEのスクショまでついていました。
K氏が送った相手が一般人ではなく神戸市議だということが目を引く中で、翌14日未明にYouTubeで突然、この市議は自分だと名乗りを上げたのが、無所属の上原みなみ氏です」(雑誌記者)

上原氏は急ごしらえの撮影だとうかがわれる3分足らずの動画の中で、文春記事と同じ経緯を説明したうえで「広報担当者K氏からSNS監修はmerchuさんにお願いする形となりましたというLINEが届きました」と、核心のLINEメッセージが本物であると認めた。

「報道だけで知られていたLINEの存在を市議が認めたことは一層の重みをもつことになります」と社会部記者は上原氏の行動の意味を強調する。

上原氏は動画で、自分を斎藤知事に会わせてくれた「Kw」(K氏とは別人)という人物に協力の打診をLINEで断られたことを報告すると、Kw氏から「確認のためLINEの画像を送るよう言われた」と説明。「それ(画像)がKw氏によって 私が知らない間に今回の報道機関への情報提供に使われてしまったのです」とも主張した。

メディアよりも先に県警に持ち込まれたLINE

「上原氏は、昨年12月の読売報道のあと沈黙し、今になって明かしたことについては、『望んでもいない売名行為などと言われたくなかった。今回の報道でさまざまな憶測が飛び交う中、事実を発信するしかないと思い行動することにした』などと弁解していますが、文春報道でLINEを受け取ったのが神戸市議とまで書かれたことが動画公開の直接の理由でしょう。

さらに上原氏は14日夜、自身のXに『私は斎藤知事も、広報担当といわれるK氏(※原文は実名)も、メルチュの折田さんも、早く真実を話すべきだと思っております。』と投稿しました。上原氏はこれまで斎藤氏の支援者のようにふるまってきましたが、今ははっきりと斎藤氏に距離を置いている印象です。動画も、そうした判断から公開したのではないでしょうか」(社会部記者)

だが、LINEにまつわる「経緯」を説明したとする上原氏の動画からは、重大な要素がすっぽり抜け落ちていると県議会関係者は指摘する。

「K氏が上原氏に送ったLINEの存在は実は、読売新聞がスクープするより10日以上前、遅くとも12月上旬には兵庫県警の捜査2課が把握していました。上脇教授と郷原弁護士の告発状は12月2日に県警と神戸地検に郵送で届き、16日までに受理されていますが、異例の速さだと話題になりました。実はその背景にはこのLINEの存在があり、立件可能な有力証拠だと当局が判断していたんです。

上原氏は『Kw』が勝手にLINEのスクショをメディアに持ち込んだと非難していますが、いち早く県警にこのLINEが持ち込まれていたことが重要なんです。これだけの重要情報に接することができたのは上原氏自身やKw氏も含め、ごく少数で、斎藤陣営と良好な関係にあった人物であることは確実です。その情報が当局に渡っていた。斎藤氏の選挙に疑問を感じたか、他の理由で斎藤陣営に背を向けた人がいるということでしょう。

兵庫県は1月17日に阪神淡路大震災から30年を迎える。「本当に騒がしくなるのはその後ではないか」と地元記者は指摘している。

※「集英社オンライン」では、今回の記事ついて意見、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。

メールアドレス:
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X(旧Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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