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〈南海トラフ巨大地震〉発生確率が「70%」から「80%」に引き上げられたことが意味するものとは? 東大の地震専門家が警鐘

集英社オンライン / 2025年1月18日 16時0分

阪神淡路大震災の発生から17日で30年の節目を迎えた。1995年以降も、日本各地では地震が相次ぎ、13日には宮崎県・日向灘でマグニチュード(M)6.6の大地震も発生。南海トラフとの関連性はなかったものの、15日には政府の地震調査委員会が、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率をこれまでの70%から「80%程度」に引き上げたことを発表した。果たしてその数字が意味するものとは。専門家に話を聞いた。

【画像】津波による甚大な被害を巻き起こした東日本大震災の様子

現時点で発生すればM8.5程度

今月15日、政府の地震調査委員会は、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率について、昨年まで「70%から80%」としていたものを、今年は「80%程度」に引き上げた計算結果を発表した。

「想定された地震が発生しない限り、発生確率は時間の経過とともに高くなる傾向があり、発生する可能性が急に増したわけではない。

ただ80%程度というのは、いつ地震が起きても不思議ではないという数字だ。引き続き、地震に備えていただきたい」(地震調査委員会)

こう述べていたが、一体どれぐらい鬼気迫ることなのか。そのリスクや対策について、東京大地震研究所の加藤愛太郎教授(地震学)に話を聞いた。

「日本列島の下には、太平洋プレートとフィリピン海プレートという2つのプレートが沈み込んでいます。プレートが沈み込もうとすると、断層の固着により陸地にひずみが蓄積され、ひずみが限界に達すると、断層面でのずれ(地震)が発生し、貯まったひずみのエネルギーを一気に解放します。これが『プレート境界型地震』と言われています。

巨大地震発生域のプレート運動を測定すると、年間4~5㎝のスピードで「ずれ」を蓄積しています。仮に単純計算だと100年で5m分のずれが貯まります。それが一気に跳ね返って地震になるわけです。

今、仮に南海トラフ沿いのプレート境界全域がずれたとすれば、断層の平均のずれは約4m、M8.5程度の地震が襲ってくるでしょう。東日本大震災がM9で、断層のずれは平均約20mでした。もちろん沿岸部では津波の危険性も十分考えられます」(東大・加藤教授、以下同)

内閣府のモデル検討会によると、南海トラフ巨大地震では、九州から関東にかけての広範囲で震度6強以上の被害や、太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されている。

地震大国ニッポン「世界の地震の約10%を占める」

 そのような南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率が今回、「80%程度」に引き上げられた意味とは―。

「いきなり70%から80%になったわけではないです。もともと昨年が『74~81%』だったのを四捨五入して70%と表現していた。プレートは年々沈んでいるわけですから、時間が経てば発生確率はあがります。そこで今年は『75~82%』に上がったので四捨五入して『80%』と表現したのでしょう」

ただ、南海トラフ巨大地震に関しては、過去にM8以上の地震が繰り返し発生しているのは事実だ。

1707年に宝永地震(M8.6~8.9)が南海沖で発生。その前は102年前だと言われているが、宝永地震から147年後の1854年に安政東海地震(M8.4~M8.6)・南海地震(M8.4~M8.7)が発生。その90年後の1944年に東南海地震(M7.9~M8.2)と1946年の南海地震(M8.0~M8.4)が発生した。この2つの地震の場合、断層が一気に滑らず、2年間で2回に分けて滑ったとされている。

「南海トラフ巨大地震は100~150年のスパン、最短で90年以内に繰り返し発生しています。現在は前回の南海トラフ地震からすでに80年が経過し、ひずみも着実に増え続けている状態です」

と警鐘を鳴らす。また南海トラフ巨大地震に限らず、日本列島は常に地震の脅威にさらさてれいるのが現実だ。

「日本の地震活動は世界トップレベルです。世界の0.3%ほどの面積しかない日本列島で発生するM4以上の地震個数は、世界で起きる地震の約10%を占めています。

年間に起きるM5以上の地震は約100個、M6以上は約10個、M7以上でも約1個となります」

特に、世界でも特異な地域として知られるのが関東エリアだ。

「首都圏に関しては、2つのプレート(太平洋プレート・フィリピン海プレート)が同時に沈み込んでいる場所に位置しているんです。世界的に見てもとても珍しく、地震発生頻度は高い地域で、約100年前には大正関東地震が起きて甚大な被害が生じました」

求められる対策は…

地震大国ニッポンに住む我々は、巨大地震に対し、どのように備えればいいのか。

「地震活動が世界トップレベルの日本列島に住んでいる以上、南海トラフに限らず、国民全員が大地震への備えを『我が事』として進めていくことが必要です。

対策としてまずは耐震化された建物に住むこと。建物が崩れてしまって下敷きになった場合、助かったとしても地震後に発生する津波や火事から逃げることさえできません」

阪神淡路大震災では、建物の倒壊による被害に加え、神戸市長田区を中心に火災が発生。家屋の下敷きになった多くの被災者が、火災に呑まれて命を落とした。

「それ以外の対策としては、家具の固定と、平常時から避難経路を確認しておくことも重要です。さらに地震発生後はライフラインが遮断されますから、水や食料を備蓄しておくこと。特に都心部では、避難物資が不足する可能性が高いと指摘されています。

地震の予測には不確定性があります。

ただ、先ほど説明した通り、南海トラフ地震は過去に繰り返し起きていて、ひずみも着実に蓄積されているので、時間の経過とともに次の地震の発生日が近づいているのは間違いありません。確率に一喜一憂せず、次の地震に対する備えを強化することが何よりも重要です。

地震による大災害が起きてしまってからでは、取返しがつかないので」

日本列島に住む以上、いつでも襲い掛かる巨大地震の恐怖。だからこそ、日ごろからの備えが求められる。

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

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