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〈ついに“本丸”へ〉「捜査への熱意を感じた」パレード疑惑で兵庫県知事らに対する告発を県警が受理「元副知事はなぜ“集金ノルマ”をあいまいにしたのか」〈兵庫県政大混乱〉

集英社オンライン / 2025年1月21日 19時22分

〈元兵庫県議死亡〉「夜も眠れず、ずっと怖がっていた」「車の運転もできない状態だった」元県議の“逮捕のデマ”の拡散…今も続く攻撃に県警が異例の対応〉から続く

1月18日に亡くなった兵庫県の竹内英明元県議(50)は、昨年3月に当時の西播磨県民局長・Aさん(60)が告発文書で外部に知らせた斎藤元彦知事の疑惑の解明の先頭に立っていた。その竹内氏が最も重視し「本丸」とみていたのが、2023年11月の阪神・オリックス優勝記念パレードに絡む補助金不正支出疑惑。この支出について、斎藤知事が背任罪に当たると指摘する市民団体の告発を兵庫県警が受理した。Aさんの告発と竹内氏らの解明を求める努力が刑事事件の捜査につながった。

〈画像〉斎藤氏支持者から“主犯格”として拡散されていた竹内県議の動画のスクリーンショット

「竹内さんの事があったばかりで、連絡に驚きました」

県警は、告発主が告発状を提出してから3か月の時間を置いて受理を表明した。

告発人のひとりで、竹内氏の訃報が伝えられた翌日の1月20日に受理するとの連絡を受けた「市民オンブズ尼崎」世話人の田中淳司・尼崎市議は、「竹内さんのことがあったばかりで、この連絡が来たことに驚きました。21日に県警側と会った際には捜査への熱意を感じました」と話した。

2023年11月23日に行なわれた、優勝記念パレードは、中心となった大阪府と兵庫県が公費を使わずクラウドファンディングで費用を賄うと発表した。

しかしクラファンは不発で、斎藤知事は開催前日、目標の5億円に対し約9300万円しか集まっていないと明らかにする一方、企業協賛金は4億円強集まる見込みだと説明していた。

「終わってみるとパレードの会計は人件費高騰などで約6億5300万円にまでなりました。うち企業や団体からは約5億3100万円の協賛金・寄付金が集まりましたが、クラファンの大失敗と経費高騰分を補うため、パレード後も協賛金集めが続きました。兵庫県で金策の中心になったのが当時副知事だった片山安孝氏(昨年7月に辞職)でした」(県議会関係者)

片山氏はパレード2日前の11月21日、県内にあるT信金の理事長を訪ね、信金各行の寄付の取りまとめを依頼している。県信用保証協会の理事長を経験した片山氏は金融機関に太いパイプを持っていた。この訪問を機にT信金はじめ11行が50~300万円ずつ、計2000万円を寄付している。

県関係者は「このうち9行はパレード終了後に協賛金を出すと県に伝えています。宣伝もできないのになぜそんな支出をするのか。信金に損害を与える背任ともとられかねないのに」と述べ、不自然さを指摘する。

ここで浮かんだのが「協賛金を出せば見返りに補助金をつける」との約束を県側が伝えていたのではないか、との疑念だった。

「コロナ対策の一つに金融機関による無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)制度があります。県はこの制度に基づき金融機関が相談に乗るなどの支援を行なえば1件当たり最高10万円の補助金を金融機関に出す制度を運用してきました。

2023年秋の補正予算で県の担当者は、この制度の予算を総額1億円と見込んでいました。ところがこれが斎藤、片山両氏の指示で4億円に増額されたのです」(県関係者)

この増額の経緯については担当者のメモが残されている。

「ふつうは残らない記録です。増額の経緯に不審を持つ担当者が、問題となるのではないかと憂慮して作成したのではないかとも言われています」(県関係者)

メモや関係者の証言によると、一昨年11月中旬に片山副知事が1億円について、「これじゃ足りん。4億にせえ」と指示。

これを受けた担当課が算定根拠を変えて要求額を3億7500万円に増額したが、今度は斎藤知事がパレード2日前に「全体をまるく4億円程度で」計上しろと求めていた。

「信金理事長が、片山氏の主張と違うことを証言した」

片山氏は斎藤氏の疑惑を調べる県議会調査特別委員会(百条委)で、「財政当局にはコロナの関係で非常に重要な事業やから、財源が確保できたら目一杯やるほうがいいやろうと指示をしました。財政課から『確保できました』と報告があったので、それならば大きいほうの数字、つまり4億円ぐらいになるように予算要求を財源に合う形で組んだほうが産業振興になるやろという指示をした」と証言している。

一方、斎藤氏も記者会見で、4億円への増額指示を認め、「補正予算はキリの良い数字で予算をつけるほうが打ち出しとしてははっきりする」と理由を説明している。

だが、片山氏がいう確保できた予算の原資は国費だ。

「億単位の支出増額がこれほど簡単にできたのは、ゼロゼロ融資に絡む事業の原資には国の臨時交付金を充てるからです。県の財政には痛くもかゆくもないのです」(県議)

これまで斎藤、片山両氏も、T信金理事長も、協賛金と引き換えに補助金増額の約束があったことは否定している。

「もし約束が確認されれば、斎藤氏らは今回の告発容疑である、県に損害を与えたという背任罪になります」(在阪記者)

こうしたなか、片山氏の証言が注目されている。

片山氏は昨年9月6日の百条委での証人尋問で、T信金理事長に2000万円を明示して取りまとめを頼んだのではないかと質され「具体の額は言っていません」と否定している。

「しかし10月24日の百条委でT信金理事長が、片山氏の主張と違うことを証言したのです」(社会部記者)

この日の百条委は非公開で行なわれた。関係者のメモによるとT信金理事長は、

「金額を(片山氏が)おっしゃいませんでしたので、いくらくらいしたらいいんですかと(聞きました)。見当がとれなかったら我々もしにくいし。1000万ですか、2000万ですかな、と言うたら(片山氏は)『2000万円いただいたらありがたいんですけど』とおっしゃいました」

と、片山氏が2000万という希望額を挙げたと証言している。

この矛盾を指摘された片山氏は、10月25日の百条委で、「目安としてですね、1信金100万円とすれば1100万円、200万円とすれば2200万円、この2つの数字の間ぐらいでしょうかねって言うたような記憶が残っております」と発言を修正した。

「なぜ片山氏が金策の“ノルマ”をあいまいにするのか」 

県議会関係者は「片山氏は、パレード前は具体的な目標額を考える余裕もなく、遮二無二集めて回った、との趣旨の説明をしています。しかし当時、不足額を考えずに頼んで回るはずがありません。なぜ片山氏が金策の“ノルマ”をあいまいにするのか」と指摘し、続ける。

「兵庫県庁内では目標額が集まったと安堵した空気が一時出ていました。ところが大阪府から11月14日ごろと17日に、それぞれ2000万円ずつ、計4000万円が足りないので兵庫側で工面しろとの要求があったとの証言があります。これを受け担当者の間で緊張が高まりました。片山氏が信金側に助けを求めたのはこの時期になります。

さらに片山氏はパレード終了後、神戸市内のまちづくりなどに取り組む財団を訪ね、すでに100万円を拠出していたこの財団からも2000万円を追加で取り付け、結局4000万を確保しました。しかしこの財団が2000万円もの大金を拠出していたことを兵庫県は今も公表していません」

パレードを巡っては、業者側と経費の減額交渉に当たった県の課長・Bさん(53)も昨年4月、自死とみられる急死をしている。

2023年11月中旬に大阪から言い渡された4000万円の“追加ノルマ”を兵庫県が受け入れた先に何が起きていたのか。Aさんが告発文書に並べた7つの疑惑の中で「最も立件のハードルが高い」とみられていた背任容疑の解明に着手した兵庫県警は、どこまで切り込むのか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

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