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〈アナウンサーだけじゃない〉「セクハラを受けても泣き寝入り」ニュース現場で女性記者たちが強いられる“理不尽”な悪しき風習

集英社オンライン / 2025年1月23日 11時0分

タレントの中居正広(52)の女性トラブルが波紋を広げている。各局の「顔」として活躍する女性アナウンサーが、芸能人やスポンサー企業など取引先との接待にも駆り出されているのではないかとの批判も集まるなか、テレビ画面越しにニュースを伝えるアナウンサーのみならず、ニュースを報じる側の女性記者たちも不条理な働き方を強いられているという。報道の最前線で、女性たちはどんな理不尽に直面しているのか。その実態を当事者たちに聞いた。

【画像】テレビ局が好感度の高そうな華やかな雰囲気の女性記者を配置しがちな場所といえば…

「テレビ局は総理番に女性記者を配置することが多い」

「マスコミ業界はいまだに男社会。女性にとって働きやすい環境であるとはとても言えませんね」

主戦場としている永田町の現状をこう打ち明けるのは、某民放の40代の政治部記者A氏だ。

彼ら政治記者たちは、政治家や官僚の懐に入り込み、新たな政策や政局の動きをいち早く伝えるために日夜、取材活動に奔走している。

政治記者たちは、それぞれ首相官邸の前にある国会記者会館や、霞が関の各省庁に設けられた記者クラブ、長年政権与党の座にある自民党本部内にある「平河クラブ」など、担当に応じて持ち場を与えられるが、A記者が指摘する「テレビ局の体質」が如実に現れるのが、首相官邸に詰める「総理番」といわれる担当だという。

「『総理番』は文字通り、そのときどきの首相の動向を追いかける担当です。毎日、朝から晩まで官邸入口のロビーで待ち構え、要人や政治家の出入りをチェックする。新聞、テレビに限らず、多くの会社が政治部に入って日の浅い新人を充てます」(A記者)

ほぼ毎日行われている報道各社の囲み取材に首相が応じる官邸ロビーは、視聴者の目にも触れる機会が多いだろう。

20代から30代前半の若い記者が集まり、組織の枠を超えて情報交換をする場ともなっており、現場は、ある種の「サークル」のような雰囲気が醸成されている。

その中でも、「テレビ」と「新聞・通信社」といった具合に、所属媒体によって記者の毛色ははっきりと色分けされるのだという。

「総理番の女性比率が高いのはテレビのほうでしょう。特に好感度が高そうな華やかな雰囲気の女性記者を配置することが多い。もちろん基本は本人の希望に沿った人事を行なっていますが、それは建前。

上もはっきりと明言することはありませんが、やはり『女性を配置すれば情報が取りやすくなるのでは』という思惑があるのは否定できません」(前出・A記者)

官房長官や自民党幹事長などの要職を担う政治家には、その政治家の一挙手一投足を追いかける番記者が配置されるのが常だが、実際、そうした政治家の中には「女性を前にすると饒舌になる」という風評が立つ者もいる。

「すでに亡くなった、ある与党重鎮もそういう人で、一時、番記者が全員女性になったこともありました」(前出・A記者)というから、歪な人事配置の責任の一端は、メディア側に妙な忖度を強いる政治家側にもあるといえそうだ。

警視庁の記者クラブでも似たような光景が…

一方、こうした不文律があるのは、政治の現場に限った話ではない。

全国紙や民放、NHKなどの主要メディアが集中する警視庁の記者クラブでも似たような光景が広がっているのだという。

全国紙の30代の社会部記者Bはこう証言する。

「警視庁には3つの記者クラブがあります。朝日、毎日、読売、東京、日経、共同の新聞・通信社6社が加盟する『七社会』、それにNHKや産経などの『警視庁記者クラブ』、加えて日テレ、TBS、フジ、テレ朝、テレ東の民放5社が加盟する『ニュース記者会』がそれです。

この3つの記者クラブはそれぞれシマが分かれているため、普段の交流はあまりありません。ただ、年に数回、警視総監の官舎で開かれる懇親会などで一堂に会することもある。

そういうとき、目立っているのは、やはり『ニュース記者会』です。むさ苦しい男性記者が多いほかのクラブ員とは違って、垢抜けた女性記者が多い印象です」

事件の発生や被疑者の逮捕などの捜査情報を、捜査員や捜査幹部らへの取材を通して得るのが、彼ら警視庁担当の記者たちの役割だ。入手した独自情報をいかに早く、正確に報じられるかで力量を量られる。

前出のB記者が警視庁担当だった2010年代当時、某民放には独自ニュースを他社に先駆けて報じる「前打ち」と呼ばれるスクープを連発する凄腕の女性記者がいたのだという。

「各社で配置にばらつきがありますが、当時は、殺人などの凶悪犯罪を担当する捜査1課、詐欺や贈収賄などの経済事件や暴力団犯罪を担当する捜査2課、そして違法薬物に関する事件や外国人犯罪などを扱う生活安全課、公安事件などの公安課など、事件の種別ごとに担当が分かれていました。

中でも、その女性記者は薬物事件にめっぽう強くて、ある芸能人が逮捕されたときは、身柄を拘束される場面までカメラに収めて他社をアッと言わせたことを覚えています」(前出・B記者)

「警察庁の幹部と寝てネタを取っている」と根拠のない陰口を…

ライバルを次々と出し抜く女性記者の手腕は記者クラブ内でも高く評価されていたそうだが、中には嫉妬心から心ない言葉を吐く者も少なくなかったという。

「『あれはサッチョウ(警察庁)の幹部と寝てネタを取っている』と陰口をたたく記者は結構いました。もちろん根拠なんてありません。

ただの負け惜しみに過ぎないのですが、彼女に限らず、デキる女性記者の多くがそうしたやっかみの対象とされていました」(前出・B記者)

特に警察取材では、「夜討ち朝駆け」と称して、早朝や夜中に警察幹部や捜査員の自宅やその付近を訪ねて話を聞く取材手法が慣例的に続けられてきた。

そうした警察取材のイロハは、ほかの現場でも踏襲され、こうした慣習も、女性記者への陰口が流布する要因のひとつになりがちな側面も否定できず、過去には、第三者の目が行き届かない「密室での取材」をめぐってトラブルに発展した事例もある。

2022年、長崎地裁で、市幹部(故人)が報道機関の女性記者に性暴力を加えたとして、女性記者に対して市に約1975万円の損害賠償の支払いを命じる判決が言い渡された。

女性記者は2007年、市の平和祈念式典について幹部に個別取材した際、意に反する性的行為を受けたとされる。

ただ、こうした被害がすべて明るみに出るわけではなく、セクハラなどの被害に遭いながらも泣き寝入りせざるを得ない女性記者もいる。

民放の社会部記者Cさんはため息まじりに明かす。

「社外の取材先からセクハラを受けたのは一度や二度ではありません。でも、被害を訴えても『今後の取材に支障が出るから』などと言って、うやむやのまま終わらせられるのがオチ。

社内でも夜中に先輩に呼び出されて酒席を共にさせられるといったことは、しょっちゅうある。この業界には、『オンナを呼べる』というのが一種のステータスになっているきらいがあると思えてなりません」

取材現場にも残るマスコミ業界の悪しき慣習。抜本的な見直しが必要な時期がきているといえるだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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