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ネトフリ史上最大のヒット作『イカゲーム』のシーズン2に賛否の声…デスゲーム作品の続編が“鬼門”となる理由

集英社オンライン / 2025年1月25日 16時0分

Netflixの大ヒット韓国ドラマ『イカゲーム』のシーズン2が昨年12月26日から配信され、グローバルトップ10で4週連続1位を獲得するなど相変わらずの人気ぶりを誇っている。一方、内容に関しては賛否の声が多くあがっており、シーズン1に比べて批評家や視聴者側からのレビュー評価の平均も落ちる結果に…。『イカゲーム』に限らず、シーズン化で“鬼門”となる続編作品。その難しさについて専門家に話を聞いた。

【画像】ネトフリ最大のヒット作『イカゲーム』の続編では新たな取り組みも…

「イカゲーム」シーズン2に賛否の声

多くの人がコロナ禍によるロックダウンで自宅待機を余儀なくされていた2021年、Netflixで全世界に配信された韓国ドラマ『イカゲーム』は配信開始28日間で1億4200万以上の世帯が視聴、16億5045万以上の合計視聴時間をたたき出すなど、ネトフリ史上最大のヒット作となった。

内容は、膨大な借金や深刻なトラブルを抱えた者たちが、超高額の優勝賞金を懸けて、子どもの遊びを基にしたデスゲームに挑むサバイバルスリラーだ。

そんな大ヒット作の3年ぶりの続編とあって、多くの人が期待を寄せていたシーズン2だが、配信後はSNS上やレビューコメント欄には

〈デスゲームが始まるの遅すぎる〉

〈主人公が無策すぎて学習能力ゼロ〉

〈ゲーム内容がシーズン1と被って、新鮮さに欠けた〉

〈シーズン1に比べてクライマックスが弱い。シーズン3の繋ぎの印象が拭えない〉

など一部で酷評する声があがった。

『イカゲーム』に限らず、映画やドラマなど様々な作品において「続編はつまらない」と酷評され、伸び悩むことが多い。1作品目が大ヒットすればするほど、その反動は大きいものとなる。

なぜ、いかなる作品においても、シーズン2は“鬼門”となるのか。その難しさについて、サブカルチャーなどを研究する近畿大学総合社会学部の岡本健教授に話を聞いた。

「原作リメイクでは、その原作がシリーズ化している場合、順々に映像化する道筋が見えますが、完全オリジナル作品の場合は、1本目がヒットしてから続編製作が決定されるケースがほとんどです。

最初からシリーズ展開が決まっていない作品でシーズン2を作る際、視聴者を同じ世界観に引き込みながらも裏切っていくことが、デスゲームものは特に難しくなります」(岡本教授、以下同)

デスゲーム作品の難しさは“着地点”

『イカゲーム』に限らず、日本でも『バトル・ロワイアル』や『賭博黙示録カイジ』などシリーズ化しているデスゲーム作品は山ほどあるが、その難しさについて岡本教授は具体的にこう指摘する。

「1作品目では、デスゲームという設定の衝撃性や、訳が分からないまま転がされるスリリングさがあります。ですが、続編になると視聴者も何が起こるか分かっているし、世界観にも慣れて驚きもない。その中でどう次の展開を準備していくか、という部分が難しいんです。

同じ世界観でも全く違った様相を見せたり、シーズン1とは違った登場人物の葛藤や変化、バックグラウンドを描いて新たな魅力を伝えるなどの作劇が必要になってくるでしょう」

さらに、シリーズ化が進むごとに懸念されるのは、途中離脱者の存在と新規視聴者への配慮だ。

「シリーズを最初から見ていない人に対して続編でどれくらい配慮するのかという点も大事になってきます。ただ配慮しすぎると、シリーズを全部見ている人からしたら既視感があるものばかりになってしまい途中で離脱されるリスクもあります」

そしてデスゲーム作品において最大の難所は“着地点”だという。

「デスゲーム作品はどうやって終わらせるのか、が最大の難所だと思います。不条理に特定の場所に集められ、生死をかけて戦う―。ではその不条理は誰によってもたらされ、それを暴くのか暴かないのか。

デスゲーム作品では、キャラクターたちの『敗北』や『死』の原因は、『何かを間違えたから』であると読み取れます。だからある種、勝った人はその作品世界内の『正義』を示しており、残酷な世界を生き延びるためには何が必要か、というメッセージの肝になります。

『鬼滅の刃』に関しては、主人公・炭治郎の『優しさ』や『人を助けたいという想い』が巡り巡って自分自身の身を守る結果となり、諸悪の根源に打ち勝ったと読み取れます。

そこを『イカゲーム』のシーズン3含め、物語全体でどう着地するのか。非常に楽しみなところです」

岡本教授が“秀逸”と推すバトロワ作品は?

そもそもなぜ『イカゲーム』シーズン1は、あれほどヒットしたのだろうか。バトロワ作品が流行する社会的背景について聞いてみた。

「コロナ禍でネトフリなどサブスクサービスの加入率があがったことも一因ですが、2021年は国内でも『鬼滅の刃』が大ヒットしました。コロナ禍で外出を禁止されるなど抑圧された不自由な世界の中で、『生き残りをかけて戦う』という趣旨の2作品が流行ったのは状況の妙もあったのかもしれません」

振り返ると2000年前後、『バトル・ロワイアル』や『デスノート』、『賭博黙示録カイジ』など国内でバトロワ作品のブームが起こった。そこには、当時の「新自由主義」の価値観の浸透が大きく影響していると色々な専門家から指摘されている。

「小泉純一郎元首相の郵政民営化に象徴されるように、政府の経済介入を抑え、自由競争によって経済の発展を実現すべきという『新自由主義』の価値観が浸透し始めたころです。『価値ある個だけが生き残る』という価値観が作品にも反映され、『最後は社会が助けてくれる』という安心感が得られない世界を比喩的に表現していると読み取れます。

現在も自国中心主義が加速し、個々で争う時代という意味ではバトロワ作品が流行る土壌はあるのかもしれません」

ここまで話を聞き終えて、個人的に岡本教授が“秀逸”だと思うシリーズ化したバトロワ作品を聞いてみると、

「先日、改めて見直して関心したのは、実写映画『デスノート』の前後編です。

いわゆるゼロ年代的な価値観が体現された作品で、『生き残るためには相手の裏をかいて先に残酷な決断をせねばならない』という世界でした。

作品の終わり方が前後編とも素晴らしかったです。前編の閉じ方も『後編はどうなるのか』と、原作既読のファンとしてもワクワクしましたし、後編の閉じ方も着地点が明確で綺麗でした。ただ『イカゲーム』との大きな違いは、『デスノート』は漫画原作があり、当初から前後編で物語が構成されていた点です。

『イカゲーム』の場合は1作品目をまずは綺麗に終わらせた、それがヒットしたから2作品目を作ったという前提条件が違います。最初から漫画原作で閉じた物語を3つに分割しているわけではないので、そこは難しいポイントですが、シーズン3の出来栄え次第ではシーズン2も新たな位置づけができ、評価が大きく変わる可能性があります」

今年夏にシーズン3が配信予定の『イカゲーム』。どんな展開が繰り広げられるのか、一視聴者として期待したい。

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

 

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