芸人・大久保佳代子が、学生時代の“佳代ちゃん”に戻れる場所…プライベート旅行は、芸能人らしからぬ節約旅行で?「エコノミーの深夜便に3500円の安ホテル」
集英社オンライン / 2025年1月28日 18時30分
〈「これをやめたら、だらしないババアになるんじゃないか」大久保佳代子(53)が陥ったルーティンの罠? 生活は整うが、孤独は深まり…〉から続く
芸人・大久保佳代子のプライベート旅行は、エコノミーの深夜便に屋台飯に民泊⁉ 高校時代に友人たちと結んだ「男子と話さない同盟」の絆は今でも強く……。学生時代の「佳代ちゃん」に戻れる場所で、50代になって味わう、再びの「青春」!
50代になってまた強まる、地元の絆
東京には大切な仲間や友達がいます。
聞いてもらいたい話があるときや愚痴りたいことがあるときは仕事終わりに集合。
ゴハンを食べながらあーだこーだと盛り上がることも。
大学進学を機に上京してから、人生の大半を東京という街で過ごしてきた私は、そんな仲間たちと過ごす時間がとても多かった。
でも、50代になった今、地元の友達との繋がりがまた強まっているのを感じているんですよ。
私の“地元の友達”といえば小中高とずっと一緒の仲間たち。
田舎の小さな町だから、常に一緒のクラスじゃなくても、みんなどこかで重なっていて。
その距離がグンと近づいたのはやっぱり高校時代なのかな。
とにかく面白いことが大好きで、くだらないことを言ってはガハガハと笑う、モテない私たちは『男子と話さない同盟』を結成。
放課後の教室やジャスコの屋上に集まっては、好きなドラマやお笑いの話題で盛り上がったりして。
そうそう、あの頃はバンドブーム全盛期でね。
ブルーハーツやレッド・ウォーリアーズのライブ行きたさに、休み時間のたびに校門を出てすぐの公衆電話にダッシュ。
永遠に繋がらない『チケットぴあ』に何度も何度も電話して、授業に遅れ、職員室の前に並んで正座をしたこともあったりして。
そんな仲間たちも高校卒業後はそれぞれの道へ。
大学進学のために上京する人がいたり、地元に残る人もいたり、さらには、結婚して家庭を持つ人も現れ始めて。
子育てに忙しい人もいれば、仕事でキャリアを積み重ねる人も。
20代や30代はみんな自分の人生と向き合うだけで忙しかった。
だからこそ、仲間たちが集まるのは年に2回、お正月とお盆くらいで。
そこに集まる人数もその時々で減ったり増えたり。
その理由もまた「子供が熱を出した」から「親の介護をしなくちゃ」にどんどん変わっていったりしてね。
で、最近、帰省時によく集まるようになったのが、私、カオリちゃん、シッカの未婚3人組。
独身だからフットワーク軽く動けるっていうのもあるし、シャカリキだった時期を抜けて、仕事にも少し余裕が出てきたのかな。
地元で遊ぶだけでなく、「ちょっと旅行とか行きたいね」なんて話もでるようになって。数年前に、3人でタイ旅行にいったんですよ。
そもそも、ことの始まりは30代半ばに3人で行ったインド貧乏旅行。それが、今でも会うたびに話題にのぼるほどの強烈な旅でね。
「あれは青春だったよね」と、「もう一度、あんな旅をしてみたいよね」と、「じゃあ、行こうじゃないか」と盛り上がって。
シッカがエアーからホテルまで手配してくれたんですけど。これがまた、馬鹿正直に見事な貧乏旅行を計画してくれて。
まず、行きの飛行機はエコノミーの深夜便。
早朝にタイに着いた私たちが向かったのは一泊3500円の安ホテル。
食事は宿の前にある数百円の屋台飯。
シッカなんて、実家で握ったオニギリをアルミホイルに包んでタイにまで持ってきていて。南国でそれを貪(むさぼ)り食う彼女を見て、カオリちゃんと一緒にゲラゲラ笑ったりしてね。
「こんな貧乏旅はもうしたくない!」
これぞ私たちが目指した貧乏旅。
だからこそ、1日目までは楽しかった、楽しかったんだけど……。2日目の夜には急に全部がイヤになっちゃってね。
「私、芸能界で頑張っているのに。お金だって結構貯まってるのに。こんな貧乏旅はもうしたくない!」と、2人を連れて高層階のルーフトップバーへ。
しかし、その店が想像以上にちゃんとしていて。
サンダルを履いていた友人には踵(かかと)のある靴が貸し出され、エレベーターの扉が開くと、目の前には驚くほどの綺麗な夜景と、響き渡る生演奏が。
さらに驚いたのがメニューに書かれた価格。なんと、一番安いドリンクですら1杯約1万円‼︎
戸惑う2人に「私が奢るから」と告げて、飲んでやりましたよ……。
できるだけ時間をかけて、1杯1万円のシャンパンを、それはもう噛み締めるように。
そんなトンチンカンなタイ旅行も今ではしっかり笑い話に。
そこから“年に一回の友達旅”が私たちの恒例行事に。昨年はシッカとカオリちゃんの希望でこんぴらさんへ。
「私たちもこんぴらさんにのぼりたいと思う年齢になったんだなぁ」と、感慨深い気持ちになりつつ、杖をつきながらのぼったよね。御本宮を経て奥社まで続く、1368段の階段を。
私が風邪をひいて熱を出したり、泊まった民泊が独特だったり、こんぴらさんの旅もまたまた珍道中で。笑える思い出話がいっぱい。
くだらないことで喧嘩したり、笑ったり、地元の友達と一緒にいると、学生時代の佳代ちゃんに戻れる気がする。それもきっと、私は楽しいんだろうな。
ただ、あの頃と違うのは、お互いに積み重ねてきたそれぞれの経験があるということ。
特にカオリちゃんはお母さんを、シッカはご両親をすでに亡くしていて。
親を看取った経験のある二人は、私にとって介護の先輩でもあるんです。
だからこそ、ことあるごとに話を聞いてもらったり、アドバイスをもらったり。
さらに、シッカは頻繁に帰省できない私のかわりに、実家の母の様子をよく見に行ってくれていて。そこで、父の介護の愚痴を聞いてくれたりするんです。
このあいだは、母を連れて近所のファミレスへ。
「まずい、まずい、と文句を言いながらもしっかり完食していたよ(笑)」って、LINEと一緒に元気そうな母の写真を送ってくれたりして。本当にありがたすぎるよね。
学生時代は楽しいことばかり共有していたけど、今は互いの悩みや苦労も共有しながら、支え合い助け合えるように。
大人になればなるほど、友情は熱く深く、友達はより大切な存在になっていくような気がします。
そんなかけがえのない友達であり、旅仲間でもある、シッカとカオリちゃんに最後に一言。
いつも支えてくれてありがとう。旅の手配もありがとう。
ただ、次の旅先は近くてもいいから海外がいいな。
「大久保さんですか?」と声をかけられない場所がいいな。
もう少しホテルも良いところに泊まりたいな。エアビーや民泊以外のところがいいな。
金は出すから、私が出すから、私、これからも頑張って働きまくるからぁぁぁ!
聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子 撮影/露木聡子
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