「論理的に考えられる人」と「考えられない人」はなにが違うのか? 両者を分ける決定的な差
集英社オンライン / 2025年2月1日 10時0分
〈江戸時代まで日本には「論理」という概念がなかった? 日本人が意識しないと「論理的に考える」ことが身につかない理由〉から続く
「論理的に考える」と聞くと、無機質で冷たいイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし実は、論理的思考は私たちの日常生活で直面する悩みの解決や、大切な人との関係をより良くするための強力なツールになります。
【画像】「俺はこんなに君のことを思っているのに、なんでわからないんだ」では何も伝わらない
司法試験指導校「伊藤塾」を主宰し、30年以上にわたって、法律家や公務員を目指す人たちや法律の世界で活躍する人たちと関わってきた伊藤真さんの著書『考える練習』より一部抜粋、再構成してお届けします。
「悩み」も論理的に解決できる
私がイメージする「論理的に考える」行為は、「相手」、または「自分自身」に物事を伝えるという「二つの場面」で必要とされる。つまり、ひとつは相手に何かを伝えるために論理的に考えることだし、もうひとつは、自分の中でより深く納得するために論理的に考えることである。
このうち、後者の「自分の中でより深く納得する」というのは、どういうものか。それはたとえば、自分はこれからどうしたらいいのかという不安に対して、それを解決するために考えるというような場合が想定される。
「就職先を決めるのにどうしたらいいのか」「司法試験勉強を続けるべきか、やめるべきか」「この会社をやめるべきか、残ったほうがいいか」など、「自分の中の悩み」を解決するために論理的に考える、という行為があるのだ。
いずれにしても目的は、問題や課題の解決である。
「論理的に考える」とは「目的を持って、一定の結論を根拠とともに導くこと」と定義したが、それは何らかの課題に対しての結論を、根拠を持って導くという、頭の使い方そのものであると言い換えられる。
「論理的」の反対は「感情的」
たとえば、説得したいがために論理的に考えるのだとしたら、説得したいという課題(目的)が明確にあるわけだ。すると、まずはじめに重要なことは、その課題を明確にすることである。
何を伝えたいのか、何をしたいのか。伝えたいこと、したいことがなければそもそも論理的に考えようという発想に行かないだろう。
ある男女がいるとしよう。おたがいに理解しあっていて、「好き、好き」と言いあっている恋人の間では、論理は必要ない。なぜ私があなたのことをこんなに好きなのかということを論理的に根拠づける必要はないはずだ。感情やフィーリングで十分伝わっていて、理解できてしまっているから、わざわざ論理を持ってくる必要性はない。
ところが、二人の間で意見が食い違ったときは、恋人同士や夫婦であっても、論理が必要になる。
たとえば、妻は仕事がしたい、しかし夫は妻が家から出ることに反対だ。そこは感情やフィーリングでは伝わらない。「俺はこんなに君のことを思っているのに、なんでわからないんだ」と感情をぶつけても、伝わらないのである。
そういうときはある程度の論理を使い、相手が理解できる共通の概念や言葉などを示しながら、説得することになる。そうしないで頭ごなしに否定しても、まったく理解されないだけでなく、しこりが残ってしまうだろう。
「論理的」の反対は「感情的」だ。
もちろん感情でも伝わることはいくらでもあるから、それでいい場面もある。だから論理的に考えていい場面と、感情や受容を大切にする場面は、ときと場合によって区別をしなくてはいけない。
相手が納得できるような理由を考える
いずれにしても、課題(目的、テーマ、主題など言い方はいろいろだが)が明確でないと、論理的に考える作業は意味がないし、必要性がないからできない。
だから論理的に考えるためには、何がしたいのか、何を伝えたいのか、その目的を明確にすることが必要である。
法律の世界では「問題提起」という言い方をするが、何が問題なのかをはっきりさせることが、論理的に考えることにおいて、最初に必要といえる。
何が課題(目的)なのか、問題提起をしたあとに重要なのは「結論」である。この結論が最初からわかっている場合もあれば、わかっていない場合もある。
何かを相手に説得したい場合は、結論はあらかじめわかっている。
たとえば、コンサルタントは最初から結論が見えている。プレゼンの場合も、「この企画を採用してください」とか、「この商品に決めてもらいたい」というように、結論が明確だ。一方、人生における課題、たとえば「転職したほうがいいかどうか」は、結論がわからない。
だから、論理的に考えようとするとき、「結論が明確なのか、不明確なのか」、どちらなのかをはっきりさせなければいけない。
結論が明確であれば、相手に理解してもらうことが目的なので、「根拠づけ」が何より重要になる。根拠づけとは理由づけということだから、相手が納得できるような理由を考えるのが、この場合の「論理的に考える」になる。
「目的」が「物差し」に
一方、結論がわからないときは、基本はその課題に対して現状を分析し、原因を見つけ出しながら、さまざまな可能性を探って考えてみる。
そしてそこから結論を導くときは、どこかで「決断」という作業が必要になる。するとその決断をするための物差しや判断基準が必要だし、その物差しに対してさまざまな事実をあてはめる検討が必要になる。
たとえば、「転職すべきかどうか」というとき、まずは現状分析だ。
何のために自分は転職するのかを、考えてみる。もっと給料がほしいのか、もっと自分の時間がほしいのか、社会的な評価が高い仕事につきたいのか、もっと抽象的にやりがいや充実感を感じたいのか。とにかく何かの目的があって転職したいと思うわけだ。
すると、その「目的」が「物差し」になる。
「給料がもっとほしい」のが目的なら、それが物差しだから、この会社とあの会社ではどちらが給料が高いのか物差しをあてはめて分析してみればいい。通常、物差しは複数あると思うから、いろいろあてはめてみて、これはプラスだが、これはマイナスだというような事実の評価をしていくのだ。そして総合的に見て、一番プラスが高いもので決断するということになる。
文/伊藤真
1958年、東京生まれ。伊藤塾塾長。81年、東京大学在学中に司法試験合格。その後、受験指導を始めたところ、たちまち人気講師となり、95年、「伊藤真の司法試験塾(現、伊藤塾)」を開設する。「伊藤メソッド」と呼ばれる革新的な勉強法を導入し、司法試験短期合格者の輩出数全国トップクラスの実績を不動のものとする。「合格後を考える」という独自の指導理念が評判を呼び、「カリスマ塾長」としてその名を知られている。現在、弁護士として、「1人1票」の実現のために奮闘中。
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