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東京ディズニーリゾートの“お膝元”に消防署を新設「激増した来園者の、救急車需要のせいですか?」と担当者に聞くと“意外”な回答が…ファンの間では妊婦の“マタ旅”も問題視

集英社オンライン / 2025年2月1日 12時0分

東京ディズニーリゾートおよび運営会社・オリエンタルランドの所在地である千葉県浦安市が、同テーマパークが位置する舞浜地区に、消防署の出張所を新たに建設する。これはあくまで市内全体の救急車の需要と供給を踏まえたものだというが、実際のところはどうだろうか。浦安市消防本部や近隣の医療機関に話を聞いてみた。 

【画像】人、人、人だらけ…新イベント初日の入園ゲート前の様子

建設理由は、市内ダントツの出動需要に対応するため?

今回、千葉県浦安市が新たに消防署の出張所を建設するのは、東京ディズニーリゾートの最寄り駅であるJR舞浜駅から、南東に800mほどに位置する場所だ。

建設業界の専門紙である『日刊建設タイムズ』は2023年6月14日、同施設の建設を報じ、RC造2階建て、延べ床面積約800㎡、当時の見積もりで工事費約5億8000万円など、その内容を詳細につづっている。同記事内では、2023年度内に基本設計をまとめ、2024年度には実施設計を進めるとされていた。

また、2024年10月25日の『日刊建設新聞千葉版』では、前日24日に公告された、新築工事にまつわる家屋事前調査業務の委託事業者を選定する一般競争入札について、予定価格が710万6000円などと報じられている。

建設は2か年だが、前半にあたる令和7年度部分に関しては、、浦安市が今年1月21日に発表した令和7年度当初予算案で、建設の関連経費として約2億5000万円が盛り込まれている。

6月の市議会定例会で工事請負契約議案が提出される予定で、2026年度の完成を目指しているという。

「舞浜地区は消防署や消防出張所が手薄で、別地区からの出動では需要をまかないきれないという事情があります。こうした背景から、出張所を新設するに至ったのでしょう」(浦安市民)

実際に浦安市の消防年報を見ると、令和5年(2023年)中の舞浜地区の救急出場件数は1955件で市内最多。市全体10814件の約2割を占めており、舞浜地区の次に多い当代島地区の1127件と比べても、その多さは歴然だ。

一方で、舞浜地区の人口は、浦安市全体のわずか約2%にすぎない。この点を踏まえると、救急出動の需要は住民よりも、東京ディズニーリゾートの来訪者によって高まっている可能性があると考えられる。

こうした点から、今回の舞浜出張所の新規建設は、東京ディズニーリゾートのために行なうようにも見えるが……。

この疑問を解消すべく、取材班は浦安駅から徒歩約20分の場所にある浦安市消防本部を訪れることにした。

浦安市消防本部の答えは「東京ディズニーリゾートのためではないが…」

担当者によると、出張所の建設と東京ディズニーリゾートを関連づける声は少なくないようで、次のように語った。

「今回建設が行われる『消防署舞浜出張所(仮称)』ですが、決して“東京ディズニーリゾートのため”に作るというわけではないんですよ。

ディズニーへの来園者や舞浜地区だけを対象にしているわけではなく、状況に応じて、市内全域を対象に出動します。

ただ、これもややこしいのですが、東京ディズニーリゾートが“無関係”というわけでもなくて。

同施設には年間で何千万という方が来訪しますし、緊急時の需要が高まっていることも事実です。なんというか『関係はないけど、関連はある』といったところでしょうか」(浦安市消防本部・担当者)

今回の建設計画も、ここ数年で持ち上がったものではなく、40年ほど前からあったという。

「東京ディズニーランドの開業に合わせて事前協議等があったわけではないのですが、建設計画自体は、オープン翌年の昭和59年(1984年)度から存在しておりました。

オリエンタルランド側と市が協議を重ねまして、設計業務が事業として決定したのが令和4年(2022年)。そして今年から建設が始まる、といった流れです。

これまで東京ディズニーリゾートへは、近隣の今川出張所から出動することが多くありまして。そのほか、日の出や堀江出張所からも出動していましたが、今回新たに舞浜に建設されることで、よりフレキシブルな対応が可能になります。

あくまで、浦安市全体の救急需要を踏まえ、適切に計画したものです」(同)

東京ディズニーリゾートといえば、「夢の国」と呼ばれるだけあって、園内と園外の世界観を徹底的に分けていることで知られている。

救急車がゲートに横付けされてしまうと、その世界観を壊してしまいそうなものだが、この点について担当者は、「来園者のゲートとは違った入口があり、そこから出入りができます。ただ、状況に応じて最適ルートで救護するので、来園ゲートから入ることもありますね」と答えてくれた。

ファンの間では「妊婦の緊急搬送」も問題に?

さて、東京ディズニーリゾートと緊急搬送にまつわる話題として、ファンの間で“マタ旅(マタニティ旅行)”という言葉が知られていることをご存じだろうか。

この“マタ旅”とは「妊娠中に旅行や遠出をすること」を意味するもので、ディズニー好き界隈では2010年代前半から話題を集め始めた。

妊婦が「出産するとしばらく来られなくなるから」という理由でディズニーリゾートに遊びに来るのである。

問題視されるようになったきっかけは、順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科、社会保険船橋中央病院周産期母子医療センターの医師らが、日本周産期・新生児医学会で2010年に発表した『妊娠中の旅行に関する危険性:東京近郊の巨大テーマパークからの産科緊急症例に関する検討より』という論文だ。

論文では2007年1月1日から2009年12月31日までの3年間を対象に、東京ディズニーリゾートや周辺施設から同病院を緊急受診することになった患者数や症例などが調査されており、その期間での総患者数は86人であったとしている。

診断例の中には、切迫流産や流産なども報告されており、これらのデータは妊婦にとって“マタ旅”がリスクを伴う可能性があることを示している。

このような背景を踏まえ、浦安市内の複数の医療機関に聞き取りを行った。

「年に2〜3件ほど、東京ディズニーリゾートから妊婦の方が運ばれてくることがあるようです。要請はパーク内の救護室からですね。舞浜地区に出張所が建設されれば、緊急時の対応がより迅速になり、適切な措置が取れるようになると思います。受け入れ体制も変わってくるのかな、と」(浦安市内の病院関係者)

「少なくとも私が勤務してからは、うちのクリニックに妊婦の方がディズニーから搬送されてきた事例はありません。ただ、他の産婦人科などでは年に数件はあると聞いています」(浦安市内のレディースクリニックのスタッフ)

「マタ旅」中の急変は、妊婦健診を受けていない医療機関で対応することになるため、妊婦にとっても医療機関にとっても望ましくない事態だ。適切な医療が受けられない可能性もある。

母体や胎児を危険にさらし、旅先にある医療機関にも負担をかける行為であることを認識した方が良いだろう。

病気やケガの救急搬送に話を戻せば、近年、日本の夏は“酷暑”と呼ばれるほどの厳しい暑さが続いており、「災害級の暑さ」という表現も一般的になっている。行楽シーズンでもある夏季の救急搬送がさらに増えることは想像に難くない。

また炎天下でなくとも、アトラクションの行列に長時間並んだり、広い園内を歩き回ったりすることで、体調を崩す来園者が出ることは十分想定される。

建設が始まる「消防署舞浜出張所(仮称)」は、こうした状況やニーズに応じた適切な措置だといえそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

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