〈多産DVの恐怖〉「お腹に子どもがいれば他の男は見向きもしない」と妊娠させられた女性、避妊具なしのムリヤリの性交渉で意思を奪われ…
集英社オンライン / 2025年2月9日 14時0分
“多産DV”をご存知だろうか。女性に望まぬ妊娠・出産を繰り返させ、逃げにくくする、配偶者間の性的DVの一種だ。このDVでは、女性は子どもが増えるごとに経済的にも精神的にも負担が大きくなり、自由意志が奪われていく。多産DVを受けてきた当事者と、多産DVを受ける女性を多く見てきた産婦人科医に話を聞いた。
【画像】記者もドン引いた、多産DVをする男性の恐ろしすぎる一言とは…
離婚の意向を伝えるたびに無理やりに行為を迫られ…
中部地方在住のアイカさん(35)は、20代後半から年子で5人を出産。2歳になる末っ子を産んだのち、すぐに離活(離婚準備)を始め、離婚が成立して3ヶ月が経った。
現在は、近所に住む両親の手を借りながら暮らしている。その表情は清々しい。だが、元夫について尋ねると笑顔が消えた。
「結婚当初、私は男性社会が色濃く残る某大手企業に勤めていました。2人目の産休明けが迫った頃、嫉妬深い元夫は私に『お腹に子どもがいれば他の男は見向きもしないだろ』と言い放ちました。
何度お願いしても、性行為で避妊具はつけてくれず、結局仕事に戻ってすぐに3人目を妊娠。その子を出産するときに退職を余儀なくされました。
離婚の意向を伝えるたびに無理やりに行為を迫られ、涙を流すこともありました。でも、段々それが日常になり、異常さに気づけなくなるんです。
たまたま友人に相談したところ、『それ普通じゃないよ。夫婦間でも無理やりされるのはDVだよ』と言われハッとしました」
避妊具の拒否、無理やりの性交渉…それだけではすまないケースもある。多産DVに悩み、現在まさに離活中の関東在住、4人の子を持つレイコさん(38)は言う。
「拒絶すると、子どものところへ行き、手をあげるんです。止めても『夫婦が性行為をするのは当たり前。拒否するお前が悪い』とイライラを子どもにぶつける。最近では、子どもたちも夫を怖がり距離を置いています。
子どもを守るために、産婦人科で密かにピルを処方してもらい、なんとか妊娠を回避しながら性交渉に応じるようにしています」
離婚の話をするときにも「細心の注意が必要だ」と、レイコさんは語気を強める。
「数年前に、多産DVをしていた男性が、妻である女性に離婚を切り出され、逆上し妻子に手をかけたという隣町で起きた事件のことを聞きました。うちは、第三者に入ってもらう予定でいますが、同様の事件に発展するのではないかという恐怖があります。
多産DVという言葉が定着したことで、同様の経験を発信する人も増えました。こんな苦しみから早く脱するために、SNSやネットで情報を集めたりしています」
多産DV一家の特徴とは…
一方で“多産DV”の言葉に迷惑をしている人もいる。望んでの子だくさん一家だ。
「うちは子ども好きで子だくさんなのに『ご主人多産DV?』と冗談半分で言われて嫌だった」「4人いたら多産DVみたいな風潮はどうなの?」という声がSNSでも散見される。
そこで、“多産DV一家”はどういった特徴があるのかを、30年以上にわたり産婦人科医として数多くの多産DVの女性と接し、富山県議会議員としてもDV撲滅に向け活動する種部恭子氏に話を聞いた。
まず、多産DVをされている女性だとどのようにわかるのか。見た目で判断できるところはあるのか。
「見た目からは判断できません。生活保護を受給している困窮家庭もありましたが、私のクリニックを受診されたかたは、身なりがキチッとされていて、夫の職業は、医師や公務員など社会的地位があるかたも少なくないです。
わかりやすかったのは、婚姻関係にありながら『緊急避妊をしたい』と、一度ならともかく、短期間に繰り返し受診された方です。
話を聞くと、『身体的にも精神的にもしんどいので、もう産みたくはないが、男の子ができるまで産み続けろと夫に避妊具を拒否されている』と。胎児が女の子だとわかり、夫に中絶させられたこともあったそうです」(種部恭子氏、以下同)
たとえ夫婦であっても、支配下に置かれて行われる合意のない性交渉は不同意性交等罪に問われることもある。
「子どもを産み、育てることについて女性からポジティブな回答が得られなければ、多産DVの可能性があります。一概に『何人から』とか、『経済的に困窮しているから』では多産DVとはいえません。
何人目であっても抗えない状況で性交渉が行われ、女性が望んでいないのに妊娠・出産することが多産DVではないでしょうか。
本人が気づいていないことも多いので、『パートナーを怖いと思ったことはない? 避妊に協力してくれる?』と、本音が話せる関係性のかたが聞いてみてもいいかもしれません」
「子どものために私が我慢すれば…」では子どもは守れない
万が一、夫からの性行為の強要に悩んでいることを告白された場合、どうすればよいのか。
「殴られたり、首を絞められたりするなど命に関わる場合は、警察庁の性犯罪被害相談#8103や全国共通のDV相談ナビ#8008に電話をするか、都道府県に設けられている配偶者暴力相談支援センターに相談をするよう促してください。
ただ、ここに連絡をするのはハードルが高い上に、二次被害の声も届いています。勇気を出して相談したにも関わらず『その程度ではDVと言えない』と、突っぱねられてしまうことがあります。そこで、積極的に利用してほしいのが“民間シェルター”です」
民間シェルターは一部のDV被害者から“命の駆け込み寺”として知られている。NPOや地域の弁護士会などが運営しており、臨機応変に対応してくれる。公的シェルターもあるが、入居審査が厳しい上に、入居期間の制限があることがほとんどだ。
「民間シェルターであれば相談者に寄り添い、現状の打開策を一緒に考え、力になってくれるはずです。まずは、その存在を知らせてあげるだけでも、解決の糸口になるかもしれない」
種部氏は多産DVを受けていることがわかったら、女性に必ず伝えている言葉がある。
「『あなたは悪くない』と伝えます。多産DVを受けている女性は、たいてい言葉の暴力を日常的に受けており、自己肯定感がすごく低い。
自己肯定感を上げ、『DVをする男性から離れても生きていける』という前向きな気持ちに一新することを大切に、長い時間をかけて彼女たちの話を聞くようにしています」
そして、会話の中でよく言われる「子どものために私が我慢すれば…」という言葉に、疑問を呈する。
「夫婦間の暴力、暴言を見て育った子どもたちは成長を重ねるにつれ、特に思春期の頃に問題を抱えることが多いです。『子どもが不登校で』という悩みから、夫婦関係を問うと、『実は夫に暴力をふるわれており、性的なDVもある』と多産DVが発覚したこともあります。
私は、多産DV含む夫婦間でのDVが日常的に行われてきた家庭の子どもにも多数触れてきました。
すべてがDVを見聞きしたことに起因しているとは限りませんが、大声に怯えて育ち、大きな声が苦手だったり、ビクビクしていたり、そういった子どももいました」
自分を守るため、そして子どもを守るために。多産DVに気づき行動できる大人でありたい。
※「集英社オンライン」では「多産DV」をはじめ、夫婦間のトラブルに関連した情報、体験談を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。
メールアドレス:
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X(旧Twitter)
@shuon_news
取材・文/山田千穂
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