無能な公務員の雇用は税金の無駄づかいか? “能力不足で県職員がクビ”報道に賛同の声多数、だが“解雇しやすい社会”にも懸念が…
集英社オンライン / 2025年2月6日 17時30分
佐賀県が50代の男性職員を二人、「能力不足」を理由に分限免職処分にしていたことが判明した。読売新聞オンラインによると、二人は2024年2月29日付で処分され、能力不足での分限免職処分は県では初めてのケースだったという。
「もっと処分できる世の中になってほしい」
業務の指示に従わない、資料を紛失、数日でできる仕事に3か月もかかるうえに出来も悪いなどの問題があったという男性職員。県は二人を処分するまでに、2カ月間の業務観察、半年間の能力向上支援プログラムでの指導といった対応もしたが、結果的に“能力不足”の判断を下したようだ。
一般的に、仕事に就けば“将来安泰”とも言われている公務員が、“能力不足”を理由に免職されたことは世間に大きな衝撃をもたらしている。
〈他の自治体でもどんどん行なうべきだと思う。仕事をしない人がいるからちゃんと業務に取り組む人の負担が増えて、結果として潰されてしまうことが色々な自治体で発生してる〉
〈公務員に限らず、無能は無能なりの処遇にしないと、真面目な人が馬鹿を見るからね〉
〈県職員はもちろん、一般企業でもこういうのはもっと処分できる世の中になってほしい。解雇とかも。企業は簡単に解雇できない仕組みになってるけど、有害な給料泥棒や雰囲気を悪くするやつはめちゃくちゃいる〉
〈元から能力が高くなかったのか、それともやる気を失ってしまったのか…。皆が皆、向上心・出世欲を持ってるわけじゃないので、そういった人達にも居場所が無いと〉
免職された職員二人を心配する声もあれば、このような制度を日本でもっと幅広く簡単に実行できるようにするべきだという声もある。
今回執行された“分限免職処分”は聞きなじみのないものだが、いったいどのような制度なのだろうか。東北大学特任教授で、人事・経営コンサルタントの増沢隆太氏に話を聞いた。
「一般的に公務員はクビにならないといわれていますが、処分制度はあります。主に公務員の犯罪、非行などに対し、本人に責任を負わせるものが『懲戒処分』。懲戒免職になると退職金は出ません。
非行ではなく、能力欠如や病気欠勤など、通常業務が果たせない時に、本人の意に反して下される処分が、今回の『分限処分』です。分限とは“身分の変動”の意味で、“分限免職”の場合は退職金などは支給されます。
処分には、①降任、②免職、③休職、④降級があり、判断は慎重に行わなければならないため、役所や上司の一存で決まるものではなく、実際の執行は限られています」(増沢氏、以下同)
推定年収700万円の公務員が免職に
専門家の増沢氏からみても、分限免職が実際に施行されるケースはほとんどなく、非常にレアなケースだったという。
ただ、今回の男性職員のように、著しく能力が不足していたり、失態を繰り返す職員を県が雇用しづけることは「納税者への背信行為」で、県の判断は誠意のあるものであったはずだと増沢氏は指摘する。
「報道のような勤務態度であったとするならば、雇用を続けるのは税金の無駄であり、税金の無駄は納税者への背信行為です。さらには50代ということで、無能でも年功序列で給与水準が高くなっている可能性があり、そうであればなおさら雇用継続は合理性を欠くと言わざるを得ません。
単なる能力の低さだけでなく、上司への反抗や資料紛失など、民間であれば懲戒対象になる行為もあるようですからね。
民間企業では、目標設定や人事考課によって、無能な社員は昇進昇格をしづらくすることができますが、公務員の処分はハードルが高く、恐らくよほどのことがなければ処分は受けないでしょうから」
佐賀県の職員採用サイトを見ると、行政職の平均給料・給与月額は347,453円(給料月額に諸手当を含んだ額)。平均年齢は41.0歳だ。
これに年間で4.60カ月分の賞与も加わるとのことで、職員は41歳の時点で年収が560万円ほどだとわかる。公務員が年功序列であることを踏まえると、免職となった二人の年収は、600~700万円ほどであっただろうか。
ただ、“将来安泰”と言われているのは公務員だけではない。一般的な日本企業も基本的には終身雇用で、会社の業績が大きく傾いたり、よっぽどのことをしなければ解雇されることはまずない。
そんな中で今回の報道を受け、日本でもアメリカのように、能力がなかったりやる気のない社員を解雇しやすくするべきだという声も多くあがっている。もしそのような社会になった場合、どのようなメリット・デメリットが発生するのか。
アメリカのような社会を目指すべき…?
「メリットはまず、会社の生産性を上げ、収益性向上が期待できることです。組織のダイナミクスともなり、新陳代謝や意識改革も進むでしょう。さらに社会全体で人材流動性が高まることにより、転職が一般的となり、辞めやすく、次の会社に務めやすい環境ができる可能性があります。
アメリカなどでは解雇規制がない代わりに、転職も容易です。その会社では能力発揮できずとも、あらたなフィールドで成果発揮ができる可能性を広げ、キャリアの選択肢が増えるでしょう」
一方でデメリットは、社員の能力をどのように判断するのかという点にかかわってくる。「成果」「能力」の規定があいまいだったり、経営者や上司の「カン」「個人の好き嫌い」で判断されるリスクがあるという。
「日本の社会が転職者を容易に受け入れない風土や、そうした感覚を持たない経営者(自分たちはプロパーで長年その会社だけ1社で働いている)が多いため、転職者への忌避感もありますね。
新卒から入社した自分たちこそ本流。後から来たのはよそ者というムラ意識は、伝統的大企業では根強いはず。業務の数値化や効率化を可視化されると困る上司がいるので、解雇規制を撤廃するだけでは人材流動化実現は難しいのが現状です。
公務員、国家総合職(かつての上級職に相当)の事務職は全員1年有期雇用にするなど、国全体が変わらないと風土変革は難しいでしょう」
大きな波紋を広げた公務員の免職報道。これをきっかけに、襟を正した人も多いことだろう。今後日本社会は、どちらの方向に進んでいくのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部
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