石破首相も「“2馬力”選挙はどうみてもおかしい」と指摘、斎藤知事のゴマカシ記者会見に記者から「無責任」「正面から答えて」と厳しい声〈兵庫県政大混乱〉
集英社オンライン / 2025年2月6日 20時0分
〈〈兵庫県議が語るネットリンチの恐怖〉「竹内さん亡くなったけど、アンタはどうなの」「お前も●ねや!」続く恫喝電話、さらに頼んでもいない商品も届き…〉から続く
昨年11月の兵庫県知事選挙にからみ、立花孝志NHK党党首が斎藤元彦知事の応援を目的に出馬した“2馬力選挙”と呼ばれる手法を、石破茂首相が「どう考えてもおかしい」と批判し、再発を許さない法整備を働きかける姿勢を明確にした。兵庫県庁の定例記者会見では、時間を制限しながら煮え切らない答弁を繰り返す斎藤知事に、記者から「質問に正面から答えろ」との要求が飛び出した。
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石破首相も「2馬力の選挙にしても、どう考えてもおかしい」
兵庫県の問題は、元西播磨県局長・Aさん(60)が昨年3月に斎藤知事らの疑惑をメディアなどに匿名で告発したことで始まった。
斎藤知事の指示に基づく発信者調査で県当局はAさんの使っていた県公用パソコンから私的な文書を発見し、これを当時の総務部長が県議や県職員に見せて回り、漏洩したとみられている。
県議会の不信任決議採択を受け失職した斎藤氏は、出直し知事選に出馬。この選挙に「当選を目指さない」「斎藤さんを応援する」と言って出馬した立花孝志氏が、斎藤氏の街頭演説の直前や直後に同じ場所で演説することを繰り返した。
「演説で立花氏は、漏洩したAさんの私的文書の“内容”と称するものを公言しながらAさんを非難。『このような人物が行なった告発は嘘で、斎藤さんは陥れられた』と主張し、その動画をSNSに投稿しました。この動きは斎藤さんの支持拡大に大きく寄与したとみられています」(県議会関係者)
この状態が「2馬力選挙」として選挙後に問題視されるようになった。
「公職選挙法は候補者宣伝の機会の平等を図るため、選挙カーや運動員の数を制限しています。当選を目的としない候補者が他の候補者を応援すれば機会の平等が守れなくなります」(永田町関係者)
行政の動きは速かった。12月には村上誠一郎総務相が国会答弁で、「候補者が他の候補者の選挙運動を行なう場合には、その対応によっては公職選挙法上の数量制限などに違反する恐れがあるものと考えています」と、違法の疑いがあると明言。
ことし1月には兵庫県選挙管理委員会が総務省に対し、他の候補への誹謗中傷や真偽不明の情報の拡散が行なわれたことに加え、2馬力手法が用いられた知事選は「公正性に欠けるものだった」として法整備を求めている。
2月4日の衆院予算委員会では、立憲民主党の米山隆一議員が、知事の疑惑解明に積極的だった竹内英明元県議が選挙中からSNSなどで誹謗中傷にさらされた末に1月に亡くなったことも挙げ、2馬力手法や誹謗中傷への法整備も含めた対処を石破首相に求めた。
これに対し石破氏は、「2馬力の選挙にしても、どう考えてもおかしい、ということだと思っております。選挙運動のやり方について、各党の合意を得て法改正をはじめとして、誰もが納得する選挙運動のありかたを確立するのは喫緊の課題だと認識を致しております」と即答したのだ。
斎藤知事は「立花さん自身も知らなかったですし直接会ったこともない」
政府トップの意志が明確になった翌2月5日、斎藤知事の定例記者会見では当然この問題が焦点になった。
だが、首相発言の受け止めを聞かれた斎藤知事は、「私は選挙戦を戦った当事者でもありますので、首相のコメントについては差し控えたい」と回答をせず、「いずれにしても、選挙制度については国会や国において議論される、そして必要があれば改正などの対応はされるべきものだという風に認識してます」と一般論だけを述べた。
斎藤知事はこれまで「自分が当事者である選挙戦を精一杯やらせていただいた」として、立花氏との連携を否定してきたが、この日も同様の説明を繰り返した。
しかし地元メディア関係者は、「斎藤知事の街頭演説で聴衆の整理にあたった斎藤陣営のボランティアらしい人が、立花氏の演説でも聴衆の整理をしていた姿が目撃されています。また、斎藤知事の支持者が立花氏の選挙ポスターを貼っていたとの証言もあります。斎藤知事の支持者は、立花氏の行動は力になると思い、受け入れてきた可能性があります」と解説する。
このため記者会見で「(斎藤知事の)周りは(他候補からの応援があることを)みな認識していた。ご自身だけエアポケットのように『認識してない』というのは無理があり、選挙後にこれだけ問題視されても何も言わないのは無責任だ。改めて2馬力選挙についての認識を聞かせてほしい」と突っ込んだ質問が出た。
斎藤知事は「立花さん自身も知らなかったですし、直接会ったこともなかったですし、もちろん討論会の場でご挨拶はしたこともありますけど、私自身は自分ができる選挙、自分自身がやれることを精一杯やって、そういったことはないという風に申し上げてきてました」と反論。立花氏の動きは認識していなかったと強調した。
また、知事選で誹謗中傷やデマが飛び交ったと指摘されていることについて、記者から「立花氏の情報発信の中に誹謗中傷や事実に基づかないものがあったとお考えか。知事として事実関係を把握する立場にあるので、判断できる立場にいるのではないか」との質問を受けると、次のように答えた。
「県行政として個人間の問題ややり取りに立ち入るということは難しい。そして当事者ではないということもありますので、個々の投稿の内容について、発信者の内容等について、県行政として何か立ち入るということは難しいという風に思います」(斎藤知事)
記者は「何を聞いても同じような答えしか返ってこない」
斎藤知事は、2馬力疑惑について「選挙の当事者」であることを理由に首相の発言への受け止めを話すことを拒んだ。さらに選挙のもう一つの問題点であるSNSによる誹謗中傷やデマ攻撃については「当事者ではない」ことを理由に、実態の確認も再発防止策をとることも難しい、と言ったことになる。
兵庫県は斎藤知事の再選後、原則週に1回の知事の記者会見の時間を1時間程度に絞っている。この日も会見冒頭に県当局者はこの方針を宣言した。
だが、すでに多くのメディアで報じられている立花氏の言動を今も把握していないと言い続ける斎藤知事の姿勢に、会見の終盤、記者から「(会見を)1時間に制限するということであれば、知事にも真正面から記者の質問に答えていただきたい」と直接的な苦言が呈された。
これに対し斎藤知事は「私自身も自分が答えられるところを答えさせていただいてますので、その姿勢はこれからもしっかりやっていきたいと思います」と反論した。
実際の答弁態度からかけ離れた説明に納得しない記者は、「何を聞いても同じような答えしか返ってこないってことであると、やはり会見が長くなってしまうと思うので、しっかり、肩透かしのような答えはせずに正面から答えていただきたいと思います」と再度、念を押した。
Aさんが告発した疑惑を背景に行なわれた出直し知事選が、捜査や法改正が迫られる重大な問題を次々と引き起こした。国会では関連法改正に向けた議論が進む中、問題の渦中にいる斎藤知事は動こうとしない。告発から1年が経とうとしているのを前に、兵庫県の混迷は深まり続けている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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