相模原・両親殺害の少年「親から”下僕”と呼ばれ」「目の前で性行為を見せつけられ…」と初公判で主張…しかし児相では「虐待による傷跡はなかった」と確認済…万引きで逮捕も
集英社オンライン / 2025年2月8日 11時0分
昨年2月13日に、神奈川県相模原市のマンションで50代の夫婦が死亡しているのが見つかった事件で、両親を殺害したとして殺人などの罪に問われている当時15歳の長男の初公判が横浜地方裁判所で行なわれた。当時から父親への殺意を抱いていたと供述していたAだが、今回の公判ではその理由の驚くべき背景が語られた…。
Aが両親から受けていた「虐待」の数々
「すごく自分が汚いもののように思えてきた」
2月5日、横浜地裁で行なわれた被告人質問で、そう語ったのは事件当時15歳の少年A。昨年2月に神奈川県相模原市の自宅で50代の両親を殺害したとして、長男のAが殺人と窃盗の罪に問われた事件。
「父親が出社してこないことを不審に思った会社の上司が警察に連絡したことで、事件が発覚。調べに対し、Aは『殺そうと思って殺したことに間違いありません』と父親の殺害を認めたことで、逮捕に至った。
Aは未成年だったため、逮捕後は一度、横浜家庭裁判所に送られたが、『刑事処分の対象とするのが相当』として逆送。昨年5月に起訴されていた」(社会部記者)
殺害の理由に焦点が当たる中、5日に行われた約4時間にわたる被告人質問で明かされたのは、Aの驚くべき養育環境だった。
「Aは小学生の頃から両親からの暴言、暴力にさらされており、ほとんどの家事をさせられるなど、ネグレクトの状態に置かれていたと語りました。
さらに、Aは両親に目の前で性行為する様子を見せられたことがあると証言。父親がAに『お前もこうやってできたんだよ』などと言い、さらにAの頭を母の股間に押し付けたとも語った。Aはその時のことを『すごく自分が汚いもののように思えてきた』と振り返っていた」(前出の記者)
ほかにも両親との生活について、「殴られたり、酒や水をぶっかけられたりした」「小学生のとき日常的に『下僕』、名前の頭に『バカ』を付けて呼ばれたり、根暗などと言われた」と主張していたという。
Aの証言からは“異様な家族”の姿が浮かび上がるが、周囲の目にはAと家族はどう映っていたのだろうか。
小学生時代をよく知る同級生は、「彼は小学生のころから控えめというか、とにかくおとなしい子でした」と話す。
「大河ドラマが好きだったようで、同級生に歴史の話をしていましたよ。特に戦国時代の話が好きで、武田信玄とか織田信長とか武将の名前を出していましたね。
たしか小学校の頃はサッカークラブにも所属していたけど、中学のサッカー部は厳しくて有名だったので、『比較的ゆるい』と言われていたバドミントン部に入部した」
小学校時代はサッカーの試合や練習に、親子三人そろって姿を見せることもあったという。
「お父さんもお母さんも地味な感じで、地域では付き合いが広いほうではなく、本人もサッカーが上手だとか熱心だったという感じではなかったんです。ちょっと内気な彼の背中を両親が押していたという感じでした」(別の同級生の母親)
中学に進学すると、成績が優秀なことで知られるようになった。
「陰キャだけど頭がむちゃくちゃいいことで評判だった。Aの身内に超高学歴の人がいるといううわさがあって、親が勉強させることに関心が高いんだろうと思っていた」(前出・同級生)
難関高校にも受かるほど頭のよかった中学生時代のA
そんな家族の異変が表面化したのは、Aが中学3年生の2022年8月のこと。児童相談所関係者が語る。
「Aの父親が警察の相談窓口に、『素行不良なところがある』とAを連れてきました。事情を聞く中で、Aは『4、5年前にお父さんに叩かれた』と証言。警察が書面で通告したことで、児相(児童相談所)はAの世帯を“身体的な虐待があった世帯”と認知することになった」
法廷で語られた内容とも一致する証言で、これが事実なら、幼い頃から父との葛藤を抱えてきたことがうかがえる。しかし――
「Aは父親から継続的な虐待があったとは言わず、児相もAの体を調べて虐待による傷跡がないことを確認しました。
その後、2023年3月に母親から『父親がAに謝罪して和解がなされ、父親とAが会話をしたり、一緒に外食したりするなど状況は安定している』との報告を受け、中学校からも同様の確認をとったので対応は終了しています」(同前)
その後、受験を経て晴れて高校生となったA。
「超難関の国立大付属高と有名私立高校の二つに合格したと聞いて、近所のお母さんたちの間でも『すごいね〜』とうわさになっていました。
でも、なぜかどちらにもいかず、偏差値ランクがそれより下の、通学に1時間半くらいかかる県立高に入学したんです。彼なら県立でもトップ校に行けたと思うけれど……。
もしかしたら、Aは自分を知っている地元の人が行かない遠い学校を選んだのかも」(知人女性)
実際、中学までの同級生の中では高校進学後のAについて知っている人はほとんどいなかったようだ。
児童相談所で「父に期待することはない」が、母には感謝していると話した
そして訪れた運命の2024年2月。事件が起こるたった5日前、父親は児童相談所に再び、「子どもが非行傾向で対応に困っている。相談したい」と助けを求めていた。
「それまで日常的に(Aとの生活が)うまくいっていなかった上に、中身は話せませんが、直近に突発的なことが起きた状況だったようです」(児相幹部)
この電話で父親と児相は8日に面談をする約束を交わしていたのだが、その直後にAはコンビニで万引き事件を起こしていた。
「事件が起きたのは、2月6日の早朝でした。捕まった少年は暴れはしませんでしたが、『警察や親に連絡しないでください。お願いします。勘弁して』と訴えていました」と話すのはコンビニ関係者。
「店の事務所で防犯カメラを見ていた店員がAの行動に気づきました。Aを事務所に連れていって『バッグの荷物を全部出せ』というと素直に従い、盗んだおにぎりと大福、野菜ジュースの他に、カッターナイフとタバコが出てきました。
盗んだ3点の金額は合わせて500円ほど。Aは店内のATMで現金を引き出していて財布には数千円が入っており、『なぜ金があるのに盗むんだ?』と疑問に思いました」(同前)
この日は平日だったが、Aは通っていた進学校の制服ではなく黒のジャンパー、ジーパン姿だった。通報で店に駆けつけた警察官らがAから事情を聴いている間に、連絡を受けた母親も店に到着したという。
「お母さんは従業員に『すみませんでした』と謝りながら、『最近(息子の)トラブルや非行が多くて』と話していたみたい。『ウチはお父さんが厳しい人で』とも言っていて、Aの尻拭いに追われている感じで大変そうでした。Aは警察官に『万引きしたのは今回が初めてだ』と言っていたようだけど……」(同前)
8日には児相との面談は予定通り行われ、Aも同席した。だがこの面談の際には、2日前の万引きやカッターを所持していた事実は警察から児相に伝えられていなかった。
「父親からの相談に基づく『育成相談』という手続きで、まず担当者が親子3人と面談しました。Aは望んで来たのではないという表情でしたが、両親が席を外した後、担当者と一対一になると率直に思いを話していました。『父に期待することはない』と言い、母親に対しては感謝を口にしていました」(児相幹部)
話し合いの中で虐待やDVといった「危険なエピソード」が親子双方から出なかったため、児相はAへの関与を「緊急対応」に切り替える判断を見送った。
児童福祉士などを加えた援助方針会議を15日に開き今後の方針を検討する、と告げると両親は受け入れ、帰路に就いた。
しかしそのたった2日後、事件は起こってしまった。
「検察によれば、Aは高校に入学後、学校になじめず暴走族に加わって、外泊を繰り返すようになっていたそうです。
事件当日、再びコンビニで万引きを犯したAは警察署に迎えに来た父と帰宅。交際相手に会いに行くのを阻止されたため、父親を殺害し、その後、帰宅した母親に対しても通報されるのを阻止しようと考え、殺害したとみられている」(前出・社会部記者)
裁判では、Aは父親の殺害について、「父に対する恐怖心や束縛感、小さい頃からのことがフラッシュバックして恨みが大きくなり、恐怖感から逃れたいと思った」と認める一方、母親に関しては、「いっそ、殺してくれと話された」「母親を1人残すことはかわいそうだと思った」などとし、嘱託殺人罪が成立すると主張している。
「被告人質問でも焦点が当てられたように、弁護側は両親からの虐待や、不適切な養育環境で育ったことが事件の背景にあると訴えています。両親が亡くなっているだけに、少年の証言が今後の裁判のカギを握ることとなる。
そのため検察側は少年の証言の信用性に着目し、関係者の証言との矛盾点などをぶつけていた」(同前)
家庭という閉鎖的な空間で、一体何が起こっていたのか。2月10日に行われる論告で検察がどのような見解を示すか、注目が集まっている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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