〈merchu関係先に家宅捜索〉強制捜査着手、立件なら斎藤知事の“当選取消”も現実味。予想を超える捜査当局の“強気”のワケ
集英社オンライン / 2025年2月7日 22時41分
〈「“2馬力”選挙はどうみてもおかしい」と石破首相も指摘、斎藤知事のゴマカシ記者会見に記者から「無責任」「正面から答えて」と厳しい声〈兵庫県政大混乱〉 〉から続く
兵庫県の斎藤元彦知事をめぐる一連の疑惑で、捜査当局が初めて強制捜査に入ったと報じられた。公職選挙法が「買収」にあたると規定するインターネットによる選挙広報への対価支払いを、昨年11月の知事選の際に斎藤氏の陣営が行なったとして斎藤氏らが刑事告発されていた問題で、兵庫県警と神戸地検が2月7日、関係先の家宅捜索に踏み切ったというのだ。告発内容が立証されれば斎藤知事の当選取消と公民権停止も現実味を帯びてくる。特大事件の捜査が目に見える形で動き始めた。
〈画像〉180万円のバーキンを持ちニッコリ…“お嬢”と呼ばれていた折田氏、選挙カーの上に乗り撮影する姿も…
「予想を超える捜査当局の“強気”に驚きが広がっています」
家宅捜索は、7日正午ごろから兵庫県警記者クラブに常駐する報道各社が次々と報じた。
「捜索対象は、知事選で斎藤候補のSNS広報を行なったとネットで公言した折田楓氏が代表取締役を務める兵庫県西宮市のPR会社merchuの複数の関係先です。知事室への捜索は行なわれていない模様ですが、斎藤知事の陣営幹部にも強制捜査の対象が広がる可能性もあります」(地元記者)
兵庫県では2月18日から定例の2月議会が予定されている。それまでに県警と地検が折田氏や斎藤知事を含む関係者から任意の事情聴取を始めるのか、その動きが漏れてくるのかどうかに事件担当記者たちは注目していた。
「ところが、ふたを開けると家宅捜索という強制捜査を複数箇所に、それも県警と地検が合同で行なうという展開です。予想を超える捜査当局の“強気”に驚きが広がっています」(兵庫県政関係者)
家宅捜索に絡む問題は、知事選から3日後の昨年11月20日に、折田氏が自身のnoteに選挙で斎藤陣営の4つのSNS公式アカウントの「管理、監修」を含む広報全般を、仕事として手掛けたと受け取れることを書いたことをきっかけに始まった。
公選法はネットの選挙運動に対価を支払うことを禁じている。総務省は「業者が主体的、裁量的に選挙運動の企画、立案を行い、当該業者が選挙運動の主体と認められる場合には、当該業者に対しその対価として報酬を支給することは公職選挙法上の買収罪に該当する恐れがあります」(村上誠一郎総務相)と説明する。
買収罪に該当する場合、候補者本人や陣営幹部が行為に関わったと認められれば、候補者の当選が無効になる場合もある。
「選挙でのネット広報を有償で行なうことが公選法に違反することを、折田氏はおそらく知らずに書いたと思われます。それだけに記載内容は屈託がないというか、警戒感もなく問題の行為を赤裸々に書いているといえます。
この記載内容が違法ではないかとネットで指摘が出ると、問題のnoteは何回にもわたって問題の箇所の削除や改変が行なわれました。しかしオリジナルの記述の“魚拓”(もとのウェブページを記録・保存したもの)が残って出回り、後の祭りでした」(社会部記者)
ポイントは、支払われた代金にSNS広報の対価が含まれるのか否か
折田氏のnoteには、斎藤氏自身が選対幹部も務めたとされる側近のK氏ととともにmerchuを訪問し、折田氏からレクチャーを受ける場面の写真も掲載されている。
問題が拡大すると、斎藤知事は『法に違反するような事実はないと認識している』『代理人に対応をお願いしている』とだけ述べ、折田氏との関係を今も説明していない。
代わりに登場した代理人の奥見司弁護士は、note書き込みから1週間後の記者会見で、斎藤陣営が「ポスターデザイン制作」などの名目で計71万5000円をmerchuに支払ったと説明した。
ただ奥見氏は、折田氏はSNS広報をボランティアで行なっただけで、主体的な関与もないと主張し、違法性を否定。折田氏はnoteで自分の役割を大きく見せるため「盛った」とも主張した。
斎藤知事側の主張が出たのを見て、自民党の裏金問題を暴いたことで知られる神戸学院大の上脇博之神戸学院大教授と、元検事の郷原信郎弁護士が昨年12月初旬に兵庫県警と神戸地検に告訴状を送付。そこに書かれた容疑が今回の家宅捜索に直結する。
上脇氏らは、斎藤知事は買収罪に、折田氏は被買収罪に、それぞれ当たると告発状で指摘。
選挙前に斎藤氏本人が折田氏から『SNSの利用について選挙で協力できる』との内容の説明を受けていたことがnoteに書かれていることなどを根拠に、支払われた71万5000円はSNSを含む選挙運動への報酬で、買収にあたると説明した。
「SNS広報をmerchuが会社業務として主体的、裁量的に行なったのか、それとも折田氏が個人のボランティアとして行なったのか。さらに、支払われた代金にSNS広報の対価が含まれるのか、が違法性があるかどうかを判断するポイントになります」
そう話す法曹関係者が続ける。
「SNS広報が業務として行なわれたどうかに関しては、選挙の約1か月前の昨年10月、斎藤陣営にSNS戦略での協力を申し出た上原みなみ神戸市議に対し、斎藤知事のmerchu訪問にも同行したK氏が、『昨日の会議内容 SNS監修はメルチュさんにお願いする形になりました』とのLINEを送ったことが関係者の証言で発覚しています。
監修を個人である折田さんではなく会社であるmerchuに頼む、ということは、業務として発注されたことをうかがわせます。
一方ネット広報が専門のmerchuの社長である折田氏は、1ヶ月にわたり選挙に張り付いていたとSNSで話しています。その対価が71万円というのは安すぎるという見方もあります。実質的な報酬ととらえられるもっと大きな金の動き確認することなどができなければ、SNS広報を仕事として発注したと言えるのか、議論の余地があるでしょう」(同関係者)
斎藤知事は「これまでご説明してる通り、代理人を通じて対応しています」
ここで県警と地検が家宅捜索に踏み込んだことが重い意味を持ってくる。
「当局はすでに、折田氏から事情聴取をしており、その上で強制捜査で証拠の押収に乗り出したようです。読売新聞は実名を伏せながらも、捜査当局が折田氏に関連資料の任意提出を求めたが十分に応じなかったためガサに踏み切ったと報じています。当局は証拠隠滅の疑いがあるとみて、口座取引や通信記録の確保を急いだとみられます」(県議会関係者)
家宅捜索が報じられて約2時間後、記者団の取材に応じた斎藤知事は、
「報道で私も(家宅捜索を)承知をいたしました。この件につきましては、これまでご説明してる通り、代理人を通じて対応しています。捜査に対してもしっかり協力をしていくというふうに考えておりますし、私としては公職選挙法等に違反するということはないという認識には変わりはありませんが、引き続き捜査に対して要請があれば、しっかり協力していくというふうに考えています」とだけ話した。
「merchu」が入ったビル前には30人以上の報道陣が集まっていた。同ビルのテナントで勤務しているという女性は、「昼前くらいから報道の方が集まりだしたので何かあったのかしらねって話はしていたんです。昼過ぎからはずっとこの騒ぎですよ」と話していた。
兵庫県ではほかにも、斎藤知事の職務や知事選に絡み、
①2023年11月の阪神・オリックス優勝祝賀パレードに絡む県の公金不正支出(背任)疑惑
②立花孝志NHK党党首が選挙で斎藤氏を応援した“2馬力”選挙運動問題
③斎藤知事の対立候補のSNSアカウントが凍結されたり、デマも交えた誹謗中傷が選挙中から激化した問題
など、警察の刑事部捜査2課や地検が捜査を担当する“2課モノ”と呼ばれる選挙、経済事件が山積している。
県警はパレード絡みの背任疑惑についても、市民団体からの告発を受理している。(♯24)
これと並んで立件にハードルが高いとみられてきたmerchuに絡む疑惑で強制捜査が入ったことは重大な事態だ。
「斎藤知事本人が罪に問われなくても、陣営幹部が買収で有罪になれば連座制の適用で知事選の当選が取り消される可能性がある点で、最も深刻な事件です。斎藤知事周辺の疑惑は新たな局面に入ったと言えます」と県政界関係者は指摘している。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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