〈マクドナルド最高益〉“3年で100店舗以上の純増”目指すも気になる「本国の失速」とセブン-イレブンとの共通点
集英社オンライン / 2025年2月13日 7時0分
日本マクドナルドホールディングスの全店売上高が、2024年12月期に8291億円となって過去最高を更新した。2022年から2024年の中期経営改革で掲げていた「2021年比で全店売上1000億円積み上げ」という目標を見事達成した形だ。強気の値上げが奏功、客数を維持して店舗の収益性を引き上げた。しかし一方で、同様の取り組みを進めていた本国アメリカでは客離れが深刻化している。
全店売上高は2027年に1兆円を視野に拡大
日本マクドナルドホールディングスの全店売上高は2023年12月期が7777億円。2024年12月期は6.6%の増加で、513億円の上乗せに成功している。期初の計画からも31億円上振れた。好調ぶりがうかがえる内容だ。
近年の増収ペースは目覚ましい。2018年12月期から2020年12月期までの全店売上高は5000億円台で推移していたが、あっという間に8000億円台を突破した。
マクドナルドが収益性を高めた主要因は値上げだ。
2024年12月期の全店売上高は2020年12月比で40.7%増加している。この間に、既存店(オープンから一定の年月が経過した店舗)の客単価は23.7%増加し、客数は9.8%増加した。客単価が大幅に上がったことで店舗の収益性が増したため、フランチャイズ加盟店のメリットが高くなり、増店効果が加わって8000億円を超える売上を達成したわけだ。客単価増の影響が大きいことがよくわかる。
2022年、マクドナルドのハンバーガーの値段は59円だった。デフレ経済における低収益性の罠に長い間はまっていたが、現在はインフレを背景として適正な価格水準に改めることができた。
2月6日、マクドナルドは2025年から2027年までの中期経営計画を発表した。その中で、全店売上高の年平均成長率を4%~6%増にするという目標を掲げている。仮にプラス5%のペースで成長したとすると、2027年12月期に9500億円を突破することになる。6%であれば、9800億円を超え、1兆円が視野に入るレベルだ。
ポイントは、その数字をどうやって達成するかだ。中期経営計画には「店舗ポートフォリオ最適化」が掲げられている。新店の加速と閉店により、3年間で100店舗以上の純増を目指すというものだ。価格改定で店舗の収益性を高める取り組みはひと段落し、次は増店を軸に増収を達成しようというのだろう。
しかし、これは険しい道のりになるのではないか。
割安セットメニューの提供に舵を切った本国アメリカ
総務省の家計調査に興味深いデータが出ている。
2024年の二人以上世帯1世帯当たりの「ハンバーガー」年間支出額は6467円だった。2020年は5100円だ。この間に支出額は26.8%増加している。同期間におけるマクドナルドの客単価の増加率は23.7%と、ほぼ一致しているのだ。
単価の大小はあるとしても、他社も同じく値上げをしたことを考えれば、「ハンバーガーチェーンの単価増」と「家計の支出額」は連動している可能性が高い。リモートワークが広がったことでファーストフード店の利用頻度が増えたなどと言われることもあるが、頻度そのものは大して変わっていないことが考えられる。
2月6日にマクドナルドが発表した「3年で100店舗以上の純増」という力強い出店強化で考えられるシナリオは、競合店から顧客を奪いとるという公算が高いのである。
しかしそれは、価格競争というかつての悪夢を招きかねない。
実際、過度な値上げで客離れを起こしているのが本場アメリカのマクドナルドだ。2024年10-12月のアメリカにおける売上高は前年同期間比1.4%減。アナリストの予測を上回る減少率だった。2023年10-12月は4.3%増加していた。
日本と同様にアメリカのマクドナルドでも、高インフレを背景に2022年ごろから価格改定を重ね、高収益体質へと生まれ変わっていた。しかし、現在は消費者の節約志向が高まり、客数が伸び悩んでいる。足元では割安なセットメニューを充実して回復に躍起になっている。
国内で高級路線を維持し、客数の減少に悩まされた会社といえば、セブン&アイ・ホールディングスだ。セブン-イレブンの国内既存店の客数は2024年から前年を下回る月が多くなった。それに合わせ、既存店売上も前年割れを起こしている。
集客対策として2024年9月に導入したのが「うれしい値!宣言」という名の安売りだった。これが功を奏して9月以降は客数が前年を下回った月は一度もない。
マクドナルドの価格は今や高級路線のモスバーガーと大差がなくなっている。マクドナルドの足元の業績は良好かもしれないが、増店による収益の拡大が単純に進むとは考えづらい。慎重な出店計画が必要になるだろう。
同業以外にもマックのライバルとなり得るのは…
マクドナルドは同業だけでなく、別カテゴリーの中食産業とも競合になりやすい。
ハンバーガーショップは、安く手っ取り早く食事ができるという需要を獲得してきたが、近年は「安く」という要素は今や消失している。
そこで競合となりえるのが総菜パンだ。山崎製パンの2023年12月期における菓子パン部門の売上高は前期比14.0%増の4334億円だった。主力の「まるごとソーセージ」が好調で、総菜パンの売上が伸長しているという。
2024年12月期上半期における同部門の売上高も14.8%増の2344億円と好調だ。買収した包装パン事業のYKベーキングカンパニーの収益貢献があったが、ヤマザキパン単体でも6.5%増加している。単価は4.5%上昇したが、数量も1.6%増えた。
出先で手早く何かを食べようと考えたとき、安さを軸に考えれば、マクドナルドよりもドラッグストアやコンビニなどの総菜パンの選好度は上がるはずだ。
また、同じファーストフード店でもマクドナルドをカフェとして利用するのであれば、ミスタードーナツの方が圧倒的にコストパフォーマンスは優れている。(一部店舗では実施していないが)コーヒーはおかわり自由であり、ドーナツは100円台から購入できるからだ。
マクドナルドは今期からが勝負の年となりそうだ。
取材・文/不破聡 写真/shutterstock
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