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鎌田大地と堂安律の下剋上は、W杯本大会へ光明をもたらすか?

集英社オンライン / 2022年6月21日 13時1分

6月、カタールW杯に向けた日本代表は4試合の強化試合を終えた。本大会出場をかけた代表メンバー争いで、アピールに成功した選手は誰だ?

6月シリーズのMVPを一人選ぶとしたら?

今年6月、日本代表はパラグアイ(4-1〇)、ブラジル(0-1×)、ガーナ(4-1〇)、チュニジア(0-3×)と、同11月のカタールW杯に向けた強化試合を戦った。結果は2勝2敗。収穫も課題もあったが、メンバー選考の答えは「ほぼ出た」と言える。

9月にも強化試合は残るが、森保一監督は「序列」を重視する傾向が強いだけに、90%以上が今回の招集メンバーになるだろう。未だにエースだった大迫勇也に未練を残し、柴崎岳を選び続け、長友佑都を重用するのも、序列が理由だ。



では、森保監督はここから誰を残し、誰を外すのか。

6月シリーズの最優秀選手を選ぶとすれば、やはり鎌田大地になるだろう。鎌田は3試合に出場し、戦力になることを示した。とりわけ、パラグアイ戦は素晴らしかった。

ブラジル戦ではたしかな手応えを感じさせた

インサイドハーフでの抜擢で、一気に序列を変えたほどだ。自在にボールを呼び込み、華麗に持ち運び、適時にパスを入れ、プレーを活性化した。戦術の適応力は破格だった。前半、右サイドで堂安律がボールを持った瞬間、左足で入れたボールにタイミングよく飛び込み、頭で合わせている。後半にも、再び堂安のスルーパスに巧妙に走り込み、エリア内で倒されてPKを獲得した。

鎌田はパラグアイ戦で90分間プレーしたことで、ブラジル戦は途中出場だったが、ガーナ戦は出場していない。それは4試合の総決算と言えるチュニジア戦で先発させるためだった。つまり、レギュラー組に採用されたわけだ。

今年3月、日本代表がアジア最終予選でW杯出場を決めた際、鎌田は招集すら受けていない。だが、所属するフランクフルトでヨーロッパリーグ優勝の栄誉を得て、今回のメンバー入りとなった。序列としては「当落線上」にいたが、「有力」を飛び越え、「当確」に近いところまできた。

逆境をはね返した堂安の成長

ただ、森保監督は鎌田の力をすべて引き出しているとは言えない。端的に言って、インサイドハーフではなくトップ下の起用が理想だろう。現状の4-3-3のシステムにはめ込む起用では、窮屈さが見える。

「ビッグクラブと戦っているし、そこの戦い方はいくらでも調整できます」

そう語る鎌田は、意外なほど二枚腰三枚腰のある選手である。本人が語るようにインサイドハーフもできるが、トップ下でも守備はできるし、何より高い位置にいた方が相手に怖さを与えられる。チュニジア戦も、高い位置でボールを持つと一瞬で守備網を切り裂くパスを出した。

鎌田は傑出したオールラウンダーで、監督の戦術でがんじがらめにすべきではない。ELでチーム得点王になっているように、自らゴールを決められる。FCバルセロナ戦では世界最高のペドリを守備で封じ、チームに貢献。一方で真骨頂はチームメイトのプレーを輝かせる才能で、フランクフルトでもセルビア代表MFフィリップ・コスティッチとの連係はEL優勝のハイライトだ。

鎌田がピッチに立つことで、堂安、三苫薫、上田綺世、久保建英にも輝きを解放させるはずだが…。

もう一人、序列のポイントを稼いだのは堂安だろう。

堂安も鎌田同様、3月の代表戦では招集外だった。それが今回はパラグアイ、ガーナ戦で先発の座を得た。鎌田、山根視来の得点アシストだけでなく、自ら積極的にシュートを放ち、逆サイドからのクロスにも入り込み、縦横無尽の働き。PK失敗はご愛嬌としても、強烈な存在感を見せた。

代表招集外の悔しさをプレーにぶつけた

堂安は右サイドで、レギュラー候補筆頭の伊東純也とは異質のプレーを見せられる。左利きで中に切り込み、コンビネーションを使って崩せるし、際どいシュートもある。サイドバックやインサイドハーフ、逆サイドのウィングとの連係も良く、同じ左利きで東京五輪世代の久保とのコンビは一つの武器だろう。W杯で同組の強豪ドイツ、スペインを相手でも、一定のダメージを与えられるはずだ。

「守備の強度は、この2年間で高くなった」

堂安が語ったように、守っても強さを見せた。プレスバックするだけでなく、ポジション的優位を保ってパスカットにも成功。簡単に相手に攻め込ませていない。そもそも所属するPSVアイントホーフェンはクラブの格でいえば南野拓実のリバプール、冨安健洋のアーセナルに次ぐ存在で、そこで定位置を取ってのシーズン11得点(カップ戦を含めて)は”代表入りの保証書” と言っていい。

大会直前に森保監督の戦い方を革新できるかが鍵

二人と同じく序列ポイントを稼いだのは、板倉滉(シャルケ)、三笘薫(ユニオン・サンジロワーズ)の二人か。板倉はセンターバックとして3番手を確保し、5バックの中心としてもテストされ、加えて遠藤航のバックアッパーにもリストアップされた。三笘はどの試合でも左サイドから切り込み、攻撃の可能性を広げ、ブラジル戦における最大の光明だった。

DF、ボランチとユーティリティー性も魅力

本大会ではジョーカーとしての役割も期待

序列を覆した選手がいたことは、価値ある連戦だった。

しかし、ブラジルには手も足も出なかったし、似た戦いをするチュニジアには力の差を見せつけられた。結局のところ、森保監督が誰を外すか選ぶか、というよりも、選手が森保監督に選択を迫る、という試合だったかもしれない。無理矢理に守備重視のシステムに選手をはめ込むよりも、適材適所で能力の高い選手がピッチに立ったほうが、結果も内容も良かったのだ。

W杯を半年後に控えて、選手が台頭したことは望ましいが、このままでは“一敗地にまみれる”という危機感が消えない。欧州の最前線で戦う選手たちが、森保監督の戦い方を革新できないか。過去にも、2002年W杯では選手の話し合いでフラットスリーをほぼ捨て、2010年W杯では負けないためのサッカーに転換し、2018年W杯でも長谷部誠を中心に選手が判断をゆだねられ、ベスト16に進出した。どれも大会直前で舵を切った結果だ。

鎌田、堂安、板倉、三笘のような選手が監督のつくる序列を完全に覆した時、一つの光明が生まれるかもしれない。

文/小宮良之 写真/ヤナガワゴー

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