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なぜアパホテルは株式を上場しないのか? 知らないと恥ずかしい経済知識

集英社オンライン / 2022年6月24日 11時1分

1万円を約4億円にするには? アメリカ株の強さ、コツコツ投資、長期投資の強さを学ぶことにヒントがある。経済知識がわかりやすく学べる入門書『世界一面白くてお金になる経済講座 知識ゼロからはじめる投資のコツ』(ダイヤモンド社)から「株式上場」の項を一部抜粋・再構成してお届けする。

知らないと恥ずかしい経済知識の講座

Q あなたは「4 億円」が欲しいですか?

私も欲しいです。実は誰にでも4億円を得られるチャンスがあります。もちろん宝くじの 1 等の話ではありません。宝くじの1等が当たる確率は約1000万分の1。永遠に当たらないと考えたほうが良いですから。ならばどういうことでしょうか?

アメリカ株の強さ・コツコツ投資&長期投資の強さを学びましょう。4 億円を得るヒントは「世界最高の投資家」です。早速ですが、知らないと恥ずかしい経済知識の講座です。


Q 日本に企業は何社あるでしょう?

正解は…約420万社です。予想以上に多いと感じたのではないでしょうか。日本の人口と企業数の割合を考えると約30人に1人、つまり小学校のクラスで1人は社長になっているという計算になります(1人で複数社持つケースもあるので正確には約40人に1人が社長)。

これを知った中学生の私は「孫正義みたいなすごい人がそんな身近にいるわけないだろ!」と思っていました。しかしサラリーマンを辞めてからこの事実を実感しました。今現在も身の回りに社長の友人は多いです。実際、私も1人でKoruとZedの2社を持っています(企業の定義は個人事業主も含みます。個人事業主でも社長と名乗ることは可能)。

では日本の企業数が非常に多いことがわかった上で、次のクイズです。

Q 「上場」って何? 何のために行うのでしょうか?

正解は…株式を公開して、誰でも会社の株を買えるようにすることです。いま私たちがスマホで簡単に株が買えるのは上場して株式公開をしている企
業だけ。公開する側は株を手放すことで多額の資金調達ができます。その資金を用いてさらに大きな事業拡大を目指します。一般的な株式会社は株を公開していません。私が経営している 2 社の株を他人が買うことはできないのです。

株式会社が上場するメリットとデメリット

◎[資産増大]時価総額(株価)が上がり、上場前に投資をしていた創業メンバーや投資家が大金を手にできる(…というのをエサに仕事をめっちゃ頑張らせます)。
◎[知名度向上]新規の株主が増えることで知名度が向上、取引先の開拓に繋がり、売上げアップにつながる。
◎[採用強化]“上場企業”というブランドが手に入り、新しい人材を採用しやすくなる。
◎[事業拡大]新たに調達した資金で日本全国へ広告を出したり、新規事業を起こしたりできる。
◎[利益拡大]株主総会が公開され、経営陣へ(良い意味で)監視の目がいくのでより経営努力を増大させる。

つまり…上場すると経営が上手くいくのです。そして世の中に価値がある 商品/サービスを生み出し、ユーザーを幸せにする、新しい雇用も生まれる、国への納税も増える、社会全体が幸福になる!…ということを目指しています(残念ながら、上場ゴールで創業者が情熱を失ってダメになってしまうケースもあります)。

上場のデメリットもあります。株主が経営に(悪い意味で)口を出してくるリスクがあるため、あえて上場しない企業も多数あります。例えばアパホテルは上場しないと公言しています。株式公開による資金調達をしなくても「常に儲かり続けているので外部のお金は要らない」というわけです。

ドーピングを繰り返し、アタマでっかちのおかしな構造に

実は上場する場所(=証券市場)にもランクがあります。日本で最も良い市場とされているのが、東京証券取引所(東証)における「プライム」です。
※ 東証以外にも、名古屋(名証)・札幌(札証)・福岡(福証)もありますが、企業数は多くありません。

Q 日本で最も優れた市場とされる「プライム」は何社ある?

正解は…1841社です(2022年1月11日、東証が正式発表)。日本全体で420万社もある中で、1841社しか“プライム上場企業”と名乗ることはできません。なお他の市場区分を見てみると、スタンダードは1477社、成長株を主に扱うグロースは459社が上場しています。東証の上場企業を合計すると約 3800社。日本に存在する会社の数と比較して全体の 0.09% と、上場企業の少なさがわかります。

スタンダード(1477社)より、プライム(1841社)の企業数のほうが多いのは“悪い歪み”だと考えます。なぜならプライム(=最も重要な)は本来、厳選された企業だけが存在しているべきだと考えているからです。

競争は資本主義社会の原理原則です。本来は健全な競争と厳選があって、プライム(500社)、スタンダード(2000社)、グロース(1300社)となっているべきではないでしょうか?

なぜここまで歪んでしまったのでしょう? それは東証が「売買が活発だと儲かる」という立場であり「●●社がマザーズ(現グロース)から、東証1部(現プライム)に上がりました!」という新規材料を使えば投資家の売買も活発になったからです。こういうドーピングを繰り返しすぎた結果、プライムが最も企業が多く、アタマでっかちになってしまいました。

なんと東証1部(現:プライム)は直近30年で約2倍に膨れ上がってしまったのです。にもかかわらず、東証2部に降格される企業はほぼありませんでした。もし1部から2部に格下げされた場合、株価は下がり当該企業からは恨まれることでしょう。証券会社も「東証 1部だから安心ですよ」という

売り文句で顧客に株をすすめていたので、その銘柄が降格されたら顧客からクレームが殺到します。

日本の東証1部は、悪い意味での「終身雇用」

その「恨み」を恐れた結果「東証1部に選ばれたら落ちることはない」という状況になってしまいました。東証1部には「流通時価総額100億円以上(≒時価総額250億円以上)」という条件がありましたが、業績が悪化して株価が暴落しても降格されませんでした。なんと1/3の企業が条件を満たしていないのに東証1部に残り続けました。さらには東証1部の半分以上が業績不振を続けているにもかかわらず残り続けていたのです。

日本の東証1部は、悪い意味での「終身雇用」です。なぜ企業価値が下がっても降格されなかったのでしょう? 政治家や証券会社による「口利き」があったかもしれませんが、闇の中へ消えました…。
※ 気になった人は東証を傘下に持つ「日本取引所グループ 役員略歴」と検索して出身省庁や出身企業をご覧ください。日本の金融業界の闇が見えることでしょう。
※ 特に 2013 年頃から異常な急スピードで東証 1 部が増えました。いったい誰が 2013 年から財務大臣に君臨していたのでしょうか。気になった人は検索してください。


東証 1 部があまりにも増えすぎてしまった結果、2022年4月からの市場区分の再編が決定しました。世界中の投資家にとって非常に良いニュースだと期待されていましたが、残念ながらほぼ変わらないまま終わってしまいました。

果たして東証は本当に「プライム=最も重要な」というブランドを掲げている自覚があるのでしょうか? 数多くの投資家が東証問題を非常にネガティブにとらえています。直近10年で世界中の株価・経済が膨張しているのに東証は「時価総額250億円以上」というハードルを変えることはありませんでした。本来ならプライムの枠を500社に限定して、絶対評価ではなく相対評価を取り入れるべきでしょう。

世界の投資家の正直な意見は「時価総額500億円以下は規模が小さすぎて投資対象として見ない」です。したがって時価総額250億円というハードルそのものが時代遅れになっています。
※ 東証問題をもっと深く知りたい方は「東証、再編後も欧米遠く 日経新聞」で検索をしてください。

※本稿に記載されている数字は2021年12月末の執筆時点のものです。個別株や投資信託の具体的な銘柄を紹介していますが、買い煽りをするつもりはありません。株価は必ず上下する生き物です。
「余裕資金の範囲で投資をする」
「時間分散をして少額でコツコツ買う」
「一度買ったら20年は売らずに長期保有する」
という投資の大原則は絶対に忘れてはいけません。皆さまが投資をする際は自己責任でお願いします。

#2 任天堂、キーエンス、村田製作所、3社の共通点とは何か?
#3 投資しない人が貧乏になる時代に買いたい「米国株」の最適解(本日17時公開予定)

『世界一面白くてお金になる経済講座 知識ゼロからはじめる投資のコツ』(ダイヤモンド社)

南祐貴

2022年3月30日

1650円(税込)

単行本(ソフトカバー) 192ページ

ISBN:

978- 4-478-11550-3

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