Q 日経平均株価は何社の平均でしょうか?
任天堂、キーエンス、村田製作所、3社の共通点とは何か?
集英社オンライン / 2022年6月24日 17時1分
世界の投資家が日本市場に愛想を尽かしアメリカや中国に大量の資金を投下しているが、日本の株式市場のどこに問題があるのか。経済について学ぶ入門書『世界一面白くてお金になる経済講座知識ゼロからはじめる投資のコツ』(ダイヤモンド社)から「日経平均株価」の項を一部抜粋・再構成してお届けする。
日経平均株価についてわかりやすく解説
正解は…225社です。日経平均株価とは、上場企業の中から日本経済新聞社が優れた225 社を自社の基準で選び、計算した指数です。この指数は終戦後の1950年から開始されました。ちなみに225社という中途半端な数字には特に意味はないそうです。
※ 日経平均株価は、225社の株価の単純な平均値ではありません。“みなし値に変換”という少しややこしい計算をして算出しています。
日経平均株価が作られた1950年の当時の株価は176円。そして現在は約2万8000円です。72年前に225社の中からランダムに買っていれば、今ごろ資産は約160倍です。もし100万円を投資していれば1億6000万円! 20年以上の長期目線であれば、株価は必ず右肩上がりなので、投資はとにかく早く始めましょう。
Q 日経平均株価に採用されると何が嬉しいのですか?
正解は…社会的信用が高まることです。さらには日経平均株価に連動したインデックス投資信託の中に組み込まれます。
Q 投資信託とは何ですか?
あなたの代わりにプロが優良企業を見つけて投資を代行してくれます。いわゆる「ファンド」です。信託報酬(手数料)を渡す代わりに、お金を増やしてくれるように資産運用を託すこと。信じて託す。
投資信託に組み込まれるということは、株主が増えることを意味します。 株主が増えると1人の株主の売買だけでは株価が上下しなくなります。すると株価の安定性が見込まれ、社会的信用が上がります。もし仮に私がセカニチ株式会社(例えば 1 人で 70%を保持)を上場させたら、私1人の気分で株を売ることができますから、株価が大暴落することもあり、不安定になりますよね。だから株主が増えること=社会的信用が増すのです。そして社会的信用が増した会社に人・モノ・カネという経営資源が集まります。
日本の市場に存在する、全ての上場企業株と上場投資信託(ETF)のを合わせても、売買ランキングでぶっちぎり1位が[1570]日経レバという日経平均の2倍の動きをする投資信託です(私は日経平均は買いませんが)。
続けて日経平均株価についてクイズです。
日本の時価総額 No.1はどこの会社でしょうか?
Q 日経平均株価が下がると何が起こるのですか?
正解は…(1~2 年後に時間差で)実生活に悪影響が出ます。日経平均株価が暴落すると、多くの企業は守りに入ります。水道の蛇口を閉めるイメージで広告費や人件費を削ります。逆に言うと、バブル期には広告代理店や人材派遣会社が大儲けします。
大企業がお金を削ると、今までは大企業からの発注に頼ってどうにかなっていた弱小の中小企業にお金が入らなくなり倒産します。そして負の連鎖が起こります。ボーナスがなくなったりクビになったりと、1~2 年ほどの時差で我々のような一般人の実生活に悪影響が出ます。
ここまで、日本の景気を測る代表的な指数の《日経平均株価》について学んできました。そんな完璧に見える指数に弱みは無いのでしょうか?
Q 日経平均株価には欠点は無いのですか?
欠点はあります。1社 1社の寄与度(影響力)の差が大きすぎること。
日経平均株価に最も影響力があるのは東京エレクトロンとユニクロ(=ファーストリテイリング)の2社です。1位「東京エレクトロン」と、225位「東京電力」の日経平均株価への寄与度は2000倍以上の差があります。上位2社の寄与度が大きすぎるため、日経平均株価は「東京エレクトロン・ユニクロ指数」と呼ばれることもあります。
※225社の各企業の影響度を知りたい方は「日経平均 寄与度 構成率」で検索をしてください。ヒートマップの面積の大きさを見れば一目瞭然です。
寄与度で上位に入る株は「1株の価格が大きい」「日経平均株価に採用された後に急成長をした」という特徴があります。単に時価総額の大きさだけではないのです。先ほども挙げた“みなし値”の計算があり、日経平均株価に採用された当時の株価が基準になるからです。
日本の時価総額 No.1はトヨタ自動車(34兆円)ですが、直近で急成長をした東京エレクトロン(10兆円)やユニクロ(7兆円)やソフトバンクグループ(9兆円)のほうが日経平均に対して大きな寄与度を持つようになったのです。
※ちなみに通信会社のソフトバンク(SB)と、投資会社のソフトバンクグループ(SBG)は完全に別の会社です。
日本経済新聞社が掌握する大きな権力
全部で225社あるはずなのに、なんと寄与度の上位10社だけで全体の40%を占めています。上位と下位の寄与度の差が大きすぎるという欠点を抱えた日経平均株価。本来であれば成長が終わった下位の企業は除外し、どんどん新しい成長企業に入れ替えるべきです。そうすれば日経平均株価は健全で公正な指数になるでしょう。普通に考えたら当たり前ですが、現在はそうなっていません。
2021年は任天堂、キーエンス、村田製作所の3社が新しく採用されました。正直この3社とも何年も前から業績は絶好調で日本経済を牽引してきました。日経平均への採用があまりにも遅すぎます。この3社は「値がさ株」と呼ばれており、日経平均株価に強い影響力を持ちすぎることを恐れられ、後回しにされ続けてきました。強い変化を嫌って「日本経済新聞社の意思では1年間で3社しか入れ替えない」というルールが存在するのです。現在の225社のラインナップを見ていると、下位100社はいますぐ除外して入れ替えるべきです。
1年で3社しか入れ替えられないのであれば、健全化されるまでにあと30年以上かかることでしょう。
ではなぜ日本経済新聞社が成長しなくなった企業を日経平均株価から除外できないかというと、「政治的な圧力」と「メディアとしての広告収入がなくなること」を恐れているからだと推測されます。日経平均株価から除外されると企業の株価はほぼ確実に下がります。「日経平均株価に採用されているから安心」と株を売りつけまくった証券会社にも顧客からクレームが殺到するでしょう。そういえば日経を読んでいると証券会社の広告も非常に多いですよね。あとはお察しの通りです。
アメリカ株と日本株はこんなにも差がある
現在の寄与度ワーストには電力系や金融系が目立ちますが、除外できない理由は政治的な圧力でしょうか。なぜなら株価が暴落した時に経済産業省や財務省が責任を取らされる可能性があるからです。そして除外され株価が落ちた企業は恨みを抱き、日経新聞への広告出稿を停止するでしょう(これは全て筆者個人の推測であり、日本経済新聞社の正式な見解ではありません)。
果たしてそんな忖度された指数は健全と言えるのでしょうか?
私は健全だとは思いません。日本経済が抱える大きな問題だと考えます。実は日経平均株価以外に、もう1つ日本の経済を測る指標があります。それがTOPIXです。日本国内ではメディアの話題の中心は日経平均株価です。
が、先ほど述べたような欠点もあるため、海外の投資家が日本市場を見る際 には(旧)東証1部に上場していた 2200 社の全銘柄を対象としたTOPIXという指数を見ます。なので世界的には日本経済=TOPIXを指すことが多いです。合理的な外国人から見て「忖度された 225 社には興味ないよ」ということでしょうか…。真相は近くのアメリカ人投資家に聞いてみてください。
※ 日本最大規模のアクティブファンド「ひふみ投信」を運営する藤野英人さんは「TOPIX は半分くらいが腐った幕の内弁当になっている」と表現されています。強く共感します。せっかく、一流の食材と一流のシェフが作った料理があったとしても、腐った食材と一緒にされてしまったら幕の内弁当が買われることはありません。健全な厳選と各社の経営努力があってはじめて、健康的で豊かな美味しい食事をすることができます。
プライム等の市場区分の見直しに伴い、TOPIX の約 2200 社という多すぎる構成も厳選されていくそうです。しかし移行完了は 2025 年までかかるとのこと。あまりにも遅すぎるスピード感。東証が上場企業に忖度をしてノロノロしている間に、世界中の投資家たちは日本市場に愛想を尽かしアメリカや中国に大量の資金を投下していくことでしょう。
※本稿に記載されている数字は2021年12月末の執筆時点のものです。個別株や投資信託の具体的な銘柄を紹介していますが、買い煽りをするつもりはありません。株価は必ず上下する生き物です。
「余裕資金の範囲で投資をする」
「時間分散をして少額でコツコツ買う」
「一度買ったら20年は売らずに長期保有する」
という投資の大原則は絶対に忘れてはいけません。皆さまが投資をする際は自己責任でお願いします。
#1 なぜアパホテルは株式を上場しないのか? 知らないと恥ずかしい経済知識
#3 投資しない人が貧乏になる時代に買いたい「米国株」の最適解
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