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コロナ移住で成功する人と失敗する人は何が違ったのか?

集英社オンライン / 2022年6月23日 11時1分

コロナ禍で働き方が変わり、職場のある都心に住んでいなくても仕事が可能になったことで、ワーケーションや地方移住といった動きが進んでいる。実際に移住した人たちの生活はどう変化したのだろうか? 東京都港区から田舎暮らしを始めて約3年になる筆者がコロナ移住の成否を考えた。

3年間、家族で田舎暮らしをして気づいたこと

コロナ禍の波が日本に来ておよそ2年あまりが経過した。感染拡大対策が広まる中で、テレワークの普及などがあって、人々のライフスタイルには多くの変化がもたらされた。コロナ禍を避けるための地方移住、いわゆる“コロナ移住”もそのひとつである。

実は筆者も地方移住組である。厳密にはコロナ移住でなく、「家賃が安いところ」を求めて引越したら、その後コロナ禍が始まった。生まれ育った東京都港区を出て千葉県の郊外で暮らし始めて約3年、生活はだいぶ落ち着いてきて「地方移住の良し悪し」が自分なりにつかめてきた頃合いである。



この機会に、他の地方移住者のケースも参考に見ながら「地方移住の良し悪し」、および「地方移住の成否を分けるポイント」について考えてみたい。

まず地方移住のメリットとして真っ先に連想されるのが「のんびり暮らせる」だ。これは都会暮らしに比べれば、間違いなくのんびりしている。夜8時を過ぎれば車のエンジンをかけるのがためらわれるほど辺りは静まり返る。遠くの国道から響いてくる反社会的な若者たちによる爆音のバイクのエンジン音が牧歌的にすら聞こえるくらい、のんびりと静かである。

しかし「のんびり」自体に実はメリットとデメリットがあったのだった。いや、正確には、「のんびり」は捉え方次第で良い方向にも悪い方向にも解釈できる。ある地方移住者を観察した人のエピソードを紹介したい。

都会暮らしと田舎暮らしで表情も確実に変わる

「仕事がバリバリできる会社の先輩がいて、人望も厚く、誰もがその人の出世を信じて疑わなかったんですが…。

その先輩が、テレワークが増えたのを機に一家で地方に引越したんです。それ以降、全身から発散されていた覇気のようなオーラが徐々に薄れていって、仕事ぶりも人並みになりました。本人は『のんびり暮らせていい。地方移住して正解だった』と話し、家族や移住先のコミュニティで過ごす時間に重きを置いていて、非常に充実している様子なんですけど。

なかには、『役員クラスになるのも現実的な線だったのに』と先輩の変化を惜しむ人もいました。僕は、出世にとらわれない先輩の生き様を見て『そういう生き方もあるのだな』と妙に納得しましたが、会社員として正しかったのかどうかは僕にはわかりません」(32歳・出版社勤務・男性)

「のんびり」はそれを求める人にとってはこの上ないメリットだが、その価値観を持っていない人からするとデメリットに見えることがある。上記のエピソードでいえば、移住した本人が満足しているのだからそれはまごうことなき成功例である。だが仕事や「偉くなる」ということにプライオリティを置いている価値観の持ち主からは、「地方移住で腑抜けてしまった」といった批評がつくこともある。

筆者の場合、「のんびり」のメリット・デメリットを半々ずつ受け取っているような手応えである。どこに行くにも人混みとは無縁で、ゆったり伸びやかに過ごせている。反面、のんびり過ごしすぎていることに若干の焦りを感じてもいる。「もう少しバリッと働いた方がいいのではないか」と思えてしまうのである。

先日久しぶりにまじまじと鏡で自分の顔を見て驚いた。目尻が移住前に比べてかなり下がっていて顔つきが変わっていたのである。しかし、とある用事で渋谷に行く機会があり、街を歩いていると「負けないぞ」という気持ちが唐突に湧出してきて、自覚できるほど目尻がキュッと上がる。「そういえば昔はいつもこんな気持だった」と、思いがけぬ闘争心に内心やや興奮し、地方の住処に戻ればまた目尻がプシューと下がっていくのである。

田舎暮らしは競争意識や“ギラつき”のようなものを削ぎ落としていく可能性がある。まだギラついていたい人は注意されたい。

物理的距離では測れない孤独感という闇

ある独身男性が都内からコロナ移住をして、1年もしないうちに都内にカムバックした。ありていにいって、どうやら「寂しかった」ようである。

「生活コストや、人ごみの少なさを鑑みて、移住にはメリットだらけと思い決断しました。

でも、移住先の地域コミュニティになかなか馴染めなかったですね。集まりなどに顔を出せば皆よくしてくれるけど、まわりはほぼ全員家族と暮らしているからか、独身の自分は一緒にいてもどこか居たたまれない気持ちになりました。

どうせ都内にいても友人とは自粛で会えなかったし、オンラインですぐつながれるから移住しても問題ないと考えてたんですが、移住先で孤独を感じると、自分の家族や友人たちとの物理的距離が一気に寂しく感じられて。『気軽に会える距離にいるけど会わない』と『最初から気軽に会えない距離にいる』には大きな差があると知りました」(38歳・印刷会社勤務・男性)

2020年のある調査によると、約3割の人がテレワーク時に「自分は孤立している」と感じていたそうだ。コロナ禍、及びまん延防止のために打ち出された種々の対策は、ともすれば人同士の孤立を深める方向に働く。もともと誰もが孤立を感じやすくなっている環境下へもってきて、移住でさらに孤立を感じたとなれば、移住を取りやめてしまうほどの寂しさが起こりうるらしい。

反ワクチンを掲げるある地方移住者は、「都会にまん延するコロナ対策の同調圧力が嫌」でコロナ移住を決めた。移住先でも反ワクチン掲げて発信するので地元住民との対立も見られるが、その地域にも志を同じくする人は当然いて、その人らと仲良く楽しく、そして「のんびり」過ごしているようである。

都会から離れて刺激のない生活でエネルギーを持て余しているのか。意見発信の熱量が上がり、地元住民と対立している様子を見ると、はたして本当に「のんびり」なのかが疑問に思える。だが、本人が「移住して正解だった」と断言しているのだから、これもおそらく移住の成功例である。

何を求めて移住するか具体的にイメージすることが大切

いってしまえば移住成功の可否は、「本人の気の持ちよう次第」のようである。これは「その人が移住に何を求めているか」と言い換えることもできる。その求めているイメージの具体性が強いほど、移住は成功しやすいといえる。もっとも強く求めているポイントが満たされていれば、大概のことは許容できるものなのである。

最初に紹介したエピソードの移住者は、「キャリア」と「スローライフ」のどちらを求めるかが本人の中できっぱり決まっていた。2人目に紹介した移住者は、田舎暮らしに漠然とした憧れはあったものの、何を一番に求めるかが固まっていなかった。反ワクチンの移住者はとにかく都会が嫌だったので、都会の外に脱出しただけでほぼ大成功だったといえよう。

筆者はというと、「家賃が安い」が最優先事項に来ていたので、虫が多かろうと家がボロかろうと「まあ家賃が安いからな」と納得できる。しかし自分の目尻がかようなまでに下がっていくとは想定しておらず、そこに不安を感じていて、これは移住の失敗した点である。

地方移住を成功させるには「求めているものの具体的なイメージ」を持つこと。そして地方移住を失敗させないためには「より多くのことを想定しておくこと」である。想定外のことに襲われると移住は失敗に感じられやすい。

本稿が、現在コロナ移住・地方移住を検討している諸氏の一助となれば幸いである。

取材・文・武藤弘樹

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