2022年初頭、僕は唐突に旅へ出たくなった。
愛犬とともに特注キャンピングカーに乗り、58歳にしてアメリカ一周をした文豪、ジョン・スタインベックのように。
まず、旅のルールを二つだけ決めた。
1、宿には泊まらない。2、公共交通機関を使わない。
それならテントと寝袋を担いで家を飛び出し、ヒッチハイクでもしながら放浪すればいいじゃないかと言われるかもしれない。
でも、僕ももう分別のついた52歳のおっさんだ。
体力的にはもしかしたらギリ可能かもしれないけど、精神的にも世間体的にもそれはとても無理。
尾崎豊でも沢木耕太郎でも、この歳でそんなセンチメンタルで蒼くさい旅はしないだろう。
それに、こちとら旅をしながらもやらなきゃならない仕事だってあるのだ。
ということで僕が旅の手段として選んだのは、車中泊だった。
自動車販売会社に勤める小学校からの友達に頼んで、見つくろってもらった激安中古の軽バン、スズキ・エブリイを入手したのが4月の頭。
そこから自力でコツコツとカスタムを施し、5月の上旬には外装がほぼ完成した。
大きな目標だった自力での全塗装もいい感じに仕上がり、走行距離14万kmを超えているオンボロエブリイは、非常に美麗な車に変身を遂げたのだ。
1メートル以内に近づいて見なければ、だが。