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大企業を辞めてベンチャーに転職する前にやるべき「たった1つのこと」

集英社オンライン / 2022年6月27日 7時1分

近年、大企業からベンチャーへ転職するビジネスパーソンが激増している。報道によれば、その数は3年前と比較して約7倍にまで達しているという。しかし転職がビジネスパーソンにとって身近なものになり、キャリアの選択肢が広がっているものの「安易な転職にはリスクがある」と警鐘を鳴らす転職エージェントもいる。その1人が森本千賀子氏だ。「プロフェッショナル 仕事の流儀」や「ガイアの夜明け」などメディアにも多数出演し、現在も第一人者として活躍を続ける森本氏に転職のリアルを聞いた。

転職エージェントである森本氏は、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般も手がける。約30年のキャリアの中で、これまで3万人を超える転職希望者と出会い、1000人を超える経営者と公私を通じてつながりを作ってきた。



報道によれば、大企業からベンチャー企業への転職人数が3年で7倍になったと言われている。この結果について森本は「私の感覚とも相違ありません。特に転職先を大手からベンチャーにという人が非常に増えた印象です」と語る。

なぜ大企業からベンチャー企業への人材流出が加速しているのか。そこには、いくつか要因がある。

まず挙げられるのが、大企業内のポストの問題だ。

「成果主義を導入している大企業でも、それを適切に運用できているケースは少なく、特に20代~30代では、どんなに頑張っても評価は一律で大きな差が出ることはない。すると、決定権を持つポストに就くまで少なくとも10年単位で時間がかかるという現実は変わりません。さらに、事業の成長が鈍化し、マネージャーのポストが増えない中、最終的にポストに就ける保証もありません」

コロナ禍でベンチャー転職が増えた理由

さらに、この状況下にコロナ禍が重なった。森本氏は「コロナ禍をきっかけに、大企業からの人材流出が加速している」と指摘する。寄らば大樹の陰、危機の時こそ安定した場所にとどまりたいという志向が強まるのかと思えば、現実は全く逆のようだ。

その要因について、森本氏はこう分析する。

「今まで現状に疑問に思いながらも、深く思考する余裕もきっかけもなく仕事をしていた方が、コロナ禍で通勤も会食もなくなり、とにかく考える時間が増えました。そうすると、今の自分でいいのか、自分のキャリアはこのままでいいのかと考えるようになります。なおかつパンデミックが襲い、国際社会が不安定化する混沌とした世の中で、10年先なんて見えません。そうなると、いつ何があっても、どんな選択肢でも取れるように自分に力をつけておくことが最も重要なのではないかと考え、転職が視野に入ってくるのです」

大企業やそれを取り巻く社会の変化だけでなく、人材を受け入れるベンチャー企業の状況も「この10年で大きく変化した」と森本氏は指摘する。

まず大きいのは、ベンチャー転職の成功例が身近にできたことだ。ベンチャー企業に転職して活き活きと働く、かつての同僚や友人がおり、光り輝いて見える。

自分もそうなりたい――。

転職して活躍する身近な存在に自らを照らし合わせることで、ベンチャー企業に活路を見出すビジネスパーソンが急増しているという。

また、ベンチャー企業の資金調達環境も好転している。

ベンチャーキャピタルの存在に加え、ここ数年で国や各種自治体がベンチャー企業へ多種多様な支援策を打ち出した。大企業や上場後のメガベンチャーなども自社の戦略目的のためにコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を組成するなど事業会社もベンチャー企業との連携を強化している。さらにコロナ禍の企業支援の一環で融資のハードルが一段と下がったことも、ベンチャー企業にとって追い風になった。

その結果、創業間もないベンチャー企業でも調達した資金を活用して積極的に人材採用を進めている。先の調査で「大企業とベンチャー企業の給与格差も急速に縮まっている」と指摘されているのは、このような背景があるようだ。

安易なベンチャー転職には「リスクがある」

10年前と比較すると、大きく変化したベンチャー転職。しかし、森本氏は安易なベンチャー企業への転職には「リスクがある」と警鐘を鳴らす。転職が成立することで一定の収益を得られる転職エージェントの森本氏が、あえて自らにとって不利益になりかねない発言するのは、長年業界に関わって見てきた敢然たる現実があるからだ。

「まず前提が全く違います。ベンチャー企業は会社名を口にしたところで、基本的には世の中には知られていません。看板で仕事ができる大企業とは、そこが根本的に異なります。大企業は営業をせずとも取引相手が揉み手で近づいてくる一方、ベンチャー企業は必死に営業しても見向きもされないことがあるでしょう」

また人・モノ・金のリソースも大きく異なる。森本氏は「大企業なら経理や法務などバックオフィスの部署が整えられているのが当たり前です。しかし、ベンチャーだとそうはいきません。創業間もない企業なら、経理部がないなどざらにあります」と一例を挙げる。

さらに大企業であれば効率重視でアウトソースすることも、ベンチャーであれば当然のごとく自前でやらざる得ないことも多い。集英社オンラインでも、以前あるベンチャー企業を取材した。サービスのベータテストで実施する200名を超えるユーザーインタビュー、サービスのQ&A対応など、10名弱の社員が役職や職種など関係なく総出で対応する。これはあくまで一例ではあるが、これと似たようなケースはベンチャー企業ならザラにあるのだ。

“わかったつもり”という罠

そんな大企業とベンチャー企業の違いも、今にはじまったことではない。転職が増加傾向に転じる以前から言われ続けてきたものの、今でも“わかったつもり”になっている場合は少なくないという。

「みなさん、頭では理解していても、意外といざ転職してみるとカルチャーギャップでショックを受けてしまうものです。”わかったつもり”はなかなか根深い問題です」

だからこそ、森本氏はあえて転職希望者の覚悟を問う。

「繰り返しますが、大企業とベンチャー企業は根本的に違う。だからこそ、ベンチャー企業の現実をしっかりと伝えます。『キラキラと輝いているように見えるから』、『ストックオプションで一攫千金を狙いたいから』といった理由では、すぐに心が折れてしまいます」

頭の中の不確実な情報ではなく、実際に目の前に突き付けられる現実を受け入れる覚悟がなければ、ベンチャー企業で働くのはおぼつかないと言っても、過言ではなさそうだ。

それでは、ベンチャー企業への転職を成功させるには何が求められるのか? 様々な要素がある中で、森本氏は覚悟のほかに「変化対応力」を挙げる。

「前提が異なる分、今まで培ってきたスキルをそのまま生かすことは難しい。そうすると、環境が変わるなかでも、キャッチアップする順応性が求められ、一変する環境でも何をやればいいのかを考えて実行できる力が必要となります」

ちなみに、「変化対応力」は大企業に在籍していても向上の余地は残されているという。そして、これこそが「転職する前に、まずやって欲しいことです」と森本氏は語る。

「持って生まれた資質だけでなく、環境次第で鍛えられる能力もあります。例えば部署異動や地方転勤、海外赴任など、それまでの延長ではなく、自らの意思で環境を変える経験を積み、環境の変化に順応することに慣れる。転職を考える前に、まずはここからトライして欲しいです」

社員の希望を異動に反映する、自己申告制度や社内人材公募制度などがある企業であれば、転職を検討するのは人事制度を最大限に活用してからでも、決して遅くはなさそうだ。

さらに、森本氏はもう1つ「変化対応力」を身につける方法を提案する。

「知り合いにベンチャー企業に勤める人がいたら、ボランティアでもいいから手伝ってみると良いでしょう。何も整ってない現実に驚いたり、とんでもない仕事量を任せられることもありますが(笑)、ベンチャー企業の現実を知るにはいい経験となるでしょう」

最後に森本氏にベンチャー転職で成功する条件を聞いてみた。

「企業が目指すビジョンやミッションに共感し、自分も一緒に叶えたい、実現したいと心の底から思えるかどうかです。それがあるから、厳しい状況も乗り越えられる。そして、それを達成した先には、金銭面を含めて大きなリターンがあるでしょう」

綺麗ごとのように聞こえるだろうか。
しかし、ベンチャー企業という荒波で生き抜くには、これほどの強い志やパッションが必要なのかもしれない。

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